カメムシの分泌液ってやっぱり刺激物なんだなって
カメムシって臭いじゃないですか。以前、カメムシを食べる際、臭い分泌液を完全に体外に出させてから食べるべきなのか、そんな下処理をせず分泌液ごと食べるべきなのかで悩んだ末、前者の方法で処理して食べておおむね成功だった話を書いた。もう3年前の記事なんですね。ずっとこんなことをやっているのかと我ながら思います。
上の記事にも書いたように、カメムシを一般的な食材として食べている地域では、生きているうちにカメムシを刺激して分泌液を体外に出させるという下処理をおこなっているらしいことを本で読んで、それに倣ったものなのだった。一方で、虫食愛好家はそんな下処理をせずに茹でて食べており、それはどうなんだろうかと気になっていたものの、実践せずに今日に至る。
そんな折、もらいもののネギ坊主(ネギのつぼみ)の袋のなかにアオクサカメムシが紛れており、逃がすのもシャクだし、ただ殺すのも忍びないということで、じゃあらこいつらをそのまま茹でてみようということになった。


これ茹でた後の写真なんですけど、調理しました感が一切ないので、まじでこれ食うんかという気持ち。つべこべ言わずに味見しましょう。
なんか口の中がヒリヒリする…
臭い以前に、辛い。カプサイシン(唐辛子)とかイソチオシアネート(からし)とかそういう辛味じゃなくて、非飲用のエタノールを口に含んだような感じ。いや飲んだことないけど、なんかそういう系統の、口が食べ物だと認識してくれない系の辛さなんですよ。他の食べ物で例えると、めっちゃ新鮮なレモンの皮(白い薄皮ではなく表面の黄色い皮)を噛んだときのピリピリとしたあの辛みを強くしたもの、って言えば伝わるだろうか。
においは、やはりパクチー系統なんだけども、上記の辛みによってなんか謎のエスニックなハーブを噛まされているような感覚になる。少しだけレモングラスみたいなニュアンスもあるような気もする。
まとめると、パクチーとレモンの皮とレモングラスとミントとコオロギを全部同時に噛んだような、そういう感じ。こう言ってしまうと、まぁカメムシってたしかにこんな感じかもという納得感があるけど、個人的には分泌液はやっぱり除去してから食べる方がいいかなと思います。
(採集日: 2026年4月某日)
野生のセリでセリ鍋を食えるなんて夢のようだよ
たまに昆虫採集会に参加してわが子とともに勉強させてもらってますが、私のような野食屋が虫屋さんのコミュニティに入るとき、同じ自然を見ている人間でもこうも見方が違うものかと思うもので。私がそもそも昆虫に詳しくないというのもあるんですが、世界観が根本的に違うんですよね。どうやら虫屋の皆さんにとっては「昆虫」であることが極めて重要らしく、以前の昆虫採集会でコガネグモを採ったら先生に「ごめん、脚が6本より多いやつはわからん」と一蹴されてしまった。かくいう私は昆虫とそれ以外の"虫"(ムカデやヤスデのような多足類、クモ、ダンゴムシとかそういうやつ)との間に特に序列を設けていなくて、というか、それら全部をひっくるめて食べられる虫と食べられない虫という分類で世界を見ているので、まあそりゃ話が合うわけはない。ということで、昆虫採集会には門外漢という立場を崩さずに皆さんの邪魔をしない範囲で参加させていただいております。
3月初旬にも昆虫採集会に行ったんですけど、自力では知り得ないような場所に連れてってもらえるので、私の野食趣味にも好都合なんですね。今回は大河川沿いの雑木林で採るということで、野草採取グッズもしっかり持参しました。


めちゃめちゃ雰囲気がいい。
春先のまだ肌寒さが残る季節にどんな昆虫がいるのだろうかと思っていたが、朽木を割ってクワガタやタマムシの幼虫、腐葉土を掘ってカブトムシの幼虫、樹木の皮の隙間に越冬中のスズメバチの女王バチなどがいるという。はえ〜
では早速探しましょうねということなのだが、さて何を探すか。というか、少し遅刻したから先生の話を全部聞けてなくて探し方がいまいちわからん。不肖しらたま、食べる目的以外で虫を採るとなると途端に行動力がなくなるんですね。まぁとりあえずそのへんの朽木でも割ってみるか。
こういう勘はわりと良い方でして、これだと思った朽木にわんさかコクワガタの幼虫がおりまして




先生からは「自分だったらこの木を割ることはなかった」と言われたような細い朽木だったのですが、なぜこれを選んだかというと、いい感じにしっとりしてると思ったんですよ。クワガタの幼虫にしてもカミキリムシの幼虫にしても、あまり乾燥した朽木は好まなくて、しっとりと湿ってフカフカした朽木を好むんですが、その朽木が落ちていたあたり一帯にセリが生えていまして、ということはこの辺りの土は常に湿潤でこの朽木も湿気を帯びているに違いないと推理したわけですね。ほら野食の知識って昆虫採集に役立つんですよ。

前置きが長くなりましたがここから本題です。そのセリがなかなか立派で、これは昆虫採集どころじゃないぞと。クワガタの採集は子どもに任せて私はセリを採ることに。こんなセリを見つけたら仕方ないやろ。



ところで、あなたはセリの美味しさを知っているだろうか。
かくいう私も、セリのことはずっと「いい香りの和ハーブ」程度の認識だったのだが、仙台に住んだときにセリを食べて、なんだこの美味い食べ物はとたまげたのだった。鍋でもお浸しでもサラダでも、どう食べても美味い。ちなみにサラダにするときは八朔など柑橘類と合わせてオリーブオイルと塩胡椒で食べるのが好きです。仙台を離れてから、ずっとセリを食べたいなと寂しい思いをしていて、その辺の水辺に生えるセリを摘んで食べても生半可なセリなんぞ過食部は葉っぱだけ。栽培されたセリは根っこの香りの強さと茎のシャキシャキ感がとにかく美味しくてですね。寂しい。仙台を離れて7年、あのセリを食べることはこの先もうないのかもしれないと思いながら尾張の地(終わりの地)で日常を過ごす俺。おいしいパスタ作ったお前。まさかここでこんなにいいセリに巡り会えるとは。
他の皆さんが昆虫採集に勤しむなかひたすらセリを採る。横を通っていく参加者が「何かいい虫いました?」と声を掛けてくれるが、いやどう見ても草とってるやろという思いを押さえて「コクワの幼虫っすね〜」とか答えておく。
成果

実際はこれの10倍くらい採ってきた。
いい根っこ
野生のセリとなるとどうしても紫色をした外側の茎は固く苦味が強いので、徹底して除去しておく。
うんうん
鶏もも肉は軽く焼き目をつけておきましょうね。
わぁ…

ほら、これがセリの根っこだよ…
焼いてから入れたからお肉は身が締まり、それでいてボソボソ感がないよ…
どんどんセリ食べます。続いてかき揚げ。
小エビを入れまして、


揚げてもちゃんと香りが残るんだよね。やはり根っこの香りが素晴らしい。
いっぱいあるからこんな食べ方もしましょうね。オリーブオイルと塩だけでソテー。


これだけのサイズで苦味もなく繊維張ってもいない完璧なセリが野生下で育つとは、いかに良い生育環境なのかがわかる。大河川沿いの雑木林というロケーションですが、腐葉土が堆積していてなおかつ定期的な川の氾濫も加わり栄養豊富な土となり、常に一定の湿潤さが保たれている。
もっと暖かくなるにつれてセリもさらに成長するでしょうが、そうなると繊維も固くなってくるだろうし、いつまでが食べ頃なのか、定点観測してみる必要もありそうです。
(採取日: 2026.3.7)
河口のカニ、美味いけど硬い
ちょっと釣りに行くチャンスができたので河口に夜釣りに行ったのですが、釣り場がテナガエビ掬いでちょっと有名なポイントだったので、釣りをしているのは私ともう一組くらいという有様で、周りはみんながみんなお手々繋いで網持ってテナガエビ。足場のいいエリアに集まってさながらお団子サッカー状態。こんなんだからこの国にはまともなストライカー(野食家)が生まれない。教えてやる、野食ってのはな…相手より多く食材(美味しい食材とは言ってない)を獲るスポーツだ。世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカー(野食家)にはなれない。ピッチ(釣り場)の上ではお前が主役だ。 己のゴールを何よりの喜びとし、その瞬間のためだけに生きろ
それが”ストライカー(野食家)”だろ?
周りのエビ採りピヨピヨどもを横目に竿を振り続けるワイ。テナガエビがいるんなら、それを捕食しにくるお前もいるはずだよな、""クロダイ""ーーー
30分が経過、試合は平行線。突如としてエビ採りピヨピヨの叫び声が上がる。「ここエビめっちゃいる!」引き潮になって今まで近づけなかったアシ原を攻められるようになったようだ。寄ってたかるエビ採りピヨピヨども。さながらお団子サッカー状態。 こんなんだからこの国にはまともなストライカー(野食家)が生まれない。教えてやる、野食ってのはな…相手よりお
そのときだ。俺の中の怪物が言ってるーーー
「そういえば今日、エビ網持ってきてたよね?」
おい、お前何言ってんだよ!ここはブルーロックだぞ!!俺はクロダイを釣るんだよ!俺はテナガエビを採るためにブルーロックに来たんじゃない!「へー、ここ足場もいいし、子どもを連れてきても安全だねー」じゃないんだよ!「ふつうの網よりも水の抵抗を受けにくいから掬いやすいんだよねー」じゃないんだよ!クロダイ!シーバス!最悪ボラでもいい!俺は魚を釣りにきたんだ!なあ田中、お前もそうだろ!?(※釣りを始める前に僕に話しかけてきた投げ釣り氏。見たところさっきから全く釣れてない)
俺たちは…ストライカー(野食家)だろ!!!???
やめろ……俺は、、、俺は、テナガエビなんて採りたいわけじゃない…テナガエビの素揚げを食べたいわけじゃない…尿酸値高いからビール控えてるし…いや、そりゃハイボールにも合うんだけどさ…俺は、クロダイが、食べたいんだ………いやここ河口だから刺身はダメなんだって!!!塩焼きとかだよ…クロダイの塩焼きよりテナガエビの素揚げの方がハイボールに合うだろとかそういうこと言うなよお前
なんだ、この…心臓がギュッとなるみたいな絶望は…? これが…敗北ってやつか
そうか、”エビを掬う”っていう行為は…敗北の中にいる俺を、確かに救ってくれる(←「掬う」と「救う」を掛けてる)
でもそれは、(ムクムク) 夢破れた人間が、(ムクムク ムクムク) これまでの人生を否定しないための現実逃避 (ムクムク ムクムク ムクムク!) そう、敗北者の言い訳だ(ムクムク ムクムク!!!) 俺はこんな未来を…生きたいわけじゃ…ない!!!!!!
見える…感じるぜ!
敗北を知ったからこそ、見るべきは…
テナガエビに寄ってたかって掬うことしかできない下手くそどもの光が作る闇に隠れて 実はその辺にたくさんいる…
カニさん!!!
ぶちかましてくれ
見たことがなけりゃないほどドラマチックだ
やばすぎんだろ カオス極まる息もできないくらい
忘れないでくれ 運命論は無駄だ

あがけるだけあがいたらいい
邪魔だすっこんでろ 着地はもうどうでもいい 
君はどうだ?
何が捕れたって?そりゃあクロベンケイガニとアカテガニよ

紫の方がクロベンケイガニ
赤い方がアカテガニ
オスのふんどしは三角形で
メスのふんどしは丸い。こうやってふんどしの中に抱卵します。子持ちはなるべくリリースしましたが、味見に少しだけ頂きます。
こうやってパカっと開くようになっていて、内臓がくっついています。ふんどしをちぎれば一緒に内臓も除去できる。

さてここから揚げていくんですが、さすがに締めてから揚げたいので炭酸締めします。

逃げようとするので蓋をします。そうだ、ここはブルーロックだ
楽園は近いぞ



身はこんな感じです。味は個体差が大きくて、甘みのある美味しいやつもいれば、なんか苦いやつもいる。味が安定しない、サッカー(野食)ってのはそういうもんだ。
はさみはさすがに殻が硬いが、中身が美味しいのですよ。

正直な感想をいうと、味はそこそこいいんですが、一定のサイズを超えると殻が硬くて口に残ります。大きな個体よりもこのくらいの小さい個体の方が圧倒的に美味いですよ。殻が口に残らないだけでなくて、甘みがある。単純に苦い個体があまりいない。しかし子どもばかり捕らないよう自制したいところ。 痛し痒しだねえ

殻の硬いやつらは出汁要員にして汁物にするのもいいかもですね。
(採取日: 2025.7.26)
夏の遊びとしてのサワガニ捕りとサワガニの素揚げ
以前別の記事で言及したが、イナゴを捕まえて食べるという行為は冬場のタンパク源にそれほど困らないような海岸沿いの地域でも行われてきたという調査結果があり、稲刈り後の田んぼでのイナゴ捕りという遊びの連続としての食文化という側面があったことが示唆されている。こういった遊びと食の中間的なアクティビティは季節を感じさせるものでもあり、なくても困らないが、あれば季節の移り変わりのささやかな喜びを与えてくれるような、そんな営みのように思われるのである。
↓過去記事
他の例で言えば、つくし採りもこのカテゴリに入るアクティビティだと思う。食材としてのつくしは正直美味いのかどうかいまいちよくわからないのだけど、毎年3月ごろになると、そろそろつくしが出始めてるかなとふと思い出して、川の土手に行ってみて、ああもう出てるねーって言って、つくしを摘んで、手間暇かけて袴を取って、ようやく食べて、ああ美味しいねと言って、春が来る。そういう一連の営みを我々は食べている。
では夏のそういう遊びはというと、僕の中ではサワガニ捕りなのである。
夏の山はね、面白いのですよ。とにかくいろんな生き物がいますからね。子どもを連れてサワガニ捕り兼虫捕りに行きましたけども、それはそれはいろんな生き物に会えて楽しかったわけです。
カラスアゲハ(合ってる?)

ムカシトンボ(合ってる?)
ハグルマトモエ(合ってる?)
マダラカマドウマ
ザトウムシ
どうでもいいけど、私はザトウムシが大好きでね。こんな冗談みたいな生き物がいるということが嬉しくて堪らなくないですか。捕まえたわが子が「ザトウムシもってかえる!」って言うので持って帰って、うちで飼ってるカエルが美味しく頂きました。
ひととおり虫も捕ったので、次はサワガニです。しかしですね、サワガニ捕りが楽しすぎてまったく写真撮ってません。なので捕ってきたサワガニの素揚げの写真をいきなり出します。すまんな。ででん

アメリカザリガニやモクズガニの記事でも言いましたが、淡水性の甲殻類は寄生虫の温床です。ウェステルマン肺吸虫にやられないよう、しっかりと素揚げします。
格別に美味いというタイプの美味しさではないが、線香花火をするときのような、親しみと手軽さの中にも強烈な夏を感じさせるような、そういう魅力があります。
(採取日: 2025年8月某日)
クレソンを食べるならタネツケバナも食べてほしい
アブラナ科の植物の食味はなんとも多様だなと思う一方で、その裏では辛味成分であるイソチオシアネートによる類似性があり、とても面白いなぁと思う。大根とブロッコリーとワサビがどれも同じアブラナ科に属しているという事実が既に面白いし、愛してるの響きだけで強くなれる気がする。
標題にあるクレソンもタネツケバナもアブラナ科で、イソチオシアネートの辛味が特徴的な野草。クレソンは野菜としてもごく一般的に認知されてますが、それ以前にこいつはその辺に生えている野草ですよ。しかも外来種なので、ステーキのうえに添えてあるクレソンをちまちま食べてないでみんなさっさと川に行ってクレソンを摘めという話は過去に散々書いた。
クレソンが水辺に群生するのに対して、一方のタネツケバナは田畑に生えるロゼットの野草。ナズナの生え方に近い。生態もこのように異なり、クレソンはオランダガラシ属、タネツケバナはタネツケバナ属とそれぞれ異なる属ではあるが、生で食べるとどちらもピリリとして、いかにもイソチオシアネート然とした辛みがくるところはよく似ている。
それなのに、クレソンは堂々と野菜扱いされて、タネツケバナはただの野草どころか雑草としか扱われていない。山奥の伏流水で育てたクレソン?のサラダ?ピリッと辛いクレソンにピリッとしたマスタードソースを合わせて?みたいなメニューが田舎のちょっとおしゃれな居酒屋にあったりするが、美味いんだよなこれ。そりゃ上流の水で育ったクレソンは美味いけどさ、汚ねぇ川のクレソンは臭いわけですよ。それに、クレソンを採取すると泥やゴミの処理がかなり面倒なので、タネツケバナにも一定のアドバンテージが期待できる勝負なんですよこれは。
タネツケバナは住宅地の植え込みなど、本当にどこにでもある。私は、雑草と思われているようなどこにでもある野草が実は美味しかったみたいな少女漫画展開が大好物なタイプの野草喰いなので、タネツケバナはその点でも完全に私好みなんですよ。
厳密に言うと、在来種であるタネツケバナは田畑、とくに水田に分布するが、住宅地や公園などにも生えるのは外来種のミチタネツケバナであることか多いのですが、食べるうえでは大きな差はないと思うので今回は種の違いには着目しません。今回は住宅地で採取しているのでミチタネツケバナの方です。
モコッとしていて可愛いですね。


白い花もよく見ると可愛いのですよ。
調子に乗ってたくさん採っちゃった。




根っこはけっこう固いので除去。

炒め物でもまず美味しいんですが、せっかくのモコッとしたかたちを活かしてそのまま天ぷらにしてみたい。
衣をただ付けるだけだと、葉の密集しているところに衣が溜まってカラッとした食感にならなさそうなので、揚げ油に入れるときに油の中で全体をゆすって余分な衣を落とす。


味は想像していたとおりのアブラナ科の植物の天ぷらの味で、文句なしで美味い。イソチオシアネートは熱に弱いので加熱することにより辛味が飛ぶんですが、特有の風味は残るんですよね。狙いどおり、見た目もいいですね。
普通に美味しかったので、次の日の弁当はタネツケバナの天丼にしました。会社に持っていく弁当に野草を入れるってスリルあるな。自分の部下が会社で野草食べてたら嫌すぎる。
そういえば、昔このブログでもタネツケバナを食べたんですけど、そのときのタネツケバナは全然美味しくなかったんですよね。
今思い返すとこのときも野原に生えるタネツケバナだったので、おそらくミチタネツケバナですね。ひょろひょろの個体だったのでたいした味がなかったのかもしれない。今回でタネツケバナは美味しいことが再確認できてよかったです。
(採取日: 2025. 3. 20)
シーズン終わり頃の瀕死のモクズガニは美味しく頂けるか
潮干狩りというと、潮干狩り用に漁協がアサリを撒いていてそこに客が金を払って入るというのが一般的ですが、そういう潮干狩りを楽しんでできるような人間なら初めから野食などという意味わからん行為はしていないわけで、野食家は採らねど高楊枝、ということで、採れる数が少なくなろうとも天然の貝が採れる場所にしか入らないと決めております。
なんとも運良く、アサリなどの貝類に漁業権のかかっていない干潟が近場にあり、そこで毎年アサリやらハマグリやらを採らせていただいている。ただ、どうしても数は少ないので、キープサイズの貝ということになると片手に収まる程度の量しか採れません。だからといって稚貝を採るのは御法度です。守ろう生物資源。
干潟って色んな生き物がいてふつうに楽しいので、無料で干潟遊びに来たのだと思えばあまり採れなくても満足度は高いのですが、そうはいってもこの吝嗇のしらたま、せっかく来たからには土産を持って帰りたいと思ってしまうのもまた無理からぬ話。
そこで目をつけたのがカニ🦀🦀🦀
干潟の一角にちょっとした岩場があり、そこにイソガニや、運が良ければタイワンガザミがおり、なんならこいつらを獲った方が楽しいんじゃないかと閃いた。
急遽前日に罠を作っていく。ただ、漁業権的に問題なかったとしても、家族連れが多く訪れる干潟にカニかごを仕掛けるのはさすがにマナーが終わってると思い、洗濯用ネットにシーフードミックスを入れて岩場に置いておき、集まってきたカニを捕まえるというスタイルでいく。


わが子がフェットチーネグミ(グレープ味)も入れてみてはどうかと提案してくれたので、試しに入れてみましょう。
仕掛ける。

…なんかですね、岩場を見てもイソガニの姿がまったくないんですよね。少し季節が早かったか?去年来たときは小さいながらもうじゃうじゃいたんですが。
カニいないねー (´・ω・`) と話しながら散策していると、少数ながらモクズガニが水の中をよちよちと歩いている。そりゃモクズガニが歩いてりゃ掬うよ。


モクズガニは淡水性のカニだが、秋になると河口部で交尾・産卵するために上流から降ってくる。4月の終わりに河口部にいる大型個体、しかもどの個体も弱っているように見えたので、産卵の最後発組ということなんだろうか。写真を撮り忘れたが、岩場にもモクズガニの死骸があちこちに落ちていた。モクズガニは繁殖行動のあとはまもなく死んでしまうらしい。
ということはですね、今回捕まえたカニには、モクズガニやチュウゴクモクズガニ(上海蟹)が美味しいと言われている所以である卵(内子)が入ってないわけですよ。カニ味噌と身に期待を込めて食べることになりますが、体力を使い果たしたカニなのでどれほど美味しいのか。


けっこう獲れたんだわ。
泥抜き(糞出し)をするため、また、鮮度を保つために、モクズガニは生きたまま持ち帰るのが定石なのですが、採取の段階で既に弱っていただけに自宅に着いた時点ですでに死んでしまっていた。さてどうするか。
蒸して食べたかったけど、泥抜きもできていないし、次善の策として汁物で出汁を味わうという方向性で考えてみる。となれば、カニをいかに綺麗に洗えるかに出来が掛かっている。
モクズガニは漢字で藻屑蟹と書くとおり、ハサミ(鋏脚)に藻屑のように毛がモサモサと生えているんですが、ここに泥やらゴミが溜まっています。

水洗いをくりかえすが、どうにも泥臭さがとれないので、毛自体の除去を試みる。キッチンバサミで切れるだけ毛を切っていく。

続いてふんどし。下の写真でいうと、カニの腹側にある三角形の部分がふんどし。ふんどしが三角形ならオス、丸くて大きければメス。ここは開閉ができるようになっていて、汚れが溜まっているところなので使い古しの歯ブラシなどで汚れを落とします。

あとは脚の付け根とか顔とか、汚れが溜まっていそうなところを同様に歯ブラシで洗っていく。

半分に割るとこんな感じ。
茹でていきますが、灰汁はたっぷり出るのできっちりと取り除いていきますよ。上述のとおり、甲殻類は汚れをけっこう溜め込んでいるので、灰汁を取らないと臭みとかヤバみが残ります。

出なくなるまで灰汁を取り続ける。

だしパックも入れて煮立たせて、味噌を加えて完成。

けっこうな量のカニを入れたんですが、思ったほど出汁が出ていない。やっぱり瀕死だったので味が薄いのだろうか。とはいえ、カニの味噌汁の美味しさは他に代え難い良さがありますね。
身。出涸らしなのでそんなに味がするもんでもない。

美味しく頂けましたが、少し味香りの豊かさに欠ける印象でした。とはいえ、自然下でもあと数日以内に死んでいたであろう個体を美味しく頂けたのなら、それはそれでいい野食と言えるかもしれない。次回は旬のモクズガニで作って味を比べたいですね。
(採取日: 2025. 4. 27)
アラゲキクラゲ
キノコは怖いので有識者の指南を受けるまでは手を出さないと決めているのですが、キクラゲくらい採るのは許してほしいものだ。


うちの畑の隣の耕作放棄地の枯れ木にキクラゲがびっしり。耕作放棄地にはセイタカアワダチソウとアレチノギクとコセンダングサが蔓延る地獄となっていて、ちゃんと耕作している近隣の畑にクソ迷惑をかけてるので、耕作放棄地の固定資産税もっと上げてもいいんじゃないの。


裏が白くて毛が生えているのでこれはアラゲキクラゲ。キクラゲにも何種類かあって、今回のアラゲキクラゲがコリコリザクザクとした食感なのに対して、キクラゲ(種名としてのキクラゲ)はゼラチン質で舌触りがよくプルンプルンしている。いずれも広葉樹の枯れ木や切り株に発生する。
キクラゲに取り込まれそうになってる枝。
採取
直前に雨が降ったりしていない限り採取の時点で乾燥しているので、万が一たくさん採取できたときでも保存ができて大変便利ですね。
調理するときは、水で戻して、石付きを取り除いて、よく洗って汚れを落として、ラジオ体操に行って、朝ご飯を食べて、涼しい午前中にスイカを食べながら宿題して、午後から友達とプールにいって思いっきり遊ぶんだ…


キクラゲは玉子と一緒にオイスターソースベースのタレで胡麻油たっぷりで炒めるのが美味いんだよ。ちなみに一緒に炒めた菜の花もその辺で採取したものです。スーパーで買った菜の花をここで入れる奴は何やらせてもダメ。
ジャクジャク感がいいですね。
ちょこちょこ白っぽいやつもあって、これはあまり食感が良くないですね。ちょっとカサカサモサモサする。
見間違いのリスクも低いし、見つけたらとりあえず採ってポケットに突っ込んとけばいいなんていい食材ですね。
(採取日: 2025. 3. 29)