川で釣りをしていたら突如目の前に現れた多肉植物。
この形からしてウチワサボテンでしょう。
多肉植物って、園芸でも大変人気があって、インテリアのようにこじんまりとした鉢にちょこんと植えられていたりするけども、場違いな場所で葉を縦横無尽に広げているこのウチワサボテンは、多肉植物はたくましくなければならぬという謎の説得力を醸し出していた。多肉植物も人間も、飼い慣らされてはいけない。
でもウチワサボテン属に属するセンニンサボテン(オプンティア・ストリクタ)が「世界の侵略的外来種ワースト100」に選定されてるんですね。日本でも生態系被害防止外来種に指定されてる。
ウチワサボテンの本体と果実が食用になることは知っていたので、採取してみます。野生化しているウチワサボテンも食べられるのかは、よく知りません。見た感じ、食用ウチワサボテンとされるものと同じもののように見えますがどうなんでしょうか。ウチワサボテンの本体部分はノパル、果実はトゥナと海外では呼ばれるらしい。
ウチワサボテンの緑の部分を「本体」ってさっきから言ってますが、これは茎節(けいせつ)と呼ばれます。葉と言いそうになるが、サボテンの葉は棘に変形しています。
採取しようとするとすぐに棘が刺さる。この個体は一見すると棘が小さくあまり痛そうに見えないが、小さい無数のカエシがたくさんついてるので少しでも触れれば確実に刺さってくるし、痛みもある。
サボテンの果実は憧れの果物だったので多めに採りました。美味しくなかったらどうするんだ。
今回は葉を調理してみます。いろんなサイトを見てみると、ステーキにするのが鉄板みたいです。ステーキだけに鉄板ってか。親に向かってなんだその爆笑ギャグは。
棘に気をつけながら皮を剥きます。
ためしにひとかけ生で食べてみる。青臭さと酸味の塊。あとヌメリがすごい。これは美味いのか?
ニンニクオイルでじっくり焼いていきます。
うん、青臭くて酸味があって、ヌメリがすごい。生で食べたときとほとんど感想変わらないな。これは果たして美味いのか?
まず、酸味があるということは聞いてたけど、想定してた以上の酸味。イタドリをかじったときの酸味くらいあるんじゃないだろうか。この酸味はなんなんだと思って調べてみたら、どうやらリンゴ酸のようです。サボテンのように熱くて乾燥してる場所に生息している植物は、光合成のために二酸化炭素を取り込もうにも、そのために気孔を開くと水分が蒸発して水分を失うことになるので、夜のうちに二酸化炭素を取り込みます。それをリンゴ酸に換えて貯蔵し、日が昇ったらリンゴ酸を二酸化炭素にまた変換して光合成を行う。これをベンケイソウ型有機酸代謝(CAM)というそうです。
同じく多肉植物であるスベリヒユが酸っぱいのも、やはりリンゴ酸によるもののようです。
ちなみに、今回食べたものがいわゆる「食用ウチワサボテン」に該当するのか確証はないものの、食用ウチワサボテンには血糖低下、コレステロール低下、抗酸化、抗動脈硬化などの効果が示唆されているようです。はえ〜すっごい(日本酒を飲みながら)
参考: 堀部貴紀『食用ウチワサボテンの栄養特性と生理作用』生物機能開発研究所紀要
サボテンステーキを食べていたら何やら喉がイガイガしてきました。水をさらしたり下茹でしたりしなかったので、シュウ酸とかサポニンあたりが悪さをしてるんでしょうか。先ほど話に出たイタドリの酸味の主成分はシュウ酸で、調理の際は水にさらしたり塩揉みしたりしてシュウ酸を抜きますね。
あと、ヌメリが想像以上に強い。オクラ程度の話ではないし、長芋の感じとも違い、例えるならメカブみたいな感じ。乾燥地帯に生えるのでこのヌメリが貯水に役立っているのだろう。成分はメカブとか昆布の同じフコイダンなんだろうか。調べてもいまいちよくわからないが、ウチワサボテンエキスを配合した化粧水とかがあるんですね。「砂漠の象徴・サボテンの長時間保湿パワー!」だから成分はなんやねん。
ステーキを食べても、青臭くて酸っぱいネバネバという印象しか持てなかったので、先人の言う通り、サラダで食べてみる。ドレッシングの酸味によりサボテン自体の酸味が気にならなくなるし、サラダなら青臭さも味のうちということにできるだろう。
あ、全然アリ。これは普通に美味しい気がする。サボテン側は何も変わってないのだが、周りのテンションがサボテンと合致していることにより、なんだかサボテンが活き活きしている。陽キャの集まりに陰キャは馴染めないみたいな、要はそういう話である。
しかしやっぱり喉がイガイガするな。大人しく茹でることにします。
やっぱりアクが出てますね。
鰹節とポン酢をかけてみる。見た目は茎わかめ。
これで喉のイガイガはなくなった。ネバリも酸味も穏やかになりました。これはこれで全然食べられるが、やはり青臭さは健在で、和食として食べるのはベストな食べ方ではない気がする。
下茹でしてサラダに入れるのが一番シンプルかつ最適な調理かもしれない。
(採取日: 2020.12.13)
【参考URL】
中部大学 堀江貴紀研究室HP