潮干狩りというと、潮干狩り用に漁協がアサリを撒いていてそこに客が金を払って入るというのが一般的ですが、そういう潮干狩りを楽しんでできるような人間なら初めから野食などという意味わからん行為はしていないわけで、野食家は採らねど高楊枝、ということで、採れる数が少なくなろうとも天然の貝が採れる場所にしか入らないと決めております。
なんとも運良く、アサリなどの貝類に漁業権のかかっていない干潟が近場にあり、そこで毎年アサリやらハマグリやらを採らせていただいている。ただ、どうしても数は少ないので、キープサイズの貝ということになると片手に収まる程度の量しか採れません。だからといって稚貝を採るのは御法度です。守ろう生物資源。
干潟って色んな生き物がいてふつうに楽しいので、無料で干潟遊びに来たのだと思えばあまり採れなくても満足度は高いのですが、そうはいってもこの吝嗇のしらたま、せっかく来たからには土産を持って帰りたいと思ってしまうのもまた無理からぬ話。
そこで目をつけたのがカニ🦀🦀🦀
干潟の一角にちょっとした岩場があり、そこにイソガニや、運が良ければタイワンガザミがおり、なんならこいつらを獲った方が楽しいんじゃないかと閃いた。
急遽前日に罠を作っていく。ただ、漁業権的に問題なかったとしても、家族連れが多く訪れる干潟にカニかごを仕掛けるのはさすがにマナーが終わってると思い、洗濯用ネットにシーフードミックスを入れて岩場に置いておき、集まってきたカニを捕まえるというスタイルでいく。


わが子がフェットチーネグミ(グレープ味)も入れてみてはどうかと提案してくれたので、試しに入れてみましょう。
仕掛ける。

…なんかですね、岩場を見てもイソガニの姿がまったくないんですよね。少し季節が早かったか?去年来たときは小さいながらもうじゃうじゃいたんですが。
カニいないねー (´・ω・`) と話しながら散策していると、少数ながらモクズガニが水の中をよちよちと歩いている。そりゃモクズガニが歩いてりゃ掬うよ。


モクズガニは淡水性のカニだが、秋になると河口部で交尾・産卵するために上流から降ってくる。4月の終わりに河口部にいる大型個体、しかもどの個体も弱っているように見えたので、産卵の最後発組ということなんだろうか。写真を撮り忘れたが、岩場にもモクズガニの死骸があちこちに落ちていた。モクズガニは繁殖行動のあとはまもなく死んでしまうらしい。
ということはですね、今回捕まえたカニには、モクズガニやチュウゴクモクズガニ(上海蟹)が美味しいと言われている所以である卵(内子)が入ってないわけですよ。カニ味噌と身に期待を込めて食べることになりますが、体力を使い果たしたカニなのでどれほど美味しいのか。


けっこう獲れたんだわ。
泥抜き(糞出し)をするため、また、鮮度を保つために、モクズガニは生きたまま持ち帰るのが定石なのですが、採取の段階で既に弱っていただけに自宅に着いた時点ですでに死んでしまっていた。さてどうするか。
蒸して食べたかったけど、泥抜きもできていないし、次善の策として汁物で出汁を味わうという方向性で考えてみる。となれば、カニをいかに綺麗に洗えるかに出来が掛かっている。
モクズガニは漢字で藻屑蟹と書くとおり、ハサミ(鋏脚)に藻屑のように毛がモサモサと生えているんですが、ここに泥やらゴミが溜まっています。

水洗いをくりかえすが、どうにも泥臭さがとれないので、毛自体の除去を試みる。キッチンバサミで切れるだけ毛を切っていく。

続いてふんどし。下の写真でいうと、カニの腹側にある三角形の部分がふんどし。ふんどしが三角形ならオス、丸くて大きければメス。ここは開閉ができるようになっていて、汚れが溜まっているところなので使い古しの歯ブラシなどで汚れを落とします。

あとは脚の付け根とか顔とか、汚れが溜まっていそうなところを同様に歯ブラシで洗っていく。

半分に割るとこんな感じ。
茹でていきますが、灰汁はたっぷり出るのできっちりと取り除いていきますよ。上述のとおり、甲殻類は汚れをけっこう溜め込んでいるので、灰汁を取らないと臭みとかヤバみが残ります。

出なくなるまで灰汁を取り続ける。

だしパックも入れて煮立たせて、味噌を加えて完成。

けっこうな量のカニを入れたんですが、思ったほど出汁が出ていない。やっぱり瀕死だったので味が薄いのだろうか。とはいえ、カニの味噌汁の美味しさは他に代え難い良さがありますね。
身。出涸らしなのでそんなに味がするもんでもない。

美味しく頂けましたが、少し味香りの豊かさに欠ける印象でした。とはいえ、自然下でもあと数日以内に死んでいたであろう個体を美味しく頂けたのなら、それはそれでいい野食と言えるかもしれない。次回は旬のモクズガニで作って味を比べたいですね。
(採取日: 2025. 4. 27)