しらたまが道草を採って食うブログ

私ついていくよ どんな辛い野食の闇の中でさえ

お前らはいつもそうだ ターシャ・テューダーがヤマモモを摘んでジャムを作ったらおしゃれだというくせに 俺が同じことをしてたら不審な目で見るんだろ

 

そう、静かなる怒りが常に私の中にあるのですよ。

 

NHKの土曜夕方とかに、ターシャ・テューダーさんとかベニシア・スタンリー・スミスさんが自然に寄り添いながら生活している様子を描いたドキュメンタリー番組がやってて、野に出て野生のいちごを摘んで「これをジャムにするのがこの季節の恒例行事なの」とか言ってて、隣で妻がそれを見ながら「こんなおしゃれな生活したいわん🐶」とか言いながらさけるチーズ食べてたりするんですけど、いやいや、他ならぬ貴女の夫がまさにそんな生活を実践しているのだが?とか思わなくもないわけなんですね。

初夏にヤマモモを採って食す。なぜアメリカの絵本画家がやればおしゃれで、私がやったらオランウータンのエサ集めということになるんですか。東山動物園内にあるヤマモモは飼育員さんが集めてオランウータンが食べるんですが、その話はもう去年書いた。

 

 

 

 

今年は妻への抗議の意も込めて、ヤマモモ採りにわが子を連れて行くことにしました(結局妻も来た)。

 

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いいですね。

 

ヤマモモは熟すとぽとぽとと地面に落ちていきます。
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ヤマモモのよくある採り方は、地面に傘を置いて木を揺らして実を落とすというやつなんですが、幹が太くてなかなか落ちてこない。あと、ナイロン地の傘でやるとヤマモモの果汁がついてとれなくなるので、やるならビニール傘にすることを強くお勧めします。
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直に採った方が早いぞということで、虫取り網で枝をゆすってキャッチしていきます。網に果汁がつかないように内側に大きな袋を重ねています。

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上手く採れましたが、ヤマモモの重さで網が破れてしまった。釣り用のネットでやるべきでしたね。
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生でも食べつつ、今回はジャムを作っていきます。赤い、まだ熟していない実も気にせず使っていきます。
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このくらいの色のやつが完熟。このくらいになると甘い。
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砂糖たくさん。酸味の強い果実なので砂糖は控えてはならない。

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煮ていく。
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なんか表面に浮いてるんですよね。調理開始後にいろんなレシピとか見てみると、「汚れや虫を取るために一度ヤマモモの実を下茹でする」とある。なるほどね。まぁいいや。
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今回初めてジャムにするにあたり、一番の不確定要素だったのが種取り。ザルの中でよく潰せばだいたい解決する問題なのか、それとも一粒ずつ手で種を取らなければならないのか。まずはザルの中で潰してみる。
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うーん、種の周りの部分はさすがに取れないですね。コスパを求めるなら許容範囲かなとも思うけど、コスパのために野食をやっているわけではないので、結局2時間半くらいかけて丁寧に手で種と果肉を分けました。

 

果肉を戻して煮詰めていく。
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いいですね。

 

 

瓶詰めした様子はもうめんどくさかったので写真に収めていませんが、ボンヌママンの瓶に詰めるとたいそうおしゃれです。

クソダサ写真ですが、バタートーストにのせるととても美味い。くっきりとした酸味がこの上ない果実感を出しており、その辺のジャムでは物足りなくなる。
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あとはスコーンを焼いて添えたりとか、パウンドケーキに混ぜ込んだりしようと思いつつ、トーストの段階で美味すぎてまだやってないです。このままトーストで消費し尽くしてしまうかもしれません。

 

みんなもヤマモモのジャムを作ってターシャ・テューダーになろう。

 

 

(採取日: 2023. 6. 18)

 

カメムシを食べるときにおいは取り除いた方がいいのか問題

 

カメムシという虫は、世界的に見るとアジアやアフリカで食べられているメジャーな食材ですが、その食材としての地位は「あのにおいがあるからこそ」なのか、「あのにおいがあるにもかかわらず」なのか。そこが、皆さんがカメムシを食べようとしたときに悩むポイントなのではないかと推察いたします。

かく言う私も今まで食べたことがなかったのですが、折りしも実家の柿の木の摘果を頼まれたので、きっと今がその時なのだろうと覚悟して今回試してみることにした。

 

 

 

カメムシというやつは基本的に農業害虫とされています。カメムシが果実の汁を吸うと、そこが黒っぽく変色して形もボコボコになってしまう。見た目が大変悪くなってしまって、自家消費以外の道を断たれます。

 

柿の木にもちょこちょことカメムシがいるものの、まだ実がなる季節でもないのであまり数がいない。むしろカメムシが集まっていたのは菜の花。


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おい、なに人んちの菜の花で交尾してんだ。


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アオクサカメムシと思われる。メジャーなカメムシですね。よく見ると可愛い顔してるんですよね。

 


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写真に小さく写っているオレンジと黒のカメムシはナガメ(菜亀)といい、その名のとおりアブラナ科の植物につく。残念ながら捕り逃がしてしまった。カメムシって体が重いのか、指で少し突っついただけでポロッと落ちるんですよね。

 

 

 

 

 

集めた。
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集めたのはいいけど、この後どうすればいいんですか。

何を悩んでいるかというと、冒頭でも書いたとおり、カメムシを食べるにあたってカメムシ臭は活かす方向なのか無くす方向なのか、どちらで攻めればいいのかという話である。

日本の著名な昆虫食家の皆さんはどうやらにおいを活かす方向で食べているらしい。そもそもカメムシにはパクチー香のやつと青リンゴ香のやつがいるらしく、その違いを楽しむには香りを飛ばすなんてありえないということになる。

 

 

参考(参考になるとは言ってない)

 

 

もう一方の「カメムシ臭を活かさない食べ方」ってなんやねんという話なのですが、立教大学野中健一先生が書かれている『虫食む人々の暮らし』(NHKブックス、2007)のなかで、カメムシを調理する前工程で徹底して臭みを取り去る様子が描かれているんですよ。それを見て、「やっぱりカメムシを日常的に食べている人にとってもカメムシって臭いんだな」と思ったものである。

以外抜粋

 

2004年4月に私は、南アフリカ共和国東北部へさまざまな民族の人たちの昆虫との関わり合いを調べようと調査旅行に出かけた。

(中略)

採集されたカメムシは、バケツの中でまだ生きてガサガサ動いている。そこに少量の熱湯を注いで、木べらでかき混ぜる。このような目に遭わせることにより、カメムシは臭い物質を分泌液として発射し発散させる。カメムシの独特のにおいは警戒物質で、攻撃への防御のために発散されるものである。熱湯をかけてかき混ぜるこのやり方は、その物質を体内から発散させてしまうのに効果的なのだ。(中略)においを取り除くため、これを三度繰り返し、におい成分を出し切ることによって、カメムシの体からにおいが取り除かれるのだ。

(中略)

採集したカメムシの中には、死んでしまったものも出てくる。そうなるともはやにおい物質を発散させることはできないが、それはそれで別の方法が考案されている。まず、死んだカメムシの頭を手で摘んで取り除き、内臓をちぎられた首から指で絞り出す。出てきたものをギュッと石になすりつけてこすり、取り除く。徹底してにおいのもとを取り除く。

 

野中健一『虫食む人々のくらし』p110-113

 

においが処理されたカメムシは、このあと茹でて天日干しにされる。干しカメムシはそのままおやつや酒のつまみとして食べられることもあるし、炒め料理にして彼らの主食であるトウモロコシ粉のお粥のおかずになることもあるらしい。

 

東南アジアでも虫がよく消費されるが、ラオス農村部でのカメムシ食事情についてもこのような記載がある。

採ってきたカメムシは、素焼きにしてそのまま食べてもよいが、塩や調味料をかけて炒めれば、よいおかずになる。堅い頭や翅は取り除いて柔らかな身の部分だけを食べる。チェオと呼ばれるラオスのおかず料理に、このカメムシもよく使われる。素焼きにしたカメムシを鉢に入れて、杵で搗き潰し、ニンニク、トマト、トウガラシ、ミントなどの野菜に、魚醬、塩、化学調味料を混ぜて、さらによく搗いてペースト状にしたものだ。お櫃からモチ米を手に取って握り、チェオにチョンチョンとつけて食べる。日本のつけミソのような感覚である。辛み、酸味とカメムシの味が絶妙に調和していて、食が進む。コオロギのチェオとはまた一味違って、スゥーッとした感じがする。

五ミリ程度の小さなカメムシで、チェオを作ってもらった。これはカメムシを炒めて、レモングラスとトウガラシとを合わせて搗いて擦り潰したものだ。トウガラシだけではただ辛いだけのふりかけになってしまうが、レモングラスが入ることによって、カメムシの独特のにおいは打ち消され、トウガラシの辛みがカメムシの濃厚で爽やかな辛みと甘みのハーモニーとなる。

(中略)

だが、ここで疑問が生じる。私がラオスの村で見た限りでは、別段におい抜きの処理はしていないのだ。村人は採りたてのカメムシをすぐさま料理していた。それでできあがった料理が、とりたてて臭いということもない。聞くところでは、ときには生きているカメムシに熱湯をかけて、においを取り除くこともあるというのだが。こちらは、南アフリカで見た方法に近い。だが、採ったあとに死んでしまったカメムシには、お湯をかける必要はなく、そのまま調理すればよいのだと彼らは言う。たしかに、素焼きのカメムシを食べても生きていたときのようないやなにおいは感じられない。

 

同書、p122-124

 

ラオスのエピソードでは、このあと、カメムシは生で食べる方が美味しい、このにおいがいいのだ、と言う人々のことも紹介しているが、そのような場合でも人によってにおいへの許容度は異なるらしいことが述べられている。

結局、「臭いから美味い」なのか「臭くないほうが美味い」なのかは人の好みということだが、どちらの事例でも、基本的にはにおいは処理されるべきものとされている。主食のおかずとして食べるという点がどうやらポイントなのではという気がする。

 

 

 

 

 

今回私が捕獲するアオクサカメムシは、そのまま嗅ぐといかにもカメムシな臭いがする。カメムシのにおいを除去するなら、捕りたて元気な今がチャンスである。さて、においを取り除くのか残すのか。あのにおいが口の中に入るとどうなるのだろうという好奇心もあるが、私は昆虫食に関しては人文地理学的な知的好奇心が強いので、実際にカメムシが食べられている地域の人々の感覚を知りたいという思いが強い。

 

ということで、カメムシには悪いが容器を振って、カメムシたちににおいを出してもらいます。
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念のため蓋を開けて確認してみるか…

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くっせ

 

 

しっかりにおいを出してくれてます。この程度でにおい成分が体内から消えたのか全くわかりませんが。

 

 

 

 

 

 

 

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この子たちを、


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まず下茹で。虫を油で炒めたり揚げたりするときはまず茹でろって先人が言ってた。生のまま油に入れると爆発するので、まず茹でて体内のタンパク質を凝固させる。

 

油で炒めるとすごい勢いで油が撥ねるので気をつけてください。
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美味しそうですね(大嘘)


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この腹の横の穴からにおいを出すんですねぇ。

 

 

サクッ…

 

翅(はね)は取り除いてないですが、小型のカメムシなのでそんなに気にならないです。

 

(・ω・)!

 

すごくコクがある。脂質を感じさせる濃厚さがある。そして見事ににおいが取り除かれている。この味なら、上に出てきたラオスのチェオという食べ方がすごく美味そうに思える。豚肉のリエットに唐辛子とハーブとナンプラーを入れて、そこに少しのバターと干しエビを入れた感じなんじゃないかな。チェオについての記述は他の本でも読んだことがあって、コオロギで作るのが一般的なのかと思ってたけど、カメムシを使うのもよくわかる気がする。

 

 

2匹目も食べてみましょうね。

 

あ、くっせ…

 

ペットボトルの振りが足らなかったのか、もしくはそのときにはすでに死んでいたのか、この個体はにおいが強烈に残ってました。全面的にパクチーの香りが広がります。「カメムシパクチーのにおい」っていうのは、比喩じゃなくて本当なんですね。思った以上にパクチー香。言うなればパクチーが好きな人であればこのにおい自体は受け入れられると思う。鼻で嗅いだときと、食べて含み香として感知したときとで、においの印象がけっこう変わるのが面白い。

そして、なんか苦いですね。直前に食べていたものの影響なのかよくわかりませんが、まぁ野食してると「なんか苦い個体」には一定の確率で当たるものなので気にするほどではないだろう。辛みは全然感じなかったので、このアオクサカメムシは辛くない系のカメムシなんですね。

 

 

夕食と一緒にカメムシを食べてたんですが、この日の夕食は冷凍の焼き餃子だったんですよ。市販の餃子ってにおい強いじゃないですか。正直言って、カメムシより餃子の方が普通にくさいのでは?って思ったんですよ。さっきのにおうカメムシの後に餃子食べたら、カメムシのにおいも味も一瞬で餃子に打ち消されて、そのあとまたカメムシを食べてももう餃子の余韻しか感じられなくなりました。とにかく餃子の味とにおいが強すぎる。別に私は添加物アンチでもオーガニック厨でもないですが、カメムシよりも冷凍餃子のほうがよっぽどやべえもん入ってるんじゃないかとすら思いました。

 

 

 

カメムシのコクにはハーブやスパイスがすごく合いそうなので、次回は唐辛子といっしょに炒めて甘辛酸っぱいエスニックな味付けで食べてみてもいいなと思いました。

 

 

(採取日: 2023. 5. 4)

葱坊主ができる頃のノビルって固くないんですか

 

どこにでも生えていて、アク抜きなどの面倒な調理工程が必要なく、そして美味いという点で、ノビルが人権野草であることに異論はないことと思います。

ノビルは春先から出始めますが、あまり小さいうちにとっても食べ応えがなく、一本一本薄皮の処理をするのも面倒なので、ある程度の大きさになってから採るのがいい。鱗茎(いわゆるタマの部分)も大きい方がいいしね。

 

4月中旬、イタドリを採りに河川敷に来たときに、ついでにノビルでも採って帰ろうかと思い立った。

 

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他の草も生え散らかしてるので分かりにくいですが、ノビルにつぼみ(葱坊主)ができている。普通のネギの葱坊主であれば大変美味しいのですが、わざわざノビルの小さい葱坊主が美味しいのかは知らない。かと言って集めて食べるのも面倒くさい。それよりも、葱坊主ができるころのノビルは成長しきって背丈が大きくなっているので、全草を食べられるなら歩留まりがすこぶる良い。

だってこの大きさですよ。
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問題は繊維が固すぎないか。成長フェーズでは新しい細胞がどんどんできているので柔らかく食べやすいが、成長しきっていろいろ花を咲かせる準備をしましょうという段階になると繊維が固くなってくるので、だんだんと食べるのに向かなくなってくる。

野草の繊維の強さを測るときの自分の中での基準ですが、野草の茎を手で折ってみて、①小気味よくポキンと折れたらまったく問題なし、②少ししなってからポキンと折れるときは小さく刻んで火にかければ食べられる、③折れ目に目に見えるほどの繊維が残る、または一発で折れないのであれば諦める、という感じです。

試してみると今回のノビルは②のイメージで、おそらくまだいけそう。ということでまとまった量を採取していきましょう。

 

 


おりゃ!

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タマが千切れてるじゃねえか!!!下手くそ!!!人間やめろ!!!

 

 

 

今度はいいね🥰🥰🥰🥰🥰🥰🥰
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できれば脇についている小さな鱗茎は土に戻してあげるといいです。

 

 

 

 

 

 

 

採ってきたノビル(一部)。小ネギやん。

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試してみるまでもなくザク切りで食べるには繊固い気がしたので、小口切りで繊維を細かく断ち切って食べてみる。

 

ちょうど水餃子をしたのでスープに入れてみる。最近冷凍の水餃子を重宝してましてね。餃子を茹でて野菜添えるだけでもよし、野菜と一緒にスープ風にしてもよし。共働き世帯には冷凍水餃子、はっきりわかんだね。

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市販の小ネギに比べたら当然固めではあるけど、ちゃんと食べられますね。妻が文句言わなかったので問題ないということでしょう。

 

タマも美味い。
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小口切りすれば普通に使えることがわかったので、採ってきたノビル全部小口切りにしてタッパーで保存しながら使いました。
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味噌汁に入れてもよし。
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酢鳥の彩りに入れてもよし。

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さすがに火をしっかり入れた方が食べやすかったので、そこだけ注意ですね。

 

 

(採取日: 2023. 4.18)

ユキノシタの天ぷら

 

近所の公園の一箇所にだけユキノシタが生えていた。天ぷらになるべくして生まれてきた野草です。

 

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よく家の庭に植えられていたりもしますね。ユキノシタを庭に植えておけば、いつでも天ぷらをすることができるわけです。庭にユキノシタを植えてるのに天ぷらにしない人は何を考えてるんでしょうね。


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ユキノシタの葉の裏は白くなっていて、かつ赤い毛が密生しています。「雪ノ下雪乃の毛…」とかすぐそういう気持ち悪いこと言うのやめてもらっていいですか。

 

 

 

株から伸びている赤いのは走出枝(ランナー)というやつで、この出走枝の先端から葉や根が出てきて個体として分離します。芋とかムカゴと同じで、身体の一部が新しい個体に分かれる栄養繁殖という無性生殖の一形態です。

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根っこはこんな感じ。
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天ぷらにするときは、見た目が良くなるよう葉の裏にだけ天ぷら粉をつけて、裏側を30秒ほど、表側を一瞬だけ揚げる。

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ユキノシタ自体にはこれといった味はないですが、葉に一定の厚みがあるためシャリシャリとした葉の食感が感じられます。表面が毛に覆われているので衣の絡みが良く、この点でも天ぷらとの適性が高いですね。

 

 

 

 

 

ちなみに、天ぷら特化型の野草は、このユキノシタの他にアカメガシワやカラムシなど色々あります。この中ではユキノシタが天ぷらのタネとして一番メジャーで、野草イーターではない一般人からも知られていますが、葉の表面が毛で覆われているので天ぷらという調理法との相性がいいという点で共通します。

アカメガシワにはモチモチとした食感があります。アカメガシワは本当に河川敷や里山に行けばどこにでも見つかるわりに美味しいので、個人的に気に入ってる野草です。

 

カラムシは葉が薄いので、葉自体の食感はほぼ感じられずただサクサクとしています。紫蘇の天ぷらの食感が好きな人は好きだと思う。

 

 

どれも単体で天ぷらのメインを張れるほどではないけれども、賑やかしとして天ぷらの盛り合わせに入っていてもおかしくないくらいの美味しさです。

 

 

(採取日: 2023.3.25)

妻の導きのもとつくしを採る

 

3月の頭、妻が「そろそろつくし出てないかな?」と言い出した。

わが細君は貴婦人なので野草など食べない。「これ地域によっては流通してるよ」と言っても警戒して食べないことの方が多い。ひょっとすると、以前私がドクダミのフライを食べさせたのが原因なのかもしれないの。

【ご参考】弊ブログの初回の記事

 

しかしなぜかつくしにだけは異常な執着を持っており、私以上の熱意をもって毎年つくしを採取している。今回も、もうすぐつくしの季節だな〜と思っていたら「つくし生えてないか見てくるわ」と言って自ら確認に行く始末。つくしの何が君の心の柔らかい場所を触れるというのか。

 

そんなわけで珍しく家族総出で野草を採りにきた。

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まだ出始めたばかりですね。つくしはどれだけでも生えてくるので、小さくても容赦なく採取していきます。
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とりあえず初物ゲット。
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出始めのころはハカマどうしがくっついているが、伸びるにつれてハカマどうしの距離が離れてきます。入学したての頃は長かったスカートも、背が伸びた今では膝丈だね… 
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ハカマを取ります。ハカマも食べられなくはないですが、固くて口に残ります。本当にどうでもいいんですけど、自分で書いてるのにハカマを毎回ネカマに空目する。
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104本のハカマを取るのに40分くらいかかりました。つくしはこの作業の手間があるのがネックですね。

 

 

下茹で1分程度でごく短く済ませて、2,3 時間水にさらす。苦味やエグ味が魅力なのであまり時間をかけないようにするのがいいものの、わが子も食べるのでこのくらいで様子を見ます。

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ちなみにつくしにはアルカロイド類、チアミナーゼ[※1]といった人体に有害な成分が含まれています。つくしは大量に食べるようなものではないので問題になることは多くないとは思いますが、これらの成分を処理する意味でもアク抜きはちゃんとした方がいいと思います。クックパッドでつくしを生のまま調理している人を見かけたけど、強く生きてほしい。

[※1] チアミナーゼチアミン(=ビタミンB1)の分解酵素であるため、大量の摂取はチアミン欠乏症(人間でいうところの脚気)を引き起こす。チアミナーゼはつくし(=スギナ)と同じシダ植物であるワラビやぜんまい、魚介類、甲殻類にも多く含まれている。酵素なので加熱すれば失活する。

 

 

 

鰹節と醤油をかけていただく。
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つくしの味を一番よく感じられて美味い。ほのかな苦味エグ味と少しモソモソしたような食感が唯一無二の味わいを醸し出している。文字にするとそれがなんで美味いんだよと思うのだが、なんか美味いのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

2週間後、妻がもっとよく採れるつくしポイントを見つけてきた。つくしに対してのみ向けられるその熱意はなんなんだよ。


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3月20日前後でちょうど食べ頃になってました。

 


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数えていないけど350本くらいかな。ハカマを取るのに2時間半くらいかかりました。いくら手仕事が好きと言ってもつらいものがある。
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たくさんあるので、普段やらない調理法をしてみます。牛肉と炒めて、醤油、オイスターソース、砂糖、胡麻油で。

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濃い味付けだけど、奥につくしの風味が感じられて美味いですね。こういう調理をするなら下処理の時間をもうちょっと短くして風味を強く残しておいてもいいかもしれない。

 

 

茹でただけのつくしをうどんに添えるとおつな感じになります。
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つくしは案外いろんな料理に使えるので、たくさん採って茹でたものを冷凍保存しておくのもよいです。

 

 

 

(採取日: 2023. 3. 5 / 3. 21)

ハクモクレンの花を食べようとしてみた

 

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申鶴復刻おめでとうございます!

仙人である申鶴は花を食べます。私も負けられないゾ、ということで花を食べていきましょうね。

 

 

 

ちょうど近所のハクモクレンが先週見頃になっていました。見頃ということは食べ頃だと解釈しても、あながち間違いではないでしょう。

 

 

あ、一週間経ったらもう花が終わりかけてますね…。

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先日からの5月並みの陽気と今日の雨のコンボで花の多くが散ってしまった。
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まだ褐変しきっていないものだけを拝借。
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桜もきれいに咲いています。八重桜の花を摘んで塩漬けにしたいんですけど、近所に八重桜がないんですよね。

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ユキヤナギも満開です。普段は地味だけど、花が咲くと他の花にはない迫力がありますね。ユキヤナギ小柳ゆきって言い間違えがち。
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それにしても、ハクモクレンって食べられるんでしょうか。花弁が分厚くて食べ甲斐がありそうだなという理由だけで先に採取してしまいました。こういう油断が命取りになるんだよ。

 

まず、ハクモクレンは生薬になるようです。

薬用には、開花直前の蕾を採取し、軸を除いた後、風で乾燥させます。生薬名は「辛夷(しんい)」です。中国最古の漢方の書物『神農本草経』(250年~280年頃)の上品に収載されている生薬で、「辛雉」「木筆」「迎春」などとも呼ばれています。蓄膿症や鼻炎、鼻づまりなど鼻の病気一般や、頭痛、解熱、鎮咳などに用いられています。

 

(https://www.yomeishu.co.jp/sp/genkigenki/crudem/200331/)

 

 

ハクモクレン(白木蓮)とモクレン(紫木蓮〈シモクレン〉)は別種で、モクレンの花はすべて紫です。どのサイトを覗いても基本的にハクモクレンを生薬にするとあり、モクレンとは明確に区別されているっぽい。

一方、白い花を咲かせる点で共通するハクモクレンとコブシは、どちらも蕾が上記の生薬として利用されるとのこと。

 

【参考:花の見分け方】

モクレン、ハクモクレン、コブシの見分け方 - 株式会社バイオーム

 

生薬に使われるということは、適量を食べる限りにおいては体に悪影響はないと考えていいかもしれませんが、食材として実食したという情報がほぼ見当たらず、食べる勇気が出ない。

過去にエディブルフラワーではない花を何度が食べていますが、たいてい苦くて、強いて食べるようなものではないんですよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず齧って口に含んでみる(飲み込みはしない)。まずは生で。

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柑橘っぽい清涼感があるんだけど、数口噛むと苦味と辛さが広がる。例えるなら、夏蜜柑の皮の表面の橙色の部分を噛んだようなヒリヒリした辛さ。生薬っぽいといえばそうかもしれないが、食べ物と認識できるレベルではない。

 

 

1分くらい茹でて水に晒してみるか。
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3時間くらい経ったところで食べてみたが、苦味も辛さも少し抜けたくらいで、依然として食べられるレベルになっていない。

 

 

数回水を換えて一晩おいた。

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だいぶ食べやすくなったとはいえ、成分がまだ残っている感じがします。もっと水にさらせばおそらく気にならないくらいまで抜けると思いますが、結局食べて大丈夫なのかは分からずじまいなので諦めました。


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一晩さらしたあとの水。口に含んでみると、花弁を齧ったときと同じ苦味がありつつも、ジャスミン茶のような芳香があり、こういう飲み物だと言って出されればそのまま飲みそうな気もする。

 

 

 

 

 

 

たぶん食べても問題ないんだろうなと思いながらもモヤモヤしている状態なので、今後も可食性についての情報を探りたいとは思いますが、仮に可食だったとしても積極的に再度食べてみたいかと言われると微妙です。お茶だったら飲んでもいいかもしれない。

 

 

 

(採取日: 2023. 3. 25)

 

道端で採れる山菜としてギシギシの新芽を評価したい

 

ギシギシという植物はどこにでも生えているザ・雑草ですが、その新芽は山菜のような特有のほろ苦さと風味があって美味しかったりします。「ザ・雑草」って言葉面白くないですか。ともあれオカジュンサイとも呼ばれるくらいには一部で食材として認知されており、すでにこのブログでも過去に食べています。

 

過去記事

 

 

極めてレア度の低い野草なので、普段はまとまった量が採れたり大きな株が見つかったりということがなければ強いて採取しないのですが、それはギシギシの新芽が取るに足りない野草ということでは決してありません。配布キャラは弱いと思われがちですが、使い方をしっかり考えて相応の投資をすればちゃんとダメージを出すことができるみたいな、つまりそういう話です。一番可愛いしね。

 

参考画像:原神のアンバーちゃん

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そういうわけで、条件さえ揃いさえすれば久々にギシギシの新芽を食べたいなと思っていたところに、立派なギシギシの群生地を見つけました。

 

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群生している様子を見せたくてもっと引きのアングルの写真も撮ったんですが、長い枯れ草が覆い被さっているせいでただの茶色い絵面になってしまったので割愛します。

 

これがギシギシ。ギシギシにも複数の種類があるようですが、不勉強で全く同定ができません。
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2月ごろから、白い皮を被った新芽が出てきます。これを採って食べます。
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立派な新芽。オカジュンサイという呼び名のとおり、新芽にはネバリがあるんですが、けっこう葉っぱが伸びてきてしまっているのでこういうやつはネバリが薄いかもしれません。

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ネバリのせいで素手では採りづらいので、軍手とカッターを使うのがいいです。この日は軍手もカッターもなかったので、頑張って爪を立てて新芽を切るようにして採りました。痛かったです。

 

あとモリチャバネゴキブリがヨチヨチ歩いていたので写真貼っときますね。
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成果。
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下処理はまず薄皮を剥くところから。こういう地味な作業を真面目にできる方は野草に向いています。おめでとうございます。
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長いまま茹でたほうが水っぽくならず風味もよく残るんじゃないかと思いつつ、後処理が楽なので切ってから茹でてしまった。このように易きに流れて雑な処理をする人は野草に向いていません。
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普通に茹でる。まず2分程度茹でて、お湯を捨てて再度水を張って一度茹でこぼす。茹でこぼしのときの茹で時間は軽く1分くらい。アク抜きのために長時間茹でるくらいなら長く水にさらす派です。
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一晩水にさらす。途中で1回だけ水を換えました。
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ワラビのアク抜きには重曹を使うけど、それ以外の野草・山菜に安易に重曹を使うと、風味が抜けすぎるし食感はグズグズになるし重曹の味が付くので、僕は絶対に重曹を使わないようにしています(過去にやって懲りた)。

 

 

 

 

 

 

ギシギシの風味にはやはり醤油だと思う。とろろご飯に乗せちゃうのとかいい。とろろとギシギシのネバリの相乗効果。

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残りは全部かつお節と醤油をかけて食べてしまいました。これ以外にも食べ方があるような気がするけど、たぶんこれが一番美味しい。

 

もちろん食感は全然違うけども風味の系統はワラビを彷彿とさせるところがある。一番近いのはイタドリの新芽で、ギシギシもイタドリもいずれもタデ科の植物、シュウ酸を多く含むという特徴も共通するので風味も近いのでしょうか。ちなみにシュウ酸は漢字では蓚酸と書き、「蓚」がタデ科のスイバを表す漢字なのだそうです。

 

山菜に近しい味の野草がその辺の道端とか空き地に生えているなんてロマンがある話です。みんな山に美味しいものがあると思って山に行きますけど、全然足元にあるんですよ。中島みゆきの『地上の星』を聴き直してほしいものだ。

 

 

 

 

(採取日: 2023. 2. 24)