しらたまが道草を採って食うブログ

私ついていくよ どんな辛い野食の闇の中でさえ

寄生虫のエキノコックスが愛知県内で定着したかもしれない件

 

エキノコックス(多包条虫)という人気(?)の寄生虫がいる。なんだかよく分からないけど名前がかっこいいので言ってみたい寄生虫名ランキングの上位の常連者。

基本的には北海道のみに生息するとされ、キツネなどのイヌ科の動物に寄生する。ところが愛知県の知多半島エキノコックスに感染した野犬が継続的に見つかっているというニュースが、8月にツイッターでちょっとした話題になっていた。

 

 

ちょっと前から寄生虫の勉強をよちよちとしていたので既にこの話は知っていたのだが、最近知多半島方面にも釣りに行くようになったので何となく気がかりになってきた。(なにせ、知多半島の少し沖にある日間賀島の宿で、私は今この記事を書いている。)

 

こちらは愛知県のHP

エキノコックス(多包条虫)調査−検査結果月報|愛知県衛生研究所

 

 

私程度の人間が持っている知識は既に上の記事内で語り尽くされているが、あらためて文字にすると、エキノコックスは複数の種を擁する属名で、日本で主に問題になるのはエキノコックス属のなかの多包条虫。エキノコックスの中間宿主はネズミで、終宿主はイヌ科の動物。つまりエキノコックス(幼虫)を体内に持ったネズミをキツネ・イヌ・タヌキなどが食べることで、それらの動物に寄生し、その体内で成虫になる。

人への感染経路は、エキノコックスの成虫に寄生されたイヌ科動物の糞のなかに含まれる虫卵(殻のなかに複数の幼虫が入っているかたまり、オーシストという)を何らかの理由によって摂取してしまうことによる。上流でキツネが糞をしたその沢の水を飲むとか、糞に汚染された山菜や果実を生食するとかですね。

 

人が経口摂取した虫卵は体内で孵化したのち、肝臓などに定着して増殖、その臓器を重篤な機能不全に至らしめます。エキノコックス症は潜伏期間が長い(感染後数年~10 数年)ことが特徴で、この間無症状で経過することが多いため、早期の発見が難しい。しかも有効な治療薬がないため*、病巣を外科的に摘出するしかない。

*人が感染した場合の(つまりエキノコックスの幼虫に対する)有効な治療薬がないという意味であって、成虫には駆虫薬が存在し、飼い犬用に動物病院で処方してもらうことができる。ただし、エキノコックスに感染しないようにするワクチンの開発は長年試みられているものの未だ実用化されていない模様 → エキノコックス終宿主ワクチンと駆虫薬について

 

 

 

 

 

 

 

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愛知県のエキノコックスは、平成26年に初めて野犬から感染例が見つかり、その後29年以降に8例の感染が見つかっている(令和3年9月現在)。

なんで愛知県でエキノコックスの感染が出ているのか。今のところよく分かってないらしいけど、知多在住の一家がイッヌを連れて北海道旅行に行ったときにイッヌがこっそり野ネズミを食ってて、知多に帰ってきてからそのイッヌがこっそり野糞したとか、そのくらいしか考えられる経路ないんじゃないかこれ。

私は名古屋市住まいなんですが、とにかくエキノコックスが北上してこないかが気がかりです。今はまだ知多半島だけに収まっているようですが、東海市大府市がやられたらいよいよ名古屋から脱出した方がいいかもしれない。

 

 

さて、私は野草食いの人種なので、寄生虫には十分注意しなければならない。ふだん野草を食べない中上流階級の読者諸兄も、動物の糞便に汚染された野草を食べざるをえないという限界的状況も、この先もしかしたら、あるかもしれない。そのような場合どのような対策を取ることができるだろうか。

まず、寄生虫については加熱が無難である。数年前にアニサキスが話題になったときに、寄生虫には冷凍が有効らしいと聞いた方もいるかもしれないが、虫卵は抵抗性をもち-20℃程度では死なないと言われている(他の寄生虫、例えばトキソプラズマなどでも同様である)。家庭用の冷凍庫は一般に-18ºC程度なので、凍結による殺虫は業務用冷凍庫によらなければ効果が望めない。

食材をよく洗うことも大前提ですが、どうしてもリスクが残るのでやはり加熱は必要かと思われます。

皆様ご安全に。

 

 

 

【参考資料】

・東京都福祉保健局 食品衛生の窓 エキノコックス(多包条虫)|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局

 

・北海道立衛生研究所 エキノコックス症

* 上記二つのリンク先にはどちらにもエキノコックスの生活環の図があり、結局は全く同じことを言っているのだが、是非絵柄の違いに注目していただきたい。

 

エキノコックス症 - Wikipedia