川べりに場違いなウチワサボテンが生えていたので食べてみたという話。前回は本体(茎節)を食べました。
サボテンの実という果物は、なんとなく子どもの頃からの私の憧れだった。これほどエキゾティズムをくすぐられる果物はなかなかない。
ウチワサボテンの実はトゥナと呼ばれ、メキシコやイタリアで食べられているらしい。ウチワサボテンにも色々な種類があり、実を食べるための品種があるのだとか。ググってみると、酸味がありつつもスイカを思わせる甘みもあって美味しいとのこと。
たくさん実ってるので、熟してそうな個体を選別して頂いていきます。実にも棘が普通にあるので痛い。
とりあえず断面を切ってみる。
ビーツのような鮮やかな赤。食べてみると鮮鋭な酸味がある一方で、甘味はほぼない。要はひたすら酸っぱいので、とても生食できるようなものではない。この時点で早くも期待は裏切られたが、ちゃんと脳が果物と認識してくれたので、調理すれば美味しいのではないかという可能性を十分感じさせてくれる。
ただし、中身の7割は種。しかもこの種がえらく固い。サボテンの実の食べ方を紹介したサイトの記述をよくよく見てみると、「種は多くて固いので、そのまま飲み込みます」。正気か?
あと、本体ほどではないけどネバリがある。
色素は強く、ほんの少し触っただけでも皮膚に色が付きます。果実1個を素手で触っただけでもこんな感じ(1回石鹸で手を洗ったあと)。
1週間も残っているほどではないけど、1〜2日は残ってるし、服に付いたら厄介だと思われる。この手で会社に行って、上司に手を見せながら「なんか手が変色してきたので明日休んでいいですか?」って言えば、今すぐ帰れって言ってもらえると思うので試してみて下さい。
とりあえず、今回はジャムにすることに決定。種を取り出すのが面倒なので、皮だけ剥いたら丸ごと煮込んで、果肉が崩れてきたら濾して種だけ取り除くことにします。
ネバリのおかげで早速トロトロになってきました。明らかにペクチン由来ではないとろみ。
ざるで濾していきます。
ちょっと予想していたのですが、果肉は煮込んでも形をいつまでも保っていて、濾そうにもなかなか潰れてくれない。そこで、ざるの中で混ぜて果汁を抽出しつつ、果肉は手で選別して鍋に移すことに。これだけ手がかかるなら、初めから種を取り除いておいた方がよかったかもしれない。
煮詰めて適度な粘度になったら完成。
バタートーストに塗ってみるとこんなにいい色。何も知らされずに出されたら何かベリーかと思うだろう。
食べてみると、酸味が爽やかでなかなか良い。ラズベリーのようなキュッとなる酸味。その中にどこかビーツやターメリックのような土っぽい香りがあるが、これがまたポイントになっていていいですね。
美味しいのかと身構えていたが、ふつうに美味しいのでトーストに乗せるやらパウンドケーキに混ぜるやらですぐに消費しきってしまいそうです。
ただ下処理の段階で棘を確実に処理しておかないと、服やタオルに棘が付着して、どこからともなく棘が刺さってくる現象に数日間悩まされます。今回食べたウチワサボテンの棘はとても小さく、風で飛んでしまうくらいの軽さなので、袋の中とか流しの中で洗いと皮むきの工程を済ませておき、棘を拡散させないことがストレスなくサボテンを扱うコツかなと思う。