川で尺越えギンブナとナマズを釣ってきたという話の続きです。今回はナマズ調理編です。
総論およびフナ調理編はこちら。
ナマズを釣って食べた経験は今まで2回あって、1回目はガキの頃に琵琶湖で釣ったもの、2回目は昨年初冬に愛知県内の川で釣ったもの。いずれのナマズも特に気になる臭みもなく、大変美味しくいただけたのであった。
昨年のナマズ
今回釣ったナマズは、今までのナマズとは次の点において明らかな差がありました。
1. 産卵期を控えて荒食いをしているであろう雌の個体であること(時期の問題 = 餌となるフナとかドジョウとか甲殻類が体内にゲオスミンを蓄積していて、それを荒食いした結果ナマズの身にゲオスミンが蓄積されてしまっている可能性)
2. 名古屋市内を流れる河川に生息する個体であること(環境・水質の問題 = 汚泥の堆積した川底で暮らしていることによりその汚泥のにおいが身に移ってしまう可能性)
3. 今回釣ったのは65〜70センチの大型の個体であったこと(ナマズの成長フェーズの問題 = 成長を終えた大型の個体は代謝が下がるため、ゲオスミンの代謝能力も落ちている可能性)
今回持ち帰ったナマズはこちら。
65センチの抱卵個体。でかい。
ナマズの胸ビレには硬いトゲがあるので、捌く前にまずこいつをキッチンバサミとかペンチで切り落としてくださいね。
熱湯をかけて表面のヌメリを固めてしっかり落としてから、刃を入れていきます。
そういえばナマズの卵ってこんな色だったな。思わず驚いてしまった。
恒例の内臓チェックですが、やっぱり線状の赤い寄生虫がたくさんいます🪱 何なんでしょうねこいつ。
* 上に貼った過去記事内では顎口虫と言っていますが、顎口虫はこのような形状・大きさではないので誤りとおもわれます。申し訳ございません。たぶん線虫の一種ですが、詳しいことは分からず終いです。
胃を開いてみましたが、内容物は既に消化されてしまっていました。街中にある川幅が10メートルもない小さな河川のちょっとした深場に潜んでいた子なので、そこに溜まっている小魚とか小型甲殻類をメインに食ってるんじゃないかと推察しますが、せっかくなので内容物を見たかったですね。
捌き終わった身。
あー、臭いますね…ゲオスミンは脂に溜まるらしいので、可能な限り脂身は掃除しておきますか。
根本的に効果はないと言われますが、とりあえず先人の教えに従って牛乳に漬けておく。
一方の卵ですが、
でかい。煮付けはフナの方で試してしまったので、とりあえず炒めてみます。
ああああああ……火を入れてしばらくするとゲオ臭が立ち上ってきた……キッチンに河原の苔臭さが立ち込める。
ネスは いっしゅん かわらで あそぶ おさないじぶんの すがたを みたような きがした*。
* 筆者はMOTHER2をプレイしたことはない。
とりあえず醤油と砂糖で味付けしてそぼろ状にしたけど、ゲオ臭の実存は消えることなく依然としてそこに在り続ける。ゲオスミン波動砲と言うほどではないけど、マシンガンくらいはあるだろう…なかなかどうしてしんどいものがあります。
味と香りを誤魔化す以外の選択肢はないので、カレー粉を入れてみますか……ああ…ゲオ臭がまったく隠れてない…。最初はスパイスの香りがきてちょっと期待しちゃうんですけど、遅れてゲオ臭が顔を出すという感じです。律儀に顔出さなくていいんだよ?出張行ったらそのまま直帰していいんだよ?出張帰りにオフィスに立ち寄ることが良い社員の条件ではないよ?
今更どうにもできないので、とにかくスパイスと濃い味でゴリ押しすると決めた。ということで、卵は焼きそばに混ぜ込みました。
ここまでしてもゲオ臭分かるな…なんか根本的に食べ物の匂いとベクトルが違うから、食べ物の匂いにうまく紛れてくれないんだよね。そして、一度ゲオ臭を感じてしまうと、もうその料理にはゲオ臭があるものと脳が認識してしまうので、どうしようもなくなってしまう。
とにかくガツガツ食ってビールで流し込んでいく感じになってしまった。なんか色んなものに対して申し訳ない気持ちになってきた。
それにしても付け合わせのフキの炊いたんが本当に美味い。良心。
さて、身の方はどうするか。家のプランターにパクチーが生えてるので、身を紹興酒蒸しにしてみようかとも思ったけど、シンプルな調理をする勇気がどうしても湧いてこなかったので、ムニエルにしてみました。
真鯛は宇和島産の養殖物で、ナマズは私が釣った天然物。磯野、お前天然物が好きだろ?ナマズ譲るからその真鯛くれよ。
ナマズの身
あ、フワフワですね。物理的性質という意味での身質は良いんだよね。そんなにゲオ臭しないなとか思ったけど、二口目から気になり始めて、料理が冷めたので電子レンジで温め直したらもうゲオ臭がすぐに立ち昇ってきました。ゲオスミンを熱してはいけない。
真鯛。こうして食べ比べてみると、真鯛って真鯛特有の強い風味があるんですよね。そして身は締まってしっかりとしている。ゲオ臭さえなかったら、真鯛とは違う方向でナマズは美味しいのになあと思うのですが(仮定法)。
まあフレッシュトマトを使ったソースでしたからね。ゲオ臭が目立っちゃったかもしれないですね。もう一切れあるのでソースで食べてみましょう。
あっ (察し)
濃い味だから大丈夫とかそういう問題じゃないとさっきの焼きそばで学ばなかったのかお前は。
まだ身が残ってるんですが、そろそろゲオスミンに対する恐怖心が芽生えてきました。もうね、本当にゲオ臭が嫌なんですよ…
最後に、これまで試してなかった調理をしてみる。茹でこぼし(何度も茹でてはお湯を捨てるのを繰り返すという下処理の方法)をしてみるのはどうか。
湯気がゲオ臭くてきつい…この茹で汁にはなんかモヤァっとしたものが浮いている。しかしその分ナマズの身からはゲオスミンが減っているはずという希望が今の僕を支えている。
3回茹でこぼしました。身のにおいを嗅いでみると、ゲオ臭があまりせず、わりとふつうに魚のにおいがする。
ポン酢をかけていただいてみましょうねパクモグはいダメです
微塵も軽減されてませんわこれ。
🧎🏻♂️🧎🏻♂️🧎🏻♂️🧎🏻♂️🧎🏻♂️🧎🏻♂️🧎🏻♂️🧎🏻♂️🧎🏻♂️🧎🏻♂️🧎🏻♂️
もう精神的に限界なのでゲオ魚の調理はこの辺で区切りとします。先人の話では、身を細かく切ってカリカリに揚げてゲオスミンを揚げ油の方に移してしまえばいなんとかドローに持ち込めるらしいのですが、そこまでする気持ちが残念ながら残っていません。
再度弁明しておくと、ゲオスミンは人間が垂れ流した生活排水とか、釣りのために撒きまくった撒き餌によって水質が富栄養化したことが原因で発生するものであって、決して川魚本来のにおいではありません。ゲオスミンのにおいとは、人間の罪のにおいです。それを身をもって思い知ったことは、人間のうちの一匹として意味のあったことだと思います。
(釣行日: 2021. 5. 7)