アブラナ科の植物の食味はなんとも多様だなと思う一方で、その裏では辛味成分であるイソチオシアネートによる類似性があり、とても面白いなぁと思う。大根とブロッコリーとワサビがどれも同じアブラナ科に属しているという事実が既に面白いし、愛してるの響きだけで強くなれる気がする。
標題にあるクレソンもタネツケバナもアブラナ科で、イソチオシアネートの辛味が特徴的な野草。クレソンは野菜としてもごく一般的に認知されてますが、それ以前にこいつはその辺に生えている野草ですよ。しかも外来種なので、ステーキのうえに添えてあるクレソンをちまちま食べてないでみんなさっさと川に行ってクレソンを摘めという話は過去に散々書いた。
クレソンが水辺に群生するのに対して、一方のタネツケバナは田畑に生えるロゼットの野草。ナズナの生え方に近い。生態もこのように異なり、クレソンはオランダガラシ属、タネツケバナはタネツケバナ属とそれぞれ異なる属ではあるが、生で食べるとどちらもピリリとして、いかにもイソチオシアネート然とした辛みがくるところはよく似ている。
それなのに、クレソンは堂々と野菜扱いされて、タネツケバナはただの野草どころか雑草としか扱われていない。山奥の伏流水で育てたクレソン?のサラダ?ピリッと辛いクレソンにピリッとしたマスタードソースを合わせて?みたいなメニューが田舎のちょっとおしゃれな居酒屋にあったりするが、美味いんだよなこれ。そりゃ上流の水で育ったクレソンは美味いけどさ、汚ねぇ川のクレソンは臭いわけですよ。それに、クレソンを採取すると泥やゴミの処理がかなり面倒なので、タネツケバナにも一定のアドバンテージが期待できる勝負なんですよこれは。
タネツケバナは住宅地の植え込みなど、本当にどこにでもある。私は、雑草と思われているようなどこにでもある野草が実は美味しかったみたいな少女漫画展開が大好物なタイプの野草喰いなので、タネツケバナはその点でも完全に私好みなんですよ。
厳密に言うと、在来種であるタネツケバナは田畑、とくに水田に分布するが、住宅地や公園などにも生えるのは外来種のミチタネツケバナであることか多いのですが、食べるうえでは大きな差はないと思うので今回は種の違いには着目しません。今回は住宅地で採取しているのでミチタネツケバナの方です。
モコッとしていて可愛いですね。


白い花もよく見ると可愛いのですよ。
調子に乗ってたくさん採っちゃった。




根っこはけっこう固いので除去。

炒め物でもまず美味しいんですが、せっかくのモコッとしたかたちを活かしてそのまま天ぷらにしてみたい。
衣をただ付けるだけだと、葉の密集しているところに衣が溜まってカラッとした食感にならなさそうなので、揚げ油に入れるときに油の中で全体をゆすって余分な衣を落とす。


味は想像していたとおりのアブラナ科の植物の天ぷらの味で、文句なしで美味い。イソチオシアネートは熱に弱いので加熱することにより辛味が飛ぶんですが、特有の風味は残るんですよね。狙いどおり、見た目もいいですね。
普通に美味しかったので、次の日の弁当はタネツケバナの天丼にしました。会社に持っていく弁当に野草を入れるってスリルあるな。自分の部下が会社で野草食べてたら嫌すぎる。
そういえば、昔このブログでもタネツケバナを食べたんですけど、そのときのタネツケバナは全然美味しくなかったんですよね。
今思い返すとこのときも野原に生えるタネツケバナだったので、おそらくミチタネツケバナですね。ひょろひょろの個体だったのでたいした味がなかったのかもしれない。今回でタネツケバナは美味しいことが再確認できてよかったです。
(採取日: 2025. 3. 20)