しらたまが道草を採って食うブログ

私ついていくよ どんな辛い野食の闇の中でさえ

シロザが野草と思えないくらいに美味い

 

野草にはカーストが存在している。言わずもがな、タラ、コシアブラ、コゴミのような山深く入っていかないと採れない山菜が横綱大関で、フキノトウ、ワラビ、ゼンマイが関脇・小結を固めている。三役と前頭の間には希少性の観点で超えられない壁がある。山奥に入らずとも河川敷、海岸、田畑などでも採取でき、さらにその中でも特に食味の良い野草から前頭の上の方を占めていく。セリ、アシタバ、アサツキ、ノビル、ヤブカンゾウノカンゾウなど、野菜として流通するものもあるが、その中でひっそりと、しかし確かな実力者として戦っているのがシロザあるいはアカザという野草である。

 

ご参考

アカザとシロザ

 

名前のとおり、シロザの新芽には白い粉、アカザの新芽には赤い粉みたいなものが付いている。

シロザもアカザも、ヒユ科アカザ属(以前はアカザ科アカザ属に分類)の野草だけど、アカザはシロザの一変種らしい。結局、アカザとシロザを並列したときにどちらを先に持ってきた方がいいのか。最初に「シロザとアカザ」と言ったら、その次は「アカザとシロザ」と言わないといけなかったりするのだろうか。フェ◯ニストめんどくせえ。

 

2種のうちよく見られるのはシロザの方で、道端にもよく生えているらしいのだが、私は一度もシロザをお目にかかったことがない。これはシロザじゃないかと思ったらイヌビユでしたというパターンが多い。イヌビユも食べられるらしいんですが。

 

 

 

先日、琵琶湖に行ったときにようやく見つけることができたシロザ。

 

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すごい、本当に白い。可愛い。白い。

余談ですが、シロザの学名はChenopodium albumというそうです。WHITE ALBUMじゃん…

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* albumは「白い」を表すalbusというラテン語の中性形で、そこから「石灰」を指す語に転じた。英語のアルバムの語源になっている。

 

 

 

成長すると1メートルくらいの背丈になるらしいけど、これはまだ出たばかりの新芽のようで、背丈は10センチちょっとくらいのものだった。


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この白い粉状の何かは、水で洗うと多少は落ちるものの、基本はそのまま葉にくっついたままです。

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若い株だったので、茎も多少残してさっと1分足らずの時間だけ湯がいて、お浸しで食べてみます。ただし、シロザにはシュウ酸が多く含まれるので、気になる方はよく茹でた方がいいかもしれない。

 

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シロザはよくほうれん草のような味と称えられますが、ほうれん草はヒユ科アカザ亜科ホウレンソウ科の植物なので、遠縁の親戚みたいなものです。たしかにベクトルとしてはほうれん草に似た、いかにも栄養がありそうだなぁっていう濃さがある。一方で、ほうれん草ほど風味は強くなくて、噛むとホロッと崩れていくような菜物らしからぬ面白い口溶けがあり、これがまた何とも美味い。

キッシュとかココットによくほうれん草が入ってるけど、フィリングの味付けが薄かったり乳脂肪分が低かったりするとほうれん草のクセがどうも強く感じられることがあるので、代わりにシロザを入れると相当美味いと思う。

 

シロザは前評判に違わぬ味でした。

 

 

(採取日: 2021. 7. 17)