明日また来てください。本当のナマズを食わせますよ。
栗田「山岡さんっ!!」
山岡「どうしたんだ」
栗田「山岡さん、海原雄山に美味しいナマズを食べさせるなんて言ったんですか!?ナマズだなんて泥臭くて美味しくないんじゃないですか?」
山岡「ナマズ自体は日本各地、さらには世界各地で食べられてきた魚だ。大型化するから食い出があり、生命力が強いから、川で採ってきて食べるまでの間水槽や池で飼っておくこともできる。普段は水の底にいる魚だから泥臭さを体に溜め込みやすいが、逆に言えば、キレイな水であれば臭みのない上質な白身魚だ」
栗田「あ、そういえば、ウナギの代用としてウナギの味のするナマズの養殖が行われているって聞いたことがあります!もともと食性も似ているし、皮のゼラチン質の感じも共通しているとか。考えてみれば、ウナギって海の魚とは違う独特の川魚っぽさがありますけど、美味しいナマズもきっとそんな感じなんですね」
しらたま「栗田は一聞くと十理解する賢さがあるんだよな。栗田と同僚だったら絶対好きになってるわ」
山岡「そうだ。今でも山間部や清流地域ではナマズが食べられていることが少なくない。川魚には特有の風味があるが、それとは別に川魚の臭さの原因となるのがゲオスミンという物質だ。都市河川のような富栄養化した川では、藍藻類が増え、こいつらがゲオスミンを生成する。これが川魚のアスファルト臭さの原因になるんだ」
栗田「やだ、アスファルト臭なんて、食べ物の匂いですらないじゃないですか!」
山岡「話は簡単だ。水のきれいなところのナマズを食えばいい」
栗田「どこでナマズを捕まえるんですか?」
山岡「琵琶湖だよ」
栗田「わたし琵琶湖にあまり詳しくないんですけど、琵琶湖ってきれいなんですか?このブログの筆者が琵琶湖好きだから言ってるだけじゃないですか?」
山岡「かつて高度経済成長期には工業廃水で汚染されたが、市民の努力で水質が改善されてきた。日本を見渡せばもっときれいな水はあるのは確かだが、それでも琵琶湖は魚を獲って食うには十分なきれいさだ。同じ琵琶湖でも湖の北と南では水質が大きく異なる。水質がいいのは湖の北側だ。時間がない、早速向かうとしよう」
車で湖北へと向かう山岡と栗田。北陸自動車道で滋賀県内を北上する。
栗田「山岡さん、警備員みたいな人が立ってますけど…」
山岡「ああ、このあたりは積雪が多いから、悪天候のときに冬用タイヤ規制区間が設けられることが多い。ノーマルタイヤで走ってる車は、ここから先の高速道路を走れないんだ」
栗田「そっか、山道ですもんね。この車はもちろん冬用タイヤを履いてるんですよね?」
山岡「 (・ω・) 」
栗田「 」
山岡「きれいな水にはゲオスミンが少なく、ナマズの体内にゲオスミンがそもそも蓄積されにくい。逆に言えば、汚い水だとしても、ナマズの体内にゲオスミンが蓄積さえしなければ、ナマズは臭くならない」
栗田「 」
山岡「ナマズは冬場はエサを食べずにじっとしている。ゲオスミンは、水や泥から臭いが移るだけでなく、ナマズが食べたエサを経由して、いわば生物濃縮的な方法でもゲオスミンの蓄積が起こる(たぶん)。だから、冬場に獲れたナマズは、他の時期のナマズよりもゲオスミン臭が少ないんだ(たぶん)。今は12月上旬だ。ナマズはエサを食べなくなってきているが、それでも釣りで狙えない季節じゃない。普通の川で、食べるためにナマズを狙うならこの時期が一番だ(たぶん)。わざわざ琵琶湖に来る必要なんてなかったんだ」
栗田「本当に言ってます?」
山岡「本当だ(本当だとは言ってない)」
栗田「じゃあどうするんですか」
山岡「愛知県内の水路群エリアにいく。ナマズの魚影が濃いからな」
栗田「明日って約束しちゃった手前、とにかく何でもいいからナマズ調達しようとしてない?」
山岡「 (・ω・) 」
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だいたい上記のような理由で琵琶湖に行けなかったので、代わりに愛知県内の有名なエリアに来ました。この辺りはナマズとライギョの聖地みたいな扱いになっているみたいです。
以前冬にナマズを釣ったのもこのあたりの川でした。水質はわりとやばかったんですが、臭みがなくて美味しかったんですよね。
一方、5月頃に別の川で釣ったナマズはなかなかのゲオスミン臭であった。
いかにもナマズがいそうな雰囲気ですが、水路なので水深は浅い。冬場はもっと水深のある川の本流に移動しているものと思われますが、まだナマズはいるのでしょうか。
ワームで川底をネチネチ攻める。
いましたね。やはり冬は動きが鈍くなるので、エビやヨシノボリのような底をゆっくり動くエサを意識したルアーが効く気がします。
それにしてもここ2年、だいたいの魚をこのエコギアのバグアンツの赤で釣ってる。
捌いていきます。
ナマズの産卵期は春から初夏にかけてですが、この時期のナマズでも卵もってるやつがいるんですね。
内臓につく謎のにょろにょろした寄生虫。毎回こいつを見かけるが名前がわからない。
恒例の胃の内容物チェック。
あれ、この季節なのにけっこういろんなもの食ってるな。
エビ
小魚。体高があるからフナだろうか。
これだけエサを食ってるとなると普通にゲオスミン臭がしそう…ちょっと不安が残る。
捌けた。これをぶつ切りにして、臭い消しのために牛乳につけて、調理に入ります。
今回はエスニック風に炒めてみようということで、ニンニクと唐辛子を火にかけて、
身を炒めて、クミン、山椒、胡椒を加えて、醤油・オイスターソース・砂糖・レモン汁の合わせ調味料で味付け。だいたいこの合わせ調味料を使っておけばエスニック感出る。醤油の代わりにナンプラーを使えばなおよい。
お、臭みがない。臭みがない?あることない?いや気のせいかもしれない。いややっぱりある気がする… 過去のゲオスミンがトラウマになっていて目の前のナマズを正当に評価できない。記憶に足をとられて次の場所を選べない。普通に食べればいいものを、ゲオスミン臭が本当にないのかとわざわざ注意して味わってしまう。いつでも捜しているよどっかに君の姿を。
二口目を食べてみると、今度は明確にゲオスミン臭い。どうやら腹回りが臭いようです。背中の身はゲオスミン臭はあまりないが、しかしゲオスミン臭がないと言い切っていいのか判断がつかない。腹回りの肉の臭いが炒めてる間に移ってしまったために、背中の肉を食べてるときにもゲオスミンの影を感じてしまうと、そういうことなんだろうか。もしくは、ふつうに背中の肉にもわずかなゲオスミンがいたか。
いつゲオスミンがやってくるかわからない恐怖感のせいで美味しかったのか美味しくなかったのかよく分かりませんが、
- 腹回りの肉を初めから取り除く
- 今回の炒め物のように、臭い部位の臭いが他の部位に移る可能性のある調理法を避ける
この対策をとっていれば、なんとかなりそうなレベルのゲオスミンではありました。
今回釣った場所は水質が決していいとは言えないところでしたが、この程度のゲオスミン臭で済んだのはやはり季節的な要因によるところが大きいかったのではないでしょうか。自分の仮説が補強される結果になったかなと思います。
ナマズを食べる毎にノウハウが貯まってきたことへの喜びはありますが、同時に、ゲオスミンに対するヘイトも確実に蓄積されている気がする。私はどこへ向かっているのか。
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山岡「こうして俺たちの究極のナマズ料理が勝ったわけだが」
栗田「負けたんだが」
山岡「海原雄山はこのナマズを臭いなどと言いがかりをつけていたが、これは間違いなく究極のナマズだ。どこが臭いものか(臭くないとは言ってない)」
栗田「わたしも食べたんですけど、やっぱり少し臭かった気がします。思ったほどではなかったですけど。山岡さんもこのナマズ、食べたんですよね?」
山岡「 (・ω・) 」
栗田「食べてないんですか?」
山岡「 (・ω・) 」
栗田「 (・ω・) 」
山岡「 (・ω・) 」
栗田「 🪓(・ω・) 」
(釣行日: 2022. 12. 10)