クサギというシソ科の落葉小高木がある。名前の由来は「臭木」で、文字通り、臭い(くさい)らしい。しかし、食べることのできる野草である。ネットや書籍を見れば「悪臭」「強烈なにおい」「異様」、挙げ句の果ては「真面目だけどパッとしない」「仕事ができるタイプではない」「要領が悪い」「いま彼と面接するとしたらまず採用しない」など、散々な書かれよう。そこまで言われたらどんなにおいなのと逆に気になるのが人間である。
今まであまり気に留めたことがなかったけど、道端に何やらワサワサと茂っている植物がある。
表面にフカフカと密生する毛、十字に広がった葉、柔らかい葉の質感。見たところクサギです。
本当に臭いんでしょうか。ちょっとにおいを嗅いでみましょうかねうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ああぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん んはぁっ!
…別に臭くないが?
たしかに特有のにおいはあるが、臭いという印象は全くない。例えるならエゴマのような、油っぽさを感じさせるコクのある香りという感じでしょうか。人によってはナッツっぽいと表現するかもしれない。いずれにせよ食べ物らしいにおいがして、むしろ好ましいとすら思える。
人によってはこれを臭いと感じるのかもしれないが、事前の文字情報の散々な評価とのギャップがあまりにも大きい。これを悪臭と書いている人たちは、本当に自分でにおいを嗅いだんですかね。「クサギは臭い」という言説がミーム化して独り歩きしたのではないかとすら思える。やっぱり自分の五感で確かめないと分からないもんですね。
このときはわが子の散歩中で採ることができなかったので、1週間後に同じ場所にやってきた。
は?
なんでなぎ倒されてんの?しかも他にも雑多な植物が生えてる中でなんでクサギだけ?
たしかにクサギは木だから放っておけば伸びていくからね、クサギだけがターゲットにされてしまったのかもしれないね。でもまだ全然背が低かったじゃん。それに同じく高木のアカメガシワもその辺に生えてるじゃん。道にせり出してて邪魔だったわけでもないし、なんでこのタイミングで伐採しちゃうのさ。誰だ切ったのは。すぐ前の家の住人の仕業か!お前か◯津!
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後日、別の道を歩いていると、
またクサギの群生地を見つけた。案外あちこちにある。
しかしこのときもまたわが子の散歩中だったので、1週間後に同じ場所に採りにやってくると、
なんでここも切られてるんだよ!
たしかにクサギが道にせり出してきてたけど、クサギ以上に通行人の邪魔になってるクズにはなんで一切手がつけられてないんだよ!
なんで毎回僕がクサギ採りに行ったタイミングで切られてんの?そういうマクロが組んであるの?
同じことが繰り返されてふと気がついたけど、僕にとってクサギは臭くないんだけど、やはりクサギを臭いと思っている人もけっこういるのかも知れない。そのようなクサギ臭い派、いわばクサギ絶許マンたちによって、クサギが切られてしまったのかもしれない。
クサギ絶許マンにとって、クサギに満ちたこの世界はおそらく過酷だ。道端のクサギを見つけ次第切り倒したい衝動に駆られてしまう彼らの苦悩は、果たしていかほどのものだろう。クサギ全然許せるマンである僕は、彼らの苦悩に寄り添うことができないが、しかし、思いを馳せることならできる。
育ってきた環境が違うから好き嫌いは否めなくて、例えばセロリが好きとか嫌いといったことでも、相手のその感覚がわかることはおそらく一生ないのだけれど、それでもわかろうする努力を絶えず続けていくこと。つまりは単純に、これが愛ということなんだと思う。みんな、山崎まさよし*を聴こう。
* 山崎まさよしの一番の名曲は『全部、君だった』である。
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苦労しましたがクサギを採ってきました。現場から10メートル離れたところにも普通にクサギ生えてました。ちゃんと仕事しろクサギ絶許マン。
葉柄はちょっと固そうなので一応取っておく。
2分くらい茹でて、胡麻和えに。クサギの香り的に、胡麻和えとかピーナッツ和えはまず合うだろう。
毛が密生してる。食感面が気になります。
うわ にっが
めちゃめちゃ苦いけど、毒々しい苦味ではないですね。しかし苦いので食べられたものではない。
風味は、生で嗅いだにおいそのまま。やはりエゴマのような香りがあり、しかもかなりコクがある。おいしい野草の片鱗を感じる。
しかし苦い。
クサギは炒めるのが鉄板らしいので(念の為言っておくが鉄板で炒めるという意味ではない)、とりあえずちょっと多めの油で炒めてみる。
うん、クサギがもともと持ってるコクに油のコクが重なって美味しそうな片鱗があるんだけど、苦い。炒めても苦味は変わってないですね。
時期が遅かったのだろうかと思い調べてみると、
石川)謎のくさぎ煮 臭木をおいしく 宝達志水で伝承
自然の恵みを生かした郷土の味「クサギナのかけ飯」岡山・吉備中央町
【マイナー山菜】クサギの佃煮を作ってみた
乾燥させたり水に晒したりして、苦味を取る工程がやっぱり必要だったんですね。調理法が完全に間違ってました。
苦味がなければクサギは美味しい野草になるという大きな期待があるので、次採ってきたときには苦味対策をやってみたいと思います。でもまたクサギがなぎ倒されていて採れないかもしれません。
まぁ がんばってみるよ 少しだけ。