しらたまが道草を採って食うブログ

私ついていくよ どんな辛い野食の闇の中でさえ

【ヒヤリハット報告】ノボロギクを食べそうになった件

可食な野草だと思い込んで、毒草であるノボロギクを採取しました。

調理前に確認して気づきましたが、危うかったので学習も兼ねて報告いたします。

 

 

 

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ノボロギクはキク科キオン属(もしくはノボロギク属)のヨーロッパ原産の一年草ノゲシのような花を咲かせます。成長したノボロギクの写真はこちらが参考になります。

ノボロギク

 

ノボロギクにはピロリジジンアルカロイド類(PAs)の一種であるセネシオニンという毒素を含んでいます。ピロリジジンアルカロイド類とは、その名のとおりピロリジジンを基本骨格とするアルカロイド*のこと。特定の化学物質名ではなく、そのような構造を持つ物質の総称で、600種類以上の化合物が含まれている。

* アルカロイド = 含窒素有機化合物のうち、アミノ酸(とその結合体であるペプチド・タンパク質)および核酸以外のものの総称で、生物の生理的調整機能に対して何らかの作用を持つ(= 生物活性を持つ)もの。

 

ピロリジジンアルカロイド類は、ムラサキ科、キク科、ラン科などの植物に含まれていることがあります。山菜として一般的なフキ(キク科フキ属)、ツワブキ(キク科ツワブキ属)にも含有されているが、ピロリジジンアルカロイド類は水溶性であり、灰汁取りの過程で取り除かれるため健康被害が出ることは稀なようです。さらに、ミツバチがピロリジジンアルカロイド含有植物から花粉・蜜を集めることで蜂蜜中にピロリジジンアルカロイド類が含有されてしまうリスク*もあるらしいです。

* ただし、農林水産省の2018年の調査によると、日本で市販されているハチミツのピロリジジンアルカロイド類の含有濃度は、人の健康に悪影響を与えるリスクは無視できるレベルであったとのこと。

https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/seisaku/attach/pdf/180810-2.pdf

 

ピロリジジンアルカロイド類には強い肝毒性があります。

PA 中毒の最初の兆候は、VOD(静脈閉塞性疾患)で、腹部の右上部の重苦しい鈍痛、急速に腹水がたまることによる腹部の著しい膨張、時には尿量減少、多量の胸水などが現れる。これらは、はっきりしない症状や持続的な肝臓腫大を伴う亜急性症状としても現れることがある。肝硬変に進むケースも多い。死亡原因は急性期の肝不全、もしくは肝硬変からの食道静脈瘤破裂による。動物試験等の結果から、肺高血圧症など肺疾患を生じる可能性もある。

(国立医薬品食品衛生研究所「食品安全情報」No.20 (2003))

 

 

 

 

 

こういう毒を含むノボロギクの扱いですが、ネット上、それどころか野草図鑑でも食用とされていることがあるようです。

野草食いの先人たちのノボロギクへの対応もまちまち。毒性があるからということで食べることはやめている方(にゃごにゃさん)(にゃごにゃの野草料理: 多摩川で野草摘み)、ピロリジジンアルカロイド類が水溶性であることの認識の上でよく茹でて食べている方(サバイバル節約術)、キク科の植物は毒がないと思っていいなどと抜かしている輩など、様々。

なぜ色んな情報が飛びっているのかを考えると、第一には「茹でれば食べられる」ということの受け止め方が人によって違うことだろうか。対処可能な毒は恐るに足らずだというのは確かにそうなのだが、だからといって毒がないかのように扱ったり、毒がないと誤解するのはまずい。第二の理由としては、昔は野草としてよく食べられていたベニバナボロギク(ベニバナノボロギクと誤称されることもある)と名前が似ていて混同されやすいということかなと。かくいう私も、たぶんこの理由でノボロギクを食用として誤認してたんですよね。ベニバナボロギクは野食家の茸本朗さんも食べられてますね。→ 野良春菊ことベニバナボロギクは野菜か? 毒草か? | 野食ハンマープライス

 

茹でれば食べられるなら茹でて食べればいいじゃないかという話です。しかし、ノボロギクを食べようとしていたときの私は毒性を認識していなかったし、しかも天ぷらにしようとしてたんですよ。そのまま食ってたら肝臓やられてましたね。だから今回はヒヤリハットだったんです。

好奇心はあるので、次回は少量を茹でて試食してみようかなと思いますが、自分だけの体ではないので、念のため私の中ではノボロギクは毒草と位置付けておこうかなと思います。

 

 

【再発防止策】

・食べる前に必ず野草図鑑を確認し、毒性が確認された場合、または食毒不明の場合は食べないようにする。

・単一のネット情報に依存しない。必ず書籍にあたり、またネットも複数の情報を参照する。

・チェックシートを作成し、複数人によるトリプルチェックを励行。チェックの際は指差し確認を行う(ヨシ!)

 

 

参考文献・URL

・船山信次『毒の科学 毒と人間のかかわり』

食品中のピロリジジンアルカロイド類に関する情報:農林水産省

食品中のピロリジジンアルカロイド類に関するQ&A:農林水産省

https://www.nihs.go.jp/hse/food-info/chemical/pyrrolizidine/pyrrolizidine.pdf