花粉症ってつらいらしいですね。僕は幸いなことに花粉症でありません。生まれてこの方、岐阜のクソ田舎でスギとイネに囲まれて育ってますからね、耐性が違いますよ。
今ではコロナ禍のため年中マスクをつけていることが普通になりましたが、かねてより私は「年中マスクをつけていたい」派でした。風邪予防という目的に加えて、相手に表情を読み取られにくい、多少ヒゲを剃らなくてもバレない、ニヤニヤしながら道を歩いていても不審に思われない等の利点があるからです。
冬場はマスクをつけていても「風邪予防です(キレ気味)」で通せるのでそこまで不審がられませんが、春になると「あれ、マスクつけてるってことは花粉症?」と聞かれることになります。春を過ぎてもマスクをつけていると「この時期にマスクってことは、ブタクサ?」と聞かれて、「そうなんでゲスよ ブシュンブシュン」などと相槌を打つことにる。
こんな適当なやりとりをしていると、私の頭の中の天使と悪魔が囁くわけです。
脳内の天使♀「ブタクサってどんな草?」
脳内の悪魔♀「ウチも知らん」*
脳内のネコ「にゃーん」
* ここの「ウチ」という一人称のイントネーションは「ウ↓チ↑」ではなく「ウ↑チ↓」です。
こんな感じでブタクサとは無縁の生活を送っていたわけですが、6月某日、いつもの河川敷にやって来ると、
こんなでかい草あったっけ?1.5メートルくらいの丈がある。いつも通りかかる場所だけど、1ヶ月ほど前にはこんな奴いなかったような。そしてその周りにも同じ草と思しき奴らが繁茂している。
調べてみたら、これがオオブタクサである。
ちなみにブタクサはこんな感じ↓で、オオブタクサに比べて一回り背丈が小さい。
三又に分かれた葉が特徴的で、葉のこの形状からクワモドキとも呼ばれるらしいが、クワの葉とは比べ物にならないくらいでかいし強そう。
河川敷に生えているオオブタクサは、とにかく株の数が多いし、葉がでかいし、背丈もでかいし、茎は丈夫だし、なんか全体的に「性欲が強そう」という印象を受ける。植物に対するコメントとして意味が分からないことは重々承知しているが、なんとなくニュアンスは伝わるのではないかと思う。とにかく繁殖力と生命力に満ち溢れている、そんなイメージである。
オオブタクサは北米原産のキク科ブタクサ属の一年草で、生態系被害防止外来種の中の重点対策外来種に指定されている。
在来の虫にはオオブタクサを食草とするものはいないのか、河川敷のオオブタクサの葉はどれも虫食いもなく艶々しかった。一方、オオブタクサの原産地である北米にはブタクサハムシという虫がおり、ブタクサをはじめキク科の植物を食べる。1996年以降、日本全国での定着が確認されており、キク科植物の食害などの悪影響が懸念されている一方で、花粉症の原因となるブタクサを食ってくれる存在として、海外ではブタクサハムシによるブタクサの生物的防除の可能性が研究されている。
北米に生息するブタクサハムシはオオブタクサを食べられないが、日本に定着したブタクサハムシは独自の進化を遂げてオオブタクサも食べられるようになったらしい。ナンプラーが苦手だったけどタイ旅行に行ってから好きになったみたいな話とは訳が違う。
とはいえ、日本において外来種であるブタクサハムシを使ってブタクサ類の生物的防除をしようという結論にはなりにくいので(そういう話になったら環境的にやばい)、地道に駆除をしていくほかなく、ブタクサ類の趨勢は残念ながらしばらく衰えることがなさそうです。
実はブログ主、オオブタクサを見た瞬間、「これひょっとしてアシタバ*だったりする?」とか思ったらしい。それでアシタバを調べてみたら全然違ったので、さらに調べてオオブタクサだと判ったのだが、一度「これを食べる」ということが頭をよぎってしまったので、話の流れで食べることにした。
* アシタバは葉の形がオオブタクサとはまったく異なるし、アシタバは茎を切ると黄色い液が出てくる。そもそも、太平洋沿岸部に生えるアシタバが名古屋市内に生えているとはあまり考えにくい。
参考画像→アシタバ - Wikipedia
食べると言っても、触った感じからして葉がゴワゴワしてるんですよね。背丈の低い株の新芽部分を選別しても、あまり食べたい思える柔らかさではない。ただ香りはあり、たしかに言われればキク科っぽいと思える。
アメリカ大陸原産のキク科植物というと、過去にもアレチノギクとセイタカアワダチソウを食べている。どちらも天ぷらで食べたが、どちらも風味の強さがプラスに活きていて悪くなかった。セイタカアワダチソの方が香りが強いので天ぷら映えするが、その分クセが強めなのでそんなにたくさん食べられるようなものではなかったという評価。
アレチノギク
オオブタクサを天ぷらにするのがどうしても面倒だったので、今回は茹でと炒めで味見をしてみます。葉の固さと毛の感じからして、おそらく茹では美味しくないと思われますが。
収穫物。あまり気が進まなかったので数日冷蔵庫に放置していた。
まずは茹で。
噛みきれないような固い繊維はないけど、毛も含めてモシャモシャした口あたりで、このままだと美味しく食べるのは難しい。
フワッと香りが鼻を抜けるが、他のキク科野草よりもいい香りという感じがしない。香り自体は強くはない。他の調理をすればこの香りは活きるのだろうか。
まだあるので炒めてみた。味見程度の量なので、とりあえず手軽に卵と炒め合わせた。
ライフハックですが、料理にハーブとかスパイスを添えるとお洒落に見えます。
…うーん、まぁ許容範囲かな。強いて美味いとは言えないけれども、飢饉が起こったら全然食べます。
やっぱり香りの高さがないんですよね。他のキク科の野草だと、香りが先鋭すぎて薬っぽさがあることもあり、それはそれで食べにくいのだけど、オオブタクサはその反対で香りが鈍いというか、とにかくパッとしないので、「ちょっとだけにおいのする草」程度の印象を免れない。
オオブタクサのいい点を挙げるとすると、香りが弱い分クセが強すぎず、またアレチノギクなどと比べると毛が少ないので、天ぷら以外の調理が可能になってくることでしょうか。
ともあれ、オオブタクサは平時においてはとりたてて食べるものではない。覚えました。
(採取日: 2021. 6. 20)