しらたまが道草を採って食うブログ

私ついていくよ どんな辛い野食の闇の中でさえ

菱の実を買って食べてみた - 天ぷら・酢豚風炒め物

昔から野池なんかで釣りをしていたので、菱という水生植物は見慣れていた。そして秋を超えると岸にトゲトゲした黒い殻の禍々しい実が落ちているが、それが菱の実であること、そして食べられるらしいことも何となく知っていた。

 

f:id:shiratamarr:20201121195938j:image

 

ほんと何なのこの形。忍者が使っていたというマキビシはこの菱の実だが、この形を見れば忍者でなくても利用したくなる。嫌いな上司の椅子に置きたいもん。

 

菱は、水中の土に根っこが生えていて、水中を長い茎がスーと伸びて、水面にあの菱形を連ねたような形の葉っぱを浮かべるという構造になっている。菱の実ってどこに付いてるの。全くもって謎である。

 

 

 

7月頃、市が管理している近所の池に菱が繁茂しているのを見つけ、シーズンになったら実を採ろうと考えていた。菱の実は鮮度が命らしく、9〜10月のごく短い時期にしか採れない。収穫を楽しみにしていたのだが、8月に再度見に行ってみたところ、あれだけ繁茂していた菱が消えているではないか。何が起こったのだ。池の周囲も草刈りされたようで、すってんてんになっている。どうやら菱は行政によって一掃されてしまったようだ。

菱が何をしたというのだ。静かにそこに佇んでいただけではないか。外来生物というわけでもない。夏の盛りでも池の1/4程度を覆っていただけだから、秋に向かうこれからの季節にそれ以上繁茂する心配もない。菱を一掃して君は何を得たのだ?自己満足か?菱を掃除するなら外来生物であるホテイアオイやらウォーターレタスを掃除すればよかろう。罪のない菱を虐げて仕事をしたつもりか。ちなみに、草刈りによって私が目をつけていたニラも刈られてしまった。私は行政を許さない。

 

 

仕方ないので菱はまた探すとして、この秋を逃すと来年の秋まで菱を食べられない。とりあえず今年は買ってみることにする。

調べてみると、福岡や佐賀の方で栽培されており、通販でも販売されていた。2キロで約5000円。けっこうするんですね。

 

f:id:shiratamarr:20201121200756j:image

 

しかもけっこうでかいね。あと顔がめっちゃ怖い。表情筋が隆々すぎるだろ。


f:id:shiratamarr:20201121200750j:image
f:id:shiratamarr:20201121200753j:image

 

調理方法は次のとおり。

① 灰汁を取るため、水から茹でて沸騰したら湯を捨てる(一晩水につけておくのでもよい)

② 20〜30分茹でる。固ければ適宜茹で時間を追加。(30分では殻がまだ固かったので40分くらい茹でた)

③ 2本の角の真ん中から脳天を真っ二つにするような感じで割る、もしくは切る。(包丁でも切れるが、殻が固い場合は刃を痛めるので、硬いものにも対応できる刃物がよい)

 


f:id:shiratamarr:20201121200804j:image
f:id:shiratamarr:20201121200800j:image

 

 

実がぎっしり詰まってます。

まずは茹でただけのものを頂いてみます。

事前の下調べで得ていた情報のとおり、クワイのようなホクホクシャリシャリとした食感。冷めると今度は冷めたクリのような食感になる。目立った甘味はないが、代わりに特有の風味がある。何にも喩えがたい、菱の香りというしかない香り。初めは不思議な風味に思えるが、すぐ慣れる。

親に聞いてみると、茹で菱は子どもの頃、祭りの縁日によく売っていたそうだ。

 

 

たくさんあるので、料理に使ってみます。

 

まずは素揚げ。一緒に芋と銀杏も素揚げします。

f:id:shiratamarr:20201121202311j:image

うーん、ちょっともそもそした食感になってしまった。揚げてる時間が長かったかもしれない。

 

天ぷらはどうか。

f:id:shiratamarr:20201124224024j:image

天ぷらの方が食感が楽しめていい。これはおつだ。

 

 

風味が強いので、風味のある他の食材と一緒に濃い味付けの料理にしても主張するだろう。ということで黒酢豚風の炒め物にしてみた。

f:id:shiratamarr:20201124233440j:image

酢豚風の割には、ゴーヤ、サツマイモ、ピーマンそして菱という謎の組み合わせだが、雑多な中で菱の個性が全く埋もれてなくて美味い。中華風の濃い目の味付けが非常に合う。素揚げした菱を炒め物に使うともっと美味くなるんじゃないだろうか。

 

 

 

今回私ができなかった採取の様子が、デイリーポータルZの玉置標本さんの記事にタイムリーに紹介された。

天然のマキビシ、ヒシの実を採って食べたい :: デイリーポータルZ

 

本来であれば、私もこうして菱の実を採って「へええ!菱の実ってこんな風に付いてるんですね!(独り言)」とか言っていたはずなのだ。行政にその機会を奪われてしまった。私は行政を許さない。