しらたまが道草を採って食うブログ

私ついていくよ どんな辛い野食の闇の中でさえ

ジョロウグモは秋の味覚らしい

 

黄色とグレーの縞模様にお尻の赤が映えて、ジョロウグモを見ると、ああ、秋だなあという心地がする。秋の空の青さにこれほど似つかわしい虫はいないと思う。

 

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(Wikipediaより)

 

 

ジョロウグモは虫食界ではとても美味しい虫という確固たる評価を得ているようで、プロになると「ジョロウグモを見ると唾液が出てくる」らしい。どういうことやねん。

今年こそは食べてみようと思い9月頃からずっと機会を伺っていたのだが、なかなか一人でゆっくり採取して料理するタイミングに恵まれず、11月末になってしまった。ジョロウグモは秋に交尾して木の幹などに卵嚢をつくり、冬が来ると死んでしまう。先週から急に気温が下がって冬の気候になってしまったが、ジョロウグモたちはまだ生きているのか。

 

里山を歩き回るが、この前までどこにでもいたのに、姿が全く見られなくなっている。てっきり、クモがいなくなってもクモの巣は残っているものかと思っていたが、この前まであちこちに張り巡らされていたはずの巣は、どこを見ても綺麗さっぱりなくなっている。秋の痕跡が消え、いよいよ本格的に冬が来たのだなという寂寥感に浸る。

 

 

 

歩き回ってどうにか見つけた一匹目。

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手を添えているのは単にカメラのピントを合わせているだけです。

 

噛まれると痛そうなので箸で捕獲していきます。動き自体は速くないので、普通に捕まえられます。

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3匹とれたので帰宅。

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足も縞々なんですよ。可愛いですね。
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グレーの部分がにび色というか鉛色というか、ニュアンスの含んだグレーで綺麗なんですよね。
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立派な口。よく噛んで食べてる証拠ですね。
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素揚げでサクサクと頂きますよ。

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目いっぱい脚が広がりましたね…。脚広げるとやっぱりでかいですね。


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脚はそりゃサクサクです。普通に香ばしくて美味い。一応味を伝えるためにバッタ類の脚と比べてみると、バッタがエビの殻だとしたらクモは魚の骨せんべい。バッタってよく「エビっぽい」と言われることがありまして、エビっぽいというよりも、バッタのよく発達した外骨格の香ばしさが揚げたエビやカニの殻の風味を想起させるということなのだと私は理解しているんですが、そうは言ってもクモとバッタを比べてどちらがエビっぽいかと聞かれれば、まあバッタの方ですよねとなる。クモにはそこまでの香りがなく、骨の柔らかい魚の骨を揚げたような食感と味わい。いずれにせよ普通に美味い。

 

お腹をプチっと噛むと、中の内臓のソフトな食感が感じられます。食べたことのある虫の中ではイモムシ以外はすべてサクサク系、中身が詰まっているとしても身がみっちりと詰まっている(セミの幼虫、コオロギ)ものばかりだったので、内臓を思わせるとろりとしたテクスチャーが虫から現れたことに一瞬戸惑ってしまった。しかし、やはり内臓とか魚卵っぽい旨みがある。中がレアの炙りたらこを皮ごと噛んだ感じのニュアンスに近いような、そうでないような。

あと、ジョロウグモは豆っぽさがあるとも言われるんですが、豆の中でも大豆でしょうか。さすがにセミの幼虫のように、本当に植物の汁を吸って生きてる虫のような強い豆感はないが、いかにもな動物性タンパク質の味とも違う優しみは、「豆っぽい」ととりあえず言い表しておくのがいいのかもしれない。空豆っぽい、と評する人も多いようだけど、空豆を想起するほどの強いパンチはないので、空豆はちょっと大袈裟かな?という印象。時期や食性によっても味が違ってくる可能性はあるので、あくまでも今回私が食べた個体は、ということかもしれません。

 

 

 

 

ジョロウグモは見た目のインパクトの割に「知ってる味」でした。味自体には驚きはないが、それだけに、一度食べてしまうともうただの食材ですね。

 

 

(採取日: 2023. 11. 30)

 

豆柿は熟すと甘いけどタイミングを間違えると渋い

 

秋は野山を散歩するのがよろしい。いろんな実がなってますからね。

 

ムカゴ。私が毎年毎年この時期になると妻の白い目にもめげず採りにいくので、最近では妻もムカゴ採りに付き合ってくれるようになりました。

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ムカゴについて詳しくなりたい方はこちらの過去記事をご覧ください。

 

まだ青いカラスウリ。赤く熟したものはもう食べることは絶対に不可能ですが、若い固いうちなら食べられるらしいです。
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家で切ってみたら中がもう柔らかくなっていたので捨てました。すまんな。

 

アケビアケビの木はたくさんあるけど実に遭遇することは少ないんですよね。
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豆柿。

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それにしても秋の青空に赤い柿の実はよく似合う。

たしか熟した豆柿は甘いんだったはず。色の濃い柔らかくなったものを採ってみます。
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1個目。うんうん、甘い。香りは弱いけどしっかりと甘いですね。皮は薄いので食べてしまってもよさそう。

 

2個目は、1個目より少し熟しが浅いがそこそこ柔らかくなっている。やはり甘いですね。

 

…いや、渋いな。

 

5秒くらい経ってから舌の上に現れるザラザラ感。遅れてくるけど、しっかりとタンニンタンニンしてますねこれ。

 

 

明らかにまだ熟しきってない実も一応食べてみる。色がまだ薄い。
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これは明らかにダメですね。甘みはそこそこあるんだけどね。

 

豆柿は完全に熟したもの、なんなら傷み始める一歩手前のぽちゃぽちゃのものをピンポイントで狙わないとだめですね。

タイミングにさえ気をつければふつうに食べて美味しいし、若いうちは渋くても糖度はあるので干し柿にしてもいいかもしれない。まあ実家に柿の木があるので僕はやりませんが…。

 

 

(採取日: 2023. 10. 20)

ブルーギルの淡水魚感のなさは異常

 

小学生の頃にブルーギルを飼っていたんですよ(まだ特定外来生物法が施行される前なので、生きたままの運搬や飼育がセーフだった)。毎日、学校から帰ってきたら畑でミミズを掘って餌やりしていましたね。ブルーギルというのは人慣れする魚で、飼い始めてしばらくすると、私が通りかかるたびに「お?ご飯か?」と近寄ってくるようになって可愛かったです。かれこれ2年ほど野外の水槽で飼っていたんだけど、ある暑い夏の日に水温が上がりすぎて茹だって死んでしまった。このときの記憶があり、その後釣りでブルーギルを見かけるたびに、あの時は可哀想なことをしてしまったなと、飼っていた子たちが脳裏をよぎるようになってしまった。

少し悲しい記憶と紐づいているブルーギルだが、そんなわけで私はブルーギルという魚が好きである。特定外来生物ということで悪者扱いされがちだが、本当に可愛らしい魚だと思う。

 

 

 

ある日ナマズ釣りの漁場開拓に行ったのですが、もう何でもいいので魚の引きを味わいたくなり、急遽雑魚釣りを始めることに。そんなときにブルーギルはいい魚ですね、持ってるワームの切れ端で釣れるので。

 

エコギアのパワークラブの脚をむしって使いましょうね。

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良型のブルーギルであろうが超小型のブルーギルであろうが見境なく釣って持ち帰るよ。特定外来生物だからね。
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ブルーギルというのは好奇心の強くかつ警戒心の薄い魚なので簡単に釣れるんですが、さすがにひたすら同じ場所で釣りしているとスレてくるのか反応が悪くなっていきました(「スレる」というのは釣り用語で、警戒心が強まってきて口を使わなくなることを言います)。ブルーギルでもスレることあるんですね。

 

 

 

 

 

もっとたくさん釣りたかったのですが、このくらいで諦めました。
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さて、捌いていくわけですけど、ブルーギルはとにかく鰭が痛いんだよ。少なくとも背鰭は最初にキッチンバサミで切っておくといいです。
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全体的小さいやつが多いので丸ごと揚げて唐揚げにしていく。鱗と内臓を取ったら、骨までしっかり火が入るよう半分に割ります。
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醤油とすりおろし生姜につけて、薄力粉をはたいて揚げる。
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全然臭みがない。

 

お前普段から臭い川魚を食べてるから耐性ついてるだけだろと思うじゃないですか?それが本当に臭みが全くなくて、不肖しらたま、これには驚いているんですよ。地元民にしかわからない話で恐縮ですけど、岐阜県海津市の大江川で釣ったブルーギルなんですよ。大江川ってお世辞にも綺麗な川ではないんですよ。海津という地域は長良川揖斐川という大河川に挟まれて、昔から洪水の絶えなかった地域で、洪水から守るために周りを堤防で覆い囲った輪中という小区画が点在してるんだけど、そこを流れる大江川は揖斐川に洪水の水を排水する水路のような役割を持った実は重要な川なんだけど、っていう話をこの前放送してたブラタモリでやってたんだけど、明治時代に招聘されたオランダ人技師ヨハネス・デ・レーケによって大規模な治水工事が行われたんだけど、そのときに土木工事に従事したのは薩摩旧士族なんだけど、みたいな話を岐阜県民の小学生は4年生くらいの社会科で勉強するんだけど(ちなみに同じくらいのときに岐阜特産の守口大根についても学びます)、その時の縁があっていまだに鹿児島・岐阜両県では教育分野での交流が行われてたりするんだけど、何が言いたいかというとつまり大江川はそんなに綺麗じゃない川なんですよ。その川のブルーギルが全く臭くないというのはしらたま的にもとても驚きだったんですね。

 

【参考資料】ヨハネス・デ・レーケ

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【参考資料】守口大根
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20分くらいじっくり揚げたんだけど、これでもまだ骨が硬いですね、もうちょっと長く揚げるか、あらかじめ骨を出刃包丁で叩いて砕いておいてからおいてから揚げると良かった。三枚おろしにして揚げるのが一番確実ではありますが、個人的な思想として、釣った魚は内臓とエラ以外は極力美味しく食べてあげたいという気持ちがあり、ブルーギルのような骨が太くて顔もそこそこ大きい魚であれば身の歩留まりがすこぶる悪いので、骨も頭も美味しく食べないと大半を捨てることになってしまいます。釣った者の責任としてそこは最低限守りたいラインですね。私が昔飼っていたあの世のブルーギルもきっとそれを望んでいることよ。

 

 

 

(釣行日: 2023. 7. 16)

お前らはいつもそうだ ターシャ・テューダーがヤマモモを摘んでジャムを作ったらおしゃれだというくせに 俺が同じことをしてたら不審な目で見るんだろ

 

そう、静かなる怒りが常に私の中にあるのですよ。

 

NHKの土曜夕方とかに、ターシャ・テューダーさんとかベニシア・スタンリー・スミスさんが自然に寄り添いながら生活している様子を描いたドキュメンタリー番組がやってて、野に出て野生のいちごを摘んで「これをジャムにするのがこの季節の恒例行事なの」とか言ってて、隣で妻がそれを見ながら「こんなおしゃれな生活したいわん🐶」とか言いながらさけるチーズ食べてたりするんですけど、いやいや、他ならぬ貴女の夫がまさにそんな生活を実践しているのだが?とか思わなくもないわけなんですね。

初夏にヤマモモを採って食す。なぜアメリカの絵本画家がやればおしゃれで、私がやったらオランウータンのエサ集めということになるんですか。東山動物園内にあるヤマモモは飼育員さんが集めてオランウータンが食べるんですが、その話はもう去年書いた。

 

 

 

 

今年は妻への抗議の意も込めて、ヤマモモ採りにわが子を連れて行くことにしました(結局妻も来た)。

 

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いいですね。

 

ヤマモモは熟すとぽとぽとと地面に落ちていきます。
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ヤマモモのよくある採り方は、地面に傘を置いて木を揺らして実を落とすというやつなんですが、幹が太くてなかなか落ちてこない。あと、ナイロン地の傘でやるとヤマモモの果汁がついてとれなくなるので、やるならビニール傘にすることを強くお勧めします。
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直に採った方が早いぞということで、虫取り網で枝をゆすってキャッチしていきます。網に果汁がつかないように内側に大きな袋を重ねています。

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上手く採れましたが、ヤマモモの重さで網が破れてしまった。釣り用のネットでやるべきでしたね。
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生でも食べつつ、今回はジャムを作っていきます。赤い、まだ熟していない実も気にせず使っていきます。
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このくらいの色のやつが完熟。このくらいになると甘い。
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砂糖たくさん。酸味の強い果実なので砂糖は控えてはならない。

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煮ていく。
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なんか表面に浮いてるんですよね。調理開始後にいろんなレシピとか見てみると、「汚れや虫を取るために一度ヤマモモの実を下茹でする」とある。なるほどね。まぁいいや。
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今回初めてジャムにするにあたり、一番の不確定要素だったのが種取り。ザルの中でよく潰せばだいたい解決する問題なのか、それとも一粒ずつ手で種を取らなければならないのか。まずはザルの中で潰してみる。
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うーん、種の周りの部分はさすがに取れないですね。コスパを求めるなら許容範囲かなとも思うけど、コスパのために野食をやっているわけではないので、結局2時間半くらいかけて丁寧に手で種と果肉を分けました。

 

果肉を戻して煮詰めていく。
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いいですね。

 

 

瓶詰めした様子はもうめんどくさかったので写真に収めていませんが、ボンヌママンの瓶に詰めるとたいそうおしゃれです。

クソダサ写真ですが、バタートーストにのせるととても美味い。くっきりとした酸味がこの上ない果実感を出しており、その辺のジャムでは物足りなくなる。
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あとはスコーンを焼いて添えたりとか、パウンドケーキに混ぜ込んだりしようと思いつつ、トーストの段階で美味すぎてまだやってないです。このままトーストで消費し尽くしてしまうかもしれません。

 

みんなもヤマモモのジャムを作ってターシャ・テューダーになろう。

 

 

(採取日: 2023. 6. 18)

 

カメムシを食べるとき においは取り除いた方がいいのか問題

 

カメムシという虫は、世界的に見るとアジアやアフリカで食べられているメジャーな食材ですが、その食材としての地位は「あのにおいがあるからこそ」なのか、「あのにおいがあるにもかかわらず」なのか。そこが、皆さんがカメムシを食べようとしたときに悩むポイントなのではないかと推察いたします。

かく言う私も今まで食べたことがなかったのですが、折りしも実家の柿の木の摘果を頼まれたので、きっと今がその時なのだろうと覚悟して今回試してみることにした。

 

 

 

カメムシというやつは基本的に農業害虫とされています。カメムシが果実の汁を吸うと、そこが黒っぽく変色して形もボコボコになってしまう。見た目が大変悪くなってしまって、自家消費以外の道を断たれます。

 

柿の木にもちょこちょことカメムシがいるものの、まだ実がなる季節でもないのであまり数がいない。むしろカメムシが集まっていたのは菜の花。


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おい、なに人んちの菜の花で交尾してんだ。


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アオクサカメムシと思われる。メジャーなカメムシですね。よく見ると可愛い顔してるんですよね。

 


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写真に小さく写っているオレンジと黒のカメムシはナガメ(菜亀)といい、その名のとおりアブラナ科の植物につく。残念ながら捕り逃がしてしまった。カメムシって体が重いのか、指で少し突っついただけでポロッと落ちるんですよね。

 

 

 

 

 

集めた。
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集めたのはいいけど、この後どうすればいいんですか。

何を悩んでいるかというと、冒頭でも書いたとおり、カメムシを食べるにあたってカメムシ臭は活かす方向なのか無くす方向なのか、どちらで攻めればいいのかという話である。

日本の著名な昆虫食家の皆さんはどうやらにおいを活かす方向で食べているらしい。そもそもカメムシにはパクチー香のやつと青リンゴ香のやつがいるらしく、その違いを楽しむには香りを飛ばすなんてありえないということになる。

 

 

参考(参考になるとは言ってない)

 

 

もう一方の「カメムシ臭を活かさない食べ方」ってなんやねんという話なのですが、立教大学野中健一先生が書かれている『虫食む人々の暮らし』(NHKブックス、2007)のなかで、カメムシを調理する前工程で徹底して臭みを取り去る様子が描かれているんですよ。それを見て、「やっぱりカメムシを日常的に食べている人にとってもカメムシって臭いんだな」と思ったものである。

以外抜粋

 

2004年4月に私は、南アフリカ共和国東北部へさまざまな民族の人たちの昆虫との関わり合いを調べようと調査旅行に出かけた。

(中略)

採集されたカメムシは、バケツの中でまだ生きてガサガサ動いている。そこに少量の熱湯を注いで、木べらでかき混ぜる。このような目に遭わせることにより、カメムシは臭い物質を分泌液として発射し発散させる。カメムシの独特のにおいは警戒物質で、攻撃への防御のために発散されるものである。熱湯をかけてかき混ぜるこのやり方は、その物質を体内から発散させてしまうのに効果的なのだ。(中略)においを取り除くため、これを三度繰り返し、におい成分を出し切ることによって、カメムシの体からにおいが取り除かれるのだ。

(中略)

採集したカメムシの中には、死んでしまったものも出てくる。そうなるともはやにおい物質を発散させることはできないが、それはそれで別の方法が考案されている。まず、死んだカメムシの頭を手で摘んで取り除き、内臓をちぎられた首から指で絞り出す。出てきたものをギュッと石になすりつけてこすり、取り除く。徹底してにおいのもとを取り除く。

 

野中健一『虫食む人々のくらし』p110-113

 

においが処理されたカメムシは、このあと茹でて天日干しにされる。干しカメムシはそのままおやつや酒のつまみとして食べられることもあるし、炒め料理にして彼らの主食であるトウモロコシ粉のお粥のおかずになることもあるらしい。

 

東南アジアでも虫がよく消費されるが、ラオス農村部でのカメムシ食事情についてもこのような記載がある。

採ってきたカメムシは、素焼きにしてそのまま食べてもよいが、塩や調味料をかけて炒めれば、よいおかずになる。堅い頭や翅は取り除いて柔らかな身の部分だけを食べる。チェオと呼ばれるラオスのおかず料理に、このカメムシもよく使われる。素焼きにしたカメムシを鉢に入れて、杵で搗き潰し、ニンニク、トマト、トウガラシ、ミントなどの野菜に、魚醬、塩、化学調味料を混ぜて、さらによく搗いてペースト状にしたものだ。お櫃からモチ米を手に取って握り、チェオにチョンチョンとつけて食べる。日本のつけミソのような感覚である。辛み、酸味とカメムシの味が絶妙に調和していて、食が進む。コオロギのチェオとはまた一味違って、スゥーッとした感じがする。

五ミリ程度の小さなカメムシで、チェオを作ってもらった。これはカメムシを炒めて、レモングラスとトウガラシとを合わせて搗いて擦り潰したものだ。トウガラシだけではただ辛いだけのふりかけになってしまうが、レモングラスが入ることによって、カメムシの独特のにおいは打ち消され、トウガラシの辛みがカメムシの濃厚で爽やかな辛みと甘みのハーモニーとなる。

(中略)

だが、ここで疑問が生じる。私がラオスの村で見た限りでは、別段におい抜きの処理はしていないのだ。村人は採りたてのカメムシをすぐさま料理していた。それでできあがった料理が、とりたてて臭いということもない。聞くところでは、ときには生きているカメムシに熱湯をかけて、においを取り除くこともあるというのだが。こちらは、南アフリカで見た方法に近い。だが、採ったあとに死んでしまったカメムシには、お湯をかける必要はなく、そのまま調理すればよいのだと彼らは言う。たしかに、素焼きのカメムシを食べても生きていたときのようないやなにおいは感じられない。

 

同書、p122-124

 

ラオスのエピソードでは、このあと、カメムシは生で食べる方が美味しい、このにおいがいいのだ、と言う人々のことも紹介しているが、そのような場合でも人によってにおいへの許容度は異なるらしいことが述べられている。

結局、「臭いから美味い」なのか「臭くないほうが美味い」なのかは人の好みということだが、どちらの事例でも、基本的にはにおいは処理されるべきものとされている。主食のおかずとして食べるという点がどうやらポイントなのではという気がする。

 

 

 

 

 

今回私が捕獲するアオクサカメムシは、そのまま嗅ぐといかにもカメムシな臭いがする。カメムシのにおいを除去するなら、捕りたて元気な今がチャンスである。さて、においを取り除くのか残すのか。あのにおいが口の中に入るとどうなるのだろうという好奇心もあるが、私は昆虫食に関しては人文地理学的な知的好奇心が強いので、実際にカメムシが食べられている地域の人々の感覚を知りたいという思いが強い。

 

ということで、カメムシには悪いが容器を振って、カメムシたちににおいを出してもらいます。
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念のため蓋を開けて確認してみるか…

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くっせ

 

 

しっかりにおいを出してくれてます。この程度でにおい成分が体内から消えたのか全くわかりませんが。

 

 

 

 

 

 

 

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この子たちを、


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まず下茹で。虫を油で炒めたり揚げたりするときはまず茹でろって先人が言ってた。生のまま油に入れると爆発するので、まず茹でて体内のタンパク質を凝固させる。

 

油で炒めるとすごい勢いで油が撥ねるので気をつけてください。
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美味しそうですね(大嘘)


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この腹の横の穴からにおいを出すんですねぇ。

 

 

サクッ…

 

翅(はね)は取り除いてないですが、小型のカメムシなのでそんなに気にならないです。

 

(・ω・)!

 

すごくコクがある。脂質を感じさせる濃厚さがある。そして見事ににおいが取り除かれている。この味なら、上に出てきたラオスのチェオという食べ方がすごく美味そうに思える。豚肉のリエットに唐辛子とハーブとナンプラーを入れて、そこに少しのバターと干しエビを入れた感じなんじゃないかな。チェオについての記述は他の本でも読んだことがあって、コオロギで作るのが一般的なのかと思ってたけど、カメムシを使うのもよくわかる気がする。

 

 

2匹目も食べてみましょうね。

 

あ、くっせ…

 

ペットボトルの振りが足らなかったのか、もしくはそのときにはすでに死んでいたのか、この個体はにおいが強烈に残ってました。全面的にパクチーの香りが広がります。「カメムシパクチーのにおい」っていうのは、比喩じゃなくて本当なんですね。思った以上にパクチー香。言うなればパクチーが好きな人であればこのにおい自体は受け入れられると思う。鼻で嗅いだときと、食べて含み香として感知したときとで、においの印象がけっこう変わるのが面白い。

そして、なんか苦いですね。直前に食べていたものの影響なのかよくわかりませんが、まぁ野食してると「なんか苦い個体」には一定の確率で当たるものなので気にするほどではないだろう。辛みは全然感じなかったので、このアオクサカメムシは辛くない系のカメムシなんですね。

 

 

夕食と一緒にカメムシを食べてたんですが、この日の夕食は冷凍の焼き餃子だったんですよ。市販の餃子ってにおい強いじゃないですか。正直言って、カメムシより餃子の方が普通にくさいのでは?って思ったんですよ。さっきのにおうカメムシの後に餃子食べたら、カメムシのにおいも味も一瞬で餃子に打ち消されて、そのあとまたカメムシを食べてももう餃子の余韻しか感じられなくなりました。とにかく餃子の味とにおいが強すぎる。別に私は添加物アンチでもオーガニック厨でもないですが、カメムシよりも冷凍餃子のほうがよっぽどやべえもん入ってるんじゃないかとすら思いました。

 

 

 

カメムシのコクにはハーブやスパイスがすごく合いそうなので、次回は唐辛子といっしょに炒めて甘辛酸っぱいエスニックな味付けで食べてみてもいいなと思いました。

 

 

(採取日: 2023. 5. 4)

葱坊主ができる頃のノビルって固くないんですか

 

どこにでも生えていて、アク抜きなどの面倒な調理工程が必要なく、そして美味いという点で、ノビルが人権野草であることに異論はないことと思います。

ノビルは春先から出始めますが、あまり小さいうちにとっても食べ応えがなく、一本一本薄皮の処理をするのも面倒なので、ある程度の大きさになってから採るのがいい。鱗茎(いわゆるタマの部分)も大きい方がいいしね。

 

4月中旬、イタドリを採りに河川敷に来たときに、ついでにノビルでも採って帰ろうかと思い立った。

 

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他の草も生え散らかしてるので分かりにくいですが、ノビルにつぼみ(葱坊主)ができている。普通のネギの葱坊主であれば大変美味しいのですが、わざわざノビルの小さい葱坊主が美味しいのかは知らない。かと言って集めて食べるのも面倒くさい。それよりも、葱坊主ができるころのノビルは成長しきって背丈が大きくなっているので、全草を食べられるなら歩留まりがすこぶる良い。

だってこの大きさですよ。
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問題は繊維が固すぎないか。成長フェーズでは新しい細胞がどんどんできているので柔らかく食べやすいが、成長しきっていろいろ花を咲かせる準備をしましょうという段階になると繊維が固くなってくるので、だんだんと食べるのに向かなくなってくる。

野草の繊維の強さを測るときの自分の中での基準ですが、野草の茎を手で折ってみて、①小気味よくポキンと折れたらまったく問題なし、②少ししなってからポキンと折れるときは小さく刻んで火にかければ食べられる、③折れ目に目に見えるほどの繊維が残る、または一発で折れないのであれば諦める、という感じです。

試してみると今回のノビルは②のイメージで、おそらくまだいけそう。ということでまとまった量を採取していきましょう。

 

 


おりゃ!

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タマが千切れてるじゃねえか!!!下手くそ!!!人間やめろ!!!

 

 

 

今度はいいね🥰🥰🥰🥰🥰🥰🥰
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できれば脇についている小さな鱗茎は土に戻してあげるといいです。

 

 

 

 

 

 

 

採ってきたノビル(一部)。小ネギやん。

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試してみるまでもなくザク切りで食べるには繊固い気がしたので、小口切りで繊維を細かく断ち切って食べてみる。

 

ちょうど水餃子をしたのでスープに入れてみる。最近冷凍の水餃子を重宝してましてね。餃子を茹でて野菜添えるだけでもよし、野菜と一緒にスープ風にしてもよし。共働き世帯には冷凍水餃子、はっきりわかんだね。

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市販の小ネギに比べたら当然固めではあるけど、ちゃんと食べられますね。妻が文句言わなかったので問題ないということでしょう。

 

タマも美味い。
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小口切りすれば普通に使えることがわかったので、採ってきたノビル全部小口切りにしてタッパーで保存しながら使いました。
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味噌汁に入れてもよし。
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酢鳥の彩りに入れてもよし。

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さすがに火をしっかり入れた方が食べやすかったので、そこだけ注意ですね。

 

 

(採取日: 2023. 4.18)

ユキノシタの天ぷら

 

近所の公園の一箇所にだけユキノシタが生えていた。天ぷらになるべくして生まれてきた野草です。

 

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よく家の庭に植えられていたりもしますね。ユキノシタを庭に植えておけば、いつでも天ぷらをすることができるわけです。庭にユキノシタを植えてるのに天ぷらにしない人は何を考えてるんでしょうね。


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ユキノシタの葉の裏は白くなっていて、かつ赤い毛が密生しています。「雪ノ下雪乃の毛…」とかすぐそういう気持ち悪いこと言うのやめてもらっていいですか。

 

 

 

株から伸びている赤いのは走出枝(ランナー)というやつで、この出走枝の先端から葉や根が出てきて個体として分離します。芋とかムカゴと同じで、身体の一部が新しい個体に分かれる栄養繁殖という無性生殖の一形態です。

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根っこはこんな感じ。
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天ぷらにするときは、見た目が良くなるよう葉の裏にだけ天ぷら粉をつけて、裏側を30秒ほど、表側を一瞬だけ揚げる。

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ユキノシタ自体にはこれといった味はないですが、葉に一定の厚みがあるためシャリシャリとした葉の食感が感じられます。表面が毛に覆われているので衣の絡みが良く、この点でも天ぷらとの適性が高いですね。

 

 

 

 

 

ちなみに、天ぷら特化型の野草は、このユキノシタの他にアカメガシワやカラムシなど色々あります。この中ではユキノシタが天ぷらのタネとして一番メジャーで、野草イーターではない一般人からも知られていますが、葉の表面が毛で覆われているので天ぷらという調理法との相性がいいという点で共通します。

アカメガシワにはモチモチとした食感があります。アカメガシワは本当に河川敷や里山に行けばどこにでも見つかるわりに美味しいので、個人的に気に入ってる野草です。

 

カラムシは葉が薄いので、葉自体の食感はほぼ感じられずただサクサクとしています。紫蘇の天ぷらの食感が好きな人は好きだと思う。

 

 

どれも単体で天ぷらのメインを張れるほどではないけれども、賑やかしとして天ぷらの盛り合わせに入っていてもおかしくないくらいの美味しさです。

 

 

(採取日: 2023.3.25)