しらたまが道草を採って食うブログ

私ついていくよ どんな辛い野食の闇の中でさえ

離島でツルナを摘んできた

 

愛知県知多半島の先っちょにある日間賀島に行ってタコを食ってきました🐙 妻子が寝ている間に釣りをするなどしていたのだが、せっかく海岸に来たので野草もついでに探してみました。

 

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テトラ帯の隙間のプラゴミの堆積からたくましく生える草。ツルナかな?

海岸地域特有の野草の代表格で、マオリ族が食べていたことからニュージーランドのホウレンソウ(New Zealand spinach) という英名を持つ。温暖な沿岸部に広く分布する植物なので別にマオリ族じゃなくても食べているはずだし、ホウレンソウはアカザ科であるのに対してツルナはハマミズナ科。なんだそのガバガバネーミングは。

 

ツルナをちゃんと見るのも食べるのも今回が初めてだけど、一発でツルナだと分かった。他の草とは明らかに異質なツヤツヤプックリ感が葉にあるんですよ。触ってみると葉には厚みがあって、ちょっとした多肉植物か?と一瞬思ってしまうような柔らかみがある。

 

他の場所も探してみたけど砂浜には全く生えておらず、何故かテトラ帯の隙間とか港の漁具小屋の裏とか微妙な場所にばかり生えている。テトラの間に潜ってしばし草を摘む。

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本やネットには「伸びて間もない先端部の若葉を食べる」と書いてあるけど、根元近くの葉もちぎってみるとあまり繊維感がないので、普通に食べられそうだと判断し、調理していきます。茎は硬いので食べません。

葉柄の生え際に付いている果実?はどうするかよく分からないけど、とりあえず残しておく。

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葉の裏。スポンジ状の組織になっていて、これが葉に多肉感を与えているっぽい。そして採取から2日くらい経っているのにまったくヘタレておらず、水々しさをずっと保っている。
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採ったときから、アイスプラントに似てるなあと思っていたので調べてみたら、アイスプラントも同じハマミズナ科の仲間。試しにツルナを生でかじってみると、苦味やアクのヒリヒリ感の中に塩味みたいなものが感じられる。

 

アイスプラントやツルナをはじめ海際に生息する植物は塩生植物と呼ばれ、海水による高塩分濃度環境下で発生する各種のストレス(高浸透圧により細胞内の水分が排出されてしまうことによる乾燥、道管・師管からの塩分の流入、細胞内のナトリウムイオンが過剰になることによる代謝の阻害など)に対応するための機構を持っています。たとえば、

 

□ 細胞内の水分が蒸発しない仕組みを備える

  • クチクラ層(植物や甲殻類・昆虫など様々な生物に見られる体表の固い組織(言うなれば殻/皮))の発達

□ 高浸透圧に耐える

  • 糖類やアミノ酸などの有機化合物(適合溶質あるいはオスモライト)を細胞内部に蓄積することで細胞内の濃度を高める

□ トランスポーターを多く発現させることによるナトリウムの排出

□ 特定の器官への塩分の隔離・蓄積

  • 古い葉に塩分を集約して落葉させる
  • 塩嚢細胞(えんのうさいぼう)と呼ばれる塩分を蓄積するための表皮細胞に塩分を貯蔵する
  • 液胞に塩分を隔離する

 

アイスプラントやツルナの場合は塩嚢細胞を持っており、そのため食べると塩味を感じるというわけ。

 

* ツルナに関係ない完全な余談になってしまうが、アイスプラントは普通の環境下では普通の光合成であるC3光合成を行うが、乾燥/塩ストレス下ではCAM型光合成を行うようになる(ツルナはそうでもない)。これにより、細胞内の水分の蒸発を防ぎつつ光合成を行うことができる。ただし、CAM型光合成は乾燥/高塩環境には強いものの、夜間に取り込んだ二酸化炭素をリンゴ酸に変換してさらに昼間にそこから二酸化炭素を取り出すということをしなければならないためエネルギー効率が悪いこと、また昼間にできる光合成は液胞に貯蔵されたリンゴ酸の量に規定されることといった理由から、光合成自体の効率は悪く成長速度が遅い。そのため、アイスプラントの栽培においてはまずストレスのない環境でC3光合成をさせておき、ある程度成長させておいてから塩ストレス環境に変えて塩嚢細胞の発現とリンゴ酸の生成を促し、アイスプラントらしい食味を出している。

CAM型光合成自体の話は過去記事でもしています↓

 

 

 

 

 

 

さて、とりあえず普通に茹でていく。いったん2分くらいで様子を見てみます。アクがこんな風に出てきました。

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鮮やかな緑。美味しそうですね。
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おかかと醤油で。
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シャキシャキシャリシャリとした小気味いい軽い食感。葉には繊維感が全くありません。味は、風味の弱めのホウレンソウみたいで普通に美味しい。…でも口の周りと喉がヒリヒリしてきた。シュウ酸がまだまだ残っているみたいです。ちゃんと調べてみたら、ツルナのシュウ酸含有量は食品の中でもかなり多いみたいです。含有量だけ見ればタケノコ以上じゃないか

医薬品情報21 » Blog Archive » 飲食物中の蓚酸含有量について


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果実は固くてもそもそするので食べなくていいです。

 

 

 

 

 

もう一度2分くらい茹でて一晩水にさらしました。もうシュウ酸のイガイガは皆無なので、ただただ美味しい野草です。さすが野菜として流通するだけの美味さ。

 

うどんに乗せたり、

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だし醤油とネギ油かけたり、
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炒め物にしてもいいですが、その前に食べ切ってしまったので炒め物は今度にします。

 

 

ツルナは他の野草と見間違えにくいし、下処理も楽なので、今後見つけたら即採取です。

 

 

(採取日: 2021.9.21)