黄色とグレーの縞模様にお尻の赤が映えて、ジョロウグモを見ると、ああ、秋だなあという心地がする。秋の空の青さにこれほど似つかわしい虫はいないと思う。
(Wikipediaより)
ジョロウグモは虫食界ではとても美味しい虫という確固たる評価を得ているようで、プロになると「ジョロウグモを見ると唾液が出てくる」らしい。どういうことやねん。
今年こそは食べてみようと思い9月頃からずっと機会を伺っていたのだが、なかなか一人でゆっくり採取して料理するタイミングに恵まれず、11月末になってしまった。ジョロウグモは秋に交尾して木の幹などに卵嚢をつくり、冬が来ると死んでしまう。先週から急に気温が下がって冬の気候になってしまったが、ジョロウグモたちはまだ生きているのか。
里山を歩き回るが、この前までどこにでもいたのに、姿が全く見られなくなっている。てっきり、クモがいなくなってもクモの巣は残っているものかと思っていたが、この前まであちこちに張り巡らされていたはずの巣は、どこを見ても綺麗さっぱりなくなっている。秋の痕跡が消え、いよいよ本格的に冬が来たのだなという寂寥感に浸る。
歩き回ってどうにか見つけた一匹目。
手を添えているのは単にカメラのピントを合わせているだけです。
噛まれると痛そうなので箸で捕獲していきます。動き自体は速くないので、普通に捕まえられます。
3匹とれたので帰宅。
足も縞々なんですよ。可愛いですね。
グレーの部分がにび色というか鉛色というか、ニュアンスの含んだグレーで綺麗なんですよね。
立派な口。よく噛んで食べてる証拠ですね。
素揚げでサクサクと頂きますよ。
目いっぱい脚が広がりましたね…。脚広げるとやっぱりでかいですね。
脚はそりゃサクサクです。普通に香ばしくて美味い。一応味を伝えるためにバッタ類の脚と比べてみると、バッタがエビの殻だとしたらクモは魚の骨せんべい。バッタってよく「エビっぽい」と言われることがありまして、エビっぽいというよりも、バッタのよく発達した外骨格の香ばしさが揚げたエビやカニの殻の風味を想起させるということなのだと私は理解しているんですが、そうは言ってもクモとバッタを比べてどちらがエビっぽいかと聞かれれば、まあバッタの方ですよねとなる。クモにはそこまでの香りがなく、骨の柔らかい魚の骨を揚げたような食感と味わい。いずれにせよ普通に美味い。
お腹をプチっと噛むと、中の内臓のソフトな食感が感じられます。食べたことのある虫の中ではイモムシ以外はすべてサクサク系、中身が詰まっているとしても身がみっちりと詰まっている(セミの幼虫、コオロギ)ものばかりだったので、内臓を思わせるとろりとしたテクスチャーが虫から現れたことに一瞬戸惑ってしまった。しかし、やはり内臓とか魚卵っぽい旨みがある。中がレアの炙りたらこを皮ごと噛んだ感じのニュアンスに近いような、そうでないような。
あと、ジョロウグモは豆っぽさがあるとも言われるんですが、豆の中でも大豆でしょうか。さすがにセミの幼虫のように、本当に植物の汁を吸って生きてる虫のような強い豆感はないが、いかにもな動物性タンパク質の味とも違う優しみは、「豆っぽい」ととりあえず言い表しておくのがいいのかもしれない。空豆っぽい、と評する人も多いようだけど、空豆を想起するほどの強いパンチはないので、空豆はちょっと大袈裟かな?という印象。時期や食性によっても味が違ってくる可能性はあるので、あくまでも今回私が食べた個体は、ということかもしれません。
ジョロウグモは見た目のインパクトの割に「知ってる味」でした。味自体には驚きはないが、それだけに、一度食べてしまうともうただの食材ですね。
(採取日: 2023. 11. 30)