しらたまが道草を採って食うブログ

私ついていくよ どんな辛い野食の闇の中でさえ

ムカゴについての覚書

 

秋なのでサクッとムカゴを採ってきました。

 

f:id:shiratamarr:20211104130105j:image

 

近所の里山ヤマノイモ(いわゆるヤマイモ)があちこちに生えてるので、散歩がてら採りました。

ムカゴは蔓についているものをポロッととればいいだけだし、毒のある他の植物との見間違いがまずないので、どうやらうちの近所でも人気の野草であるようです。

 

目の高さのところにはムカゴは全くなく、

f:id:shiratamarr:20211104130400j:image

上を見上げるとめっちゃムカゴ付いとる。絶対同業者に先を越されてる。
f:id:shiratamarr:20211104130409j:image
f:id:shiratamarr:20211104130356j:image

 

今回真面目にムカゴを探してみたんですが、次の手順でムカゴを探すのがたぶん効率的だと思います。

  1. 木、杭、フェンスなどに巻きついている蔓を探す
  2. その蔓についている葉が大きなハート型か確認する
  3. ハート型の場合、葉が対生しているか確認する(茎や蔓の同じ場所から葉が2枚出ていること。逆に、1枚ずつが交互に付いていることを互生という) → オニドコロ(ヤマノイモ科の毒草)とこれで区別

 

ちなみにオニドコロにはムカゴはできないので、ムカゴ目当てならまず誤食のリスクはありません。しかしオニドコロも地下に芋を形成し、昔からヤマノイモと間違えるケースが発生している。オニドコロは相当苦味や渋味が強いらしいので、食べた瞬間に分かりそうなものですが。

【ご参考】“所沢”の由来になった毒芋「トコロ(オニドコロ)」を食べてみた | 野食ハンマープライス

 

 

 

 

採ったムカゴは塩炒りにしたり

f:id:shiratamarr:20211107190741j:image

 

カリフラワーと一緒に炊き込みご飯にしたり

f:id:shiratamarr:20211107190832j:image

 

美味しくいただきました。今年もムカゴを食べることができて良かったですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねえ

 

 

 

あたしたち 秋といえばムカゴだよねって 当たり前のように言ってるけどさ

ふと思ったの

そういえばムカゴのことなんにも知らないなって

 

 

ムカゴと球根は違うのかな とか

 

なんで地下に芋をつくるのに 茎にもムカゴを付けるのかな とか

 

他にもムカゴを付ける植物ってあるのかな とか……

 

 

せめて 野食を趣味でやってるようなあたしみたい人間がさ

知ってあげなきゃって思うんだ

もっと ムカゴのこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が教えてやんよ!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ムカゴって何?】

 

要はクローン。

花が受粉して種ができてそこから芽が出るというこのよくある流れはいわゆる有性生殖だが、ムカゴはそのムカゴが実った株と全く同じ遺伝子が引き継がれる無性生殖。

ムカゴ、芋、球根*などから無性生殖による繁殖を行う繁殖様式を栄養繁殖といい、このときのムカゴ、芋、球根などを栄養繁殖器官という。多肉植物には葉から新しい芽が出てくるものがあるが、このときの葉も栄養繁殖器官である。

* 芋や球根という言葉の厳密性については後述。

 

 

ヤマノイモって無性生殖しかしないの?】

 

ヤマノイモはムカゴによる無性生殖と並んで、種による有性生殖もふつうにやっている。

種は3翼のプロペラみたいな形をしていて、風に乗って遠くで繁殖するのに向く。一方、ムカゴはその株からポロッと落ちてその場で繁殖するのに向く。

種はそんなに栄養を蓄えているわけではないが、繁殖地を拡散することができる。ムカゴは、親株と同じ場所でしか繁殖できないが、栄養を蓄えているので種よりも繁殖に成功しやすい。

種の画像はこちらをご覧下さい。→https://matsue-hana.com/hana/yamanoimo.html

 

 

【親株がたとえば雄株だったら、そのムカゴも雄株?】

 

そう。ヤマノイモは雌雄異株なので、そのムカゴの雌雄は親株に完全に依存する。

参照: https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=4902&key=&target=

 

 

【ムカゴをつくる植物はヤマノイモ以外にもあるの?】

 

ある。オニユリ、ノビル、ニンニク、ムカゴイラクサなど。

ちなみに、一口にムカゴといっても、葉から形成される「鱗芽」と、茎から形成される「肉芽」がある。ヤマノイモは後者。これらをまとめてムカゴあるいは珠芽という。

 

 

【じゃあオニユリやノビルも、種による有性生殖とムカゴによる無性生殖を並行してやってるの?】

 

三倍体であるオニユリやノビルは無性生殖しかできない。多くの生物は卵子精子から染色体を1セットずつ受け取って2セットの染色体を持つニ倍体だが、三倍体の生物は染色体を3セット持っているので、減数分裂がうまくできないために配偶子(卵子精子)ができず、有性生殖ができない*。ちなみに、この三倍体の性質を利用して果物の種なし品種などの開発が行われる。

参照: 三倍体植物について | みんなのひろば | 日本植物生理学会

 

* 一般に三倍体の生物は有性生殖ができないとされてきたが、近年、三倍体の生物であるプラナリア有性生殖を行うことが判明している。https://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2013/kr7a4300000czeci-att/140121_1.pdf

 

 

【芋とか球根との違いは?】

 

ムカゴも芋も球根も、そこから芽を生やすために栄養を蓄えた器官という点では同じもの。ムカゴが、茎や葉が地上部において肥大化したものとすれば、芋や球根は茎や根といった器官が地下において肥大化したもの。

ちなみに、さっきから芋とか球根とか言っているが、植物学的には厳密な用語ではなく、①茎が地下において肥大化した地下茎、②根が肥大化した塊根、③茎と根の中間的な性質を有する特殊な器官である担根体が、いわゆる芋や球根に該当する。芋と一口に言っても、サトイモは地下茎で、サツマイモは塊根で、ヤマノイモは担根体にあたる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へぇ ムカゴのこと ちょっと詳しくなっちゃった

 

 

…ところでさ 君は二倍体生物なんだよね?

あたしも たぶん 二倍体なんだけど…

 

 

確かめてくれない かな…?//////

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマノイモは滋養強壮にいいそうです。皆さんもご健康に!

 

 

(採取日: 2021. 10. 24)