しらたまが道草を採って食うブログ

私ついていくよ どんな辛い野食の闇の中でさえ

道端のニラもちゃんとニラ

 

野草と野菜を区別する基準は何か。植物分類的な基準、可食形質による基準、栽培個体かどうかという基準などいろいろ考えられるが、極めて単純なものとして「店で売られているものは野菜、そうでなければ野草」という、経済活動の観点が一つの基準になりうる。頭悪めな基準だけど、食べ物の生産・採集に携わらない人口が多い現代にあっては、多くの人にとって食べ物とは経済活動の枠内にのみ存在するものなのかもしれない。

 

なぜこんな話をしたかというと、道端にニラが生えているのを見るたびにこの話が頭をよぎるからである。野菜として流通しているニラが普通に道端に生えているという事実は私にとってすごく面白いのだが、通りすがりの人はどうやら何とも思っていないらしい。それを見てをニラだとわかる人がそもそも少ないし、さらにニラかなと思ったとしても確証を得るに至る人はもっと少ないだろうし、そこまでわかったとしてもそのニラを採ろうという気が起こるわけではない。野草を採取するという行為は、このようないくつもの壁を突破した先に初めて可能になるものなのである。ただの物好きじゃねえか。

 

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秋になると白い花が咲きます。よく見ると可愛い花です。

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土の栄養状態のいい場所であれば、けっこう大きな株に育ちます。
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八百屋で50円くらいで叩き売られているニラくらいの大きさはある。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてまな板に乗せると、けっこう立派。

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ヒガンバナやノビル、スイセンなどのように鱗茎(球根)は大きくは発達しません。ニラのつもりでスイセンを食べちゃった系の事故がたまに起こるそうだけど、スイセンはもっと大きな鱗茎を持つので容易に見分けられる。そもそも、においを嗅げばニラ特有のにおい(アリシン)があるはずなので間違えようがないと思うんですが、令和に入ってからもニラと間違えてスイセンを販売した事例が千葉であったようです。安易な視覚情報だけで野草を採るのはよくない。

 

目立った鱗茎がない代わりに、このような根茎が伸びており、これにより複数の株がひと塊に繋がっている。この根茎もやはりアリシンのにおいがします。

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洗った。道端で採ってきたとは思えない。
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花の咲いていた株の全体像。花茎が突出して長い。この花茎は維管束がバッチバチに発達しているのか、すごく固い。花茎はとても食べられたものではないので素直に葉だけ食べます。
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まずは普通にニラ玉に。美味いけど、さすが野生のニラだけあって繊維がちょっと固いです。
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葉の繊維が固いこと以外は買ってきたニラと遜色ないので、細かく刻んでしまえば問題ありません。ということで刻んでパッタイに。

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完全な余談ですけど、タイに旅行に行ったときにパッタイの付け合わせで生のニラとバナナの花(?)がついてきたんだけど、これって現地のオーソドックスな食べ方なんですかね。あと、パッタイってタイの伝統料理みたいな顔してますが、実は20世紀に入ってから近代的な国民国家を形成するという大義名分のもとに創作・普及された料理らしいですね。

パッタイの歴史 - 人工的に作られたタイの国民料理 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

 

 

 

 

 

 

 

残りのニラはラーメンの具にしたりして食べたんですが、ニラの魅力は何といっても栽培です。ニラは上述のとおり根茎を持っているので、葉が枯れたり葉を収穫してもそこからまた葉が生えてきます。繰り返し収穫できるのでプランターでこじんまりと育てても長い期間楽しめます。

 

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根っこの部分だけ植えておいたら、2週間足らずでこの伸びよう。なんか急に寒くなってきたので今シーズンはこれを刈ったらもう終わりかもしれないけど、また来春になったら出てきてくれるでしょう。

 

 

(採取日: 2021.10.6)