しらたまが道草を採って食うブログ

私ついていくよ どんな辛い野食の闇の中でさえ

妻の導きのもとつくしを採る

 

3月の頭、妻が「そろそろつくし出てないかな?」と言い出した。

わが細君は貴婦人なので野草など食べない。「これ地域によっては流通してるよ」と言っても警戒して食べないことの方が多い。ひょっとすると、以前私がドクダミのフライを食べさせたのが原因なのかもしれないの。

【ご参考】弊ブログの初回の記事

 

しかしなぜかつくしにだけは異常な執着を持っており、私以上の熱意をもって毎年つくしを採取している。今回も、もうすぐつくしの季節だな〜と思っていたら「つくし生えてないか見てくるわ」と言って自ら確認に行く始末。つくしの何が君の心の柔らかい場所を触れるというのか。

 

そんなわけで珍しく家族総出で野草を採りにきた。

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まだ出始めたばかりですね。つくしはどれだけでも生えてくるので、小さくても容赦なく採取していきます。
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とりあえず初物ゲット。
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出始めのころはハカマどうしがくっついているが、伸びるにつれてハカマどうしの距離が離れてきます。入学したての頃は長かったスカートも、背が伸びた今では膝丈だね… 
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ハカマを取ります。ハカマも食べられなくはないですが、固くて口に残ります。本当にどうでもいいんですけど、自分で書いてるのにハカマを毎回ネカマに空目する。
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104本のハカマを取るのに40分くらいかかりました。つくしはこの作業の手間があるのがネックですね。

 

 

下茹で1分程度でごく短く済ませて、2,3 時間水にさらす。苦味やエグ味が魅力なのであまり時間をかけないようにするのがいいものの、わが子も食べるのでこのくらいで様子を見ます。

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ちなみにつくしにはアルカロイド類、チアミナーゼ[※1]といった人体に有害な成分が含まれています。つくしは大量に食べるようなものではないので問題になることは多くないとは思いますが、これらの成分を処理する意味でもアク抜きはちゃんとした方がいいと思います。クックパッドでつくしを生のまま調理している人を見かけたけど、強く生きてほしい。

[※1] チアミナーゼチアミン(=ビタミンB1)の分解酵素であるため、大量の摂取はチアミン欠乏症(人間でいうところの脚気)を引き起こす。チアミナーゼはつくし(=スギナ)と同じシダ植物であるワラビやぜんまい、魚介類、甲殻類にも多く含まれている。酵素なので加熱すれば失活する。

 

 

 

鰹節と醤油をかけていただく。
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つくしの味を一番よく感じられて美味い。ほのかな苦味エグ味と少しモソモソしたような食感が唯一無二の味わいを醸し出している。文字にするとそれがなんで美味いんだよと思うのだが、なんか美味いのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

2週間後、妻がもっとよく採れるつくしポイントを見つけてきた。つくしに対してのみ向けられるその熱意はなんなんだよ。


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3月20日前後でちょうど食べ頃になってました。

 


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数えていないけど350本くらいかな。ハカマを取るのに2時間半くらいかかりました。いくら手仕事が好きと言ってもつらいものがある。
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たくさんあるので、普段やらない調理法をしてみます。牛肉と炒めて、醤油、オイスターソース、砂糖、胡麻油で。

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濃い味付けだけど、奥につくしの風味が感じられて美味いですね。こういう調理をするなら下処理の時間をもうちょっと短くして風味を強く残しておいてもいいかもしれない。

 

 

茹でただけのつくしをうどんに添えるとおつな感じになります。
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つくしは案外いろんな料理に使えるので、たくさん採って茹でたものを冷凍保存しておくのもよいです。

 

 

 

(採取日: 2023. 3. 5 / 3. 21)

ハクモクレンの花を食べようとしてみた

 

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申鶴復刻おめでとうございます!

仙人である申鶴は花を食べます。私も負けられないゾ、ということで花を食べていきましょうね。

 

 

 

ちょうど近所のハクモクレンが先週見頃になっていました。見頃ということは食べ頃だと解釈しても、あながち間違いではないでしょう。

 

 

あ、一週間経ったらもう花が終わりかけてますね…。

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先日からの5月並みの陽気と今日の雨のコンボで花の多くが散ってしまった。
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まだ褐変しきっていないものだけを拝借。
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桜もきれいに咲いています。八重桜の花を摘んで塩漬けにしたいんですけど、近所に八重桜がないんですよね。

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ユキヤナギも満開です。普段は地味だけど、花が咲くと他の花にはない迫力がありますね。ユキヤナギ小柳ゆきって言い間違えがち。
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それにしても、ハクモクレンって食べられるんでしょうか。花弁が分厚くて食べ甲斐がありそうだなという理由だけで先に採取してしまいました。こういう油断が命取りになるんだよ。

 

まず、ハクモクレンは生薬になるようです。

薬用には、開花直前の蕾を採取し、軸を除いた後、風で乾燥させます。生薬名は「辛夷(しんい)」です。中国最古の漢方の書物『神農本草経』(250年~280年頃)の上品に収載されている生薬で、「辛雉」「木筆」「迎春」などとも呼ばれています。蓄膿症や鼻炎、鼻づまりなど鼻の病気一般や、頭痛、解熱、鎮咳などに用いられています。

 

(https://www.yomeishu.co.jp/sp/genkigenki/crudem/200331/)

 

 

ハクモクレン(白木蓮)とモクレン(紫木蓮〈シモクレン〉)は別種で、モクレンの花はすべて紫です。どのサイトを覗いても基本的にハクモクレンを生薬にするとあり、モクレンとは明確に区別されているっぽい。

一方、白い花を咲かせる点で共通するハクモクレンとコブシは、どちらも蕾が上記の生薬として利用されるとのこと。

 

【参考:花の見分け方】

モクレン、ハクモクレン、コブシの見分け方 - 株式会社バイオーム

 

生薬に使われるということは、適量を食べる限りにおいては体に悪影響はないと考えていいかもしれませんが、食材として実食したという情報がほぼ見当たらず、食べる勇気が出ない。

過去にエディブルフラワーではない花を何度が食べていますが、たいてい苦くて、強いて食べるようなものではないんですよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず齧って口に含んでみる(飲み込みはしない)。まずは生で。

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柑橘っぽい清涼感があるんだけど、数口噛むと苦味と辛さが広がる。例えるなら、夏蜜柑の皮の表面の橙色の部分を噛んだようなヒリヒリした辛さ。生薬っぽいといえばそうかもしれないが、食べ物と認識できるレベルではない。

 

 

1分くらい茹でて水に晒してみるか。
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3時間くらい経ったところで食べてみたが、苦味も辛さも少し抜けたくらいで、依然として食べられるレベルになっていない。

 

 

数回水を換えて一晩おいた。

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だいぶ食べやすくなったとはいえ、成分がまだ残っている感じがします。もっと水にさらせばおそらく気にならないくらいまで抜けると思いますが、結局食べて大丈夫なのかは分からずじまいなので諦めました。


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一晩さらしたあとの水。口に含んでみると、花弁を齧ったときと同じ苦味がありつつも、ジャスミン茶のような芳香があり、こういう飲み物だと言って出されればそのまま飲みそうな気もする。

 

 

 

 

 

 

たぶん食べても問題ないんだろうなと思いながらもモヤモヤしている状態なので、今後も可食性についての情報を探りたいとは思いますが、仮に可食だったとしても積極的に再度食べてみたいかと言われると微妙です。お茶だったら飲んでもいいかもしれない。

 

 

 

(採取日: 2023. 3. 25)

 

道端で採れる山菜としてギシギシの新芽を評価したい

 

ギシギシという植物はどこにでも生えているザ・雑草ですが、その新芽は山菜のような特有のほろ苦さと風味があって美味しかったりします。「ザ・雑草」って言葉面白くないですか。ともあれオカジュンサイとも呼ばれるくらいには一部で食材として認知されており、すでにこのブログでも過去に食べています。

 

過去記事

 

 

極めてレア度の低い野草なので、普段はまとまった量が採れたり大きな株が見つかったりということがなければ強いて採取しないのですが、それはギシギシの新芽が取るに足りない野草ということでは決してありません。配布キャラは弱いと思われがちですが、使い方をしっかり考えて相応の投資をすればちゃんとダメージを出すことができるみたいな、つまりそういう話です。一番可愛いしね。

 

参考画像:原神のアンバーちゃん

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そういうわけで、条件さえ揃いさえすれば久々にギシギシの新芽を食べたいなと思っていたところに、立派なギシギシの群生地を見つけました。

 

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群生している様子を見せたくてもっと引きのアングルの写真も撮ったんですが、長い枯れ草が覆い被さっているせいでただの茶色い絵面になってしまったので割愛します。

 

これがギシギシ。ギシギシにも複数の種類があるようですが、不勉強で全く同定ができません。
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2月ごろから、白い皮を被った新芽が出てきます。これを採って食べます。
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立派な新芽。オカジュンサイという呼び名のとおり、新芽にはネバリがあるんですが、けっこう葉っぱが伸びてきてしまっているのでこういうやつはネバリが薄いかもしれません。

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ネバリのせいで素手では採りづらいので、軍手とカッターを使うのがいいです。この日は軍手もカッターもなかったので、頑張って爪を立てて新芽を切るようにして採りました。痛かったです。

 

あとモリチャバネゴキブリがヨチヨチ歩いていたので写真貼っときますね。
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成果。
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下処理はまず薄皮を剥くところから。こういう地味な作業を真面目にできる方は野草に向いています。おめでとうございます。
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長いまま茹でたほうが水っぽくならず風味もよく残るんじゃないかと思いつつ、後処理が楽なので切ってから茹でてしまった。このように易きに流れて雑な処理をする人は野草に向いていません。
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普通に茹でる。まず2分程度茹でて、お湯を捨てて再度水を張って一度茹でこぼす。茹でこぼしのときの茹で時間は軽く1分くらい。アク抜きのために長時間茹でるくらいなら長く水にさらす派です。
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一晩水にさらす。途中で1回だけ水を換えました。
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ワラビのアク抜きには重曹を使うけど、それ以外の野草・山菜に安易に重曹を使うと、風味が抜けすぎるし食感はグズグズになるし重曹の味が付くので、僕は絶対に重曹を使わないようにしています(過去にやって懲りた)。

 

 

 

 

 

 

ギシギシの風味にはやはり醤油だと思う。とろろご飯に乗せちゃうのとかいい。とろろとギシギシのネバリの相乗効果。

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残りは全部かつお節と醤油をかけて食べてしまいました。これ以外にも食べ方があるような気がするけど、たぶんこれが一番美味しい。

 

もちろん食感は全然違うけども風味の系統はワラビを彷彿とさせるところがある。一番近いのはイタドリの新芽で、ギシギシもイタドリもいずれもタデ科の植物、シュウ酸を多く含むという特徴も共通するので風味も近いのでしょうか。ちなみにシュウ酸は漢字では蓚酸と書き、「蓚」がタデ科のスイバを表す漢字なのだそうです。

 

山菜に近しい味の野草がその辺の道端とか空き地に生えているなんてロマンがある話です。みんな山に美味しいものがあると思って山に行きますけど、全然足元にあるんですよ。中島みゆきの『地上の星』を聴き直してほしいものだ。

 

 

 

 

(採取日: 2023. 2. 24)

 

フジの実についてのアップデート

 

1年前に食べたフジの実が美味かったんですよ。

 

そういえば今年は拾いに行くチャンスがなかったなあと思いながら春を迎えようしていた、そんなタイミングでフジの実に遭遇した。

 

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芝生が綺麗に敷かれたような公園って基本食材を見つけにくいんですけど、フジはそんなところで採れる数少ない食材です。


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フジの実(さっきから実って言ってるけど正しくは種)って長いサヤに入ってるんですが、秋ごろになるとこのサヤがパチンと爆ぜて中の種を散布します。しかしこの藤棚には2月の終わりになっても爆ぜずに木にぶら下がったままになっているサヤがとても多い。種子散布ヘタクソかよ。

 

せっかくなので木に残ってるサヤから新鮮な実を取り出してみることにします。
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サヤってとても硬くて、イメージとしては木の皮とか薄い木材みたいな質感です。手で割ることは難儀なので足で踏んで体重をかけて割っていきます。体重をかけただけでダメならガンガン踏む。一番確実なのは、固い場所に置いて石で叩く方法かなと思う。

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たくさん入ってますね、もっと採りましょう。イヌの散歩に来たおばさんがこっち見てるけど気にせず採りましょう。

 

ちなみに、地面に落ちてから時間の経過した実(写真右)とサヤから出したばかりの実(写真左)を比べると、前者の方が赤っぽくて表面のシワが多く、触った感触もフカフカと若干の柔らかさがある。

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これがサヤの断面。薄い木板が3枚くらい重なってるみたいな構造してる。

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サヤの表面にはうぶ毛みたいな毛が密生していて、ビロードみたいな光沢を醸し出しているのが何ともキレイです。

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こんな捻れたサヤを見たことある方は多いと思うが、フジは十分に乾燥すると一対のサヤが互いに逆方向に捻れて、その勢いで種子を飛ばします。自力散布とか自動散布とか呼ばれる種子散布の方法で、鳥や小動物のエサとなって運ばれるでもなく、タンポポやカエデのように風に運ばれるでもなく、ハマダイコンやココヤシのように水に運ばれるでもなく、自らの力で種を飛ばすという真面目なやつである。

この種子散布はなかなか勢いがあるようで、寺田寅彦の随筆にそのことについて触れたものがある。

昭和七年十二月十三日の夕方帰宅して、居間の机の前へすわると同時に、ぴしりという音がして何か座右の障子にぶつかったものがある。子供がいたずらに小石でも投げたかと思ったが、そうではなくて、それは庭の藤棚の藤豆がはねてその実の一つが飛んで来たのであった。

(中略)

それにしても、これほど猛烈な勢いで豆を飛ばせるというのは驚くべきことである。書斎の軒の藤棚から居室の障子までは最短距離にしても五間はある。それで、地上三メートルの高さから水平に発射されたとして十メートルの距離において地上一メートルの点で障子に衝突したとすれば、空気の抵抗を除外しても、少なくも毎秒十メートル以上の初速をもって発射されたとしなければ勘定が合わない。

 

(『藤の実』)

https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2339_13490.html

 

秒速10メートルというのは時速にすると36キロメートルなのでなかなかの速さであるが、新海誠[注1]の『秒速5センチメートル』の冒頭を思いつきで借用すればこんな感じである。

明里:ねぇ、秒速10メートルなんだって。
隆貴:えっ、なに?
明里:フジが種を飛ばすときのスピード。秒速10メートル。
隆貴:ん〜。……ん?
明里:ねぇ、なんだか、まるでソ連の5.45x39mm弾みたいじゃない?初速が出るの。小口径化したから。
隆貴:明里、そういうことよく知ってるよね。

 

 

[注1] 新海誠作品のなかで『星を追う子ども』が好きだと言ったときに困ったようなリアクションするのやめてもらっていいですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炒る以外の調理方法を知らないので、今回も炒って食べました。フジに含まれる毒成分については前回の記事に書いたとおりです。前回はビビって食べるのを25粒くらいに留めたんですが、結局大丈夫だったので今回は45粒くらい食べてみる。

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やっぱり美味いですね。ちょっと青っぽい香りのある炒り大豆とかイカリ豆みたいな感じで、豆らしい味の濃さがある。ポリポリした食感を楽しむなら火はしっかりと入れた方がいい。

 

結局、食べてからも腹の調子は問題なかったです。とはいえ体質は人それぞれですので、食べるときは自己責任で。

 

 

 

 

(採取日: 2023. 2. 24)

春の野草はカラシナから始まる

 

あくまでも私の住むところではっていう話ですが、春の野草の本格的なシーズンインは3月からで、どれだけ暖かくとも2月はまだ種類が限られています。そんななかでもいち早く青々と成長する筆頭野草がカラシナ。そんなわけで毎年の私の春の野草採取はカラシナから始まります。

 

去年

 

 

2月下旬ですがもりもり育ってますね。

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この川原は私の八百屋で、野草の季節になると毎年何度も足を運ぶんですが、年々カラシナが増えている気がします。

今まで思考停止になっていて調べたことがなかったけど、これはセイヨウカラシナという外来種で、環境省が定める生態系被害防止外来種リストにも掲載されている。その強い繁殖力もさることながら、根が大根状に肥大化、枯死に伴い根があったところに隙間ができるため、洪水時に堤防が侵食されやすくなってしまうらしい。そのため、カラシナの駆除も行われているという。

https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000041502.pdf

堤防を壊す?河川敷を黄色く染める「菜の花」 実際に被害も…(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース

 

こんなことなら根っこごと引っこ抜いてこればよかったな。

 

 

 

 

 

 

河川管理にとっては悪者でも、まな板に乗ればただの食材というものよ。

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ノビルも採ったよ。
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エスニック風に甘辛く炒める。市販の菜の花、いわゆるアブラナよりもクロロフィル感が強いので、濃い味付けの方が合うと思います。
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ヘタな野菜食ってるよりもよっぽど美味しいですね。軽めに火を入れると辛味は飛びつつもカラシの香りは残るんですよね。焼きつければアブラナ科らしい香ばしいコクが出てくる。

 

ラーメンに乗せちゃってもいい。

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写真はありませんが、パッタイにも入れて美味しく頂きました。

 

 

(採取日: 2023. 2. 24)

苦味対策さえすればヘラオオバコはクセがなくて美味しい

 

果敢にも冬の河口にクロダイ・キビレを狙いに来ました。なんと!結果はボウズでした。

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仕方ないので野草を取ります。コンクリートの護岸なので植物が少ないですが、やたらとヘラオオバコがありました。

 

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その名のとおりオオバコ科の植物で、ヨーロッパ原産の帰化植物。2015年に廃止された環境省要注意外来生物リストには掲載されているけど、その後継である生態系被害防止外来種リストにはどうも掲載されていない。なんででしょうね。

 

オオバコはどこでも手に入るクセのない野草として名高いですが、ヘラオオバコもどうやら食べることができるらしい。


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どうせ外来種やしええやろということで株ごと採りました。

冬季のロゼット型植物らしく、触ってみる限り葉は硬く、地面にぴったりと這いつくばっている。あまり美味しそうな印象ではない。

ちなみに暖かくなるとこんな感じで葉が立ちます。

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(出典: 松江の花図鑑 ヘラオオバコ

 

 

 

 

 

 

 

葉をむしった。

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とりあえず生で食べてみる。

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なかなかに苦い。繊維も硬く、パリパリとした食感。一言で言うと、野草を食べない人がイメージする「ただの葉っぱ」の味といったところか。舌にピリピリくるわけでも、変な酸味があるわけでもなく、ただ苦い。そういう葉っぱ。しかしやばそうな苦味ではない。生で食べてただ苦いだけというのは、野草としてはその時点で既に優秀なので、ちゃんと茹でて水にさらせば期待できるんじゃないだろうか。農作物と違って野草の世界では、そのまま食べて美味しいか美味しくないかではなく、仮に美味しくなかったとしてもその美味しくなさの原因を調理によって制御できるかどうかが一番重要なので。

 

 

 

 

 

繊維が少し硬かったので5分くらい茹で、水にしばらくさらします。茹でている間、湯気が川の匂いでした。汚ねえ都市河川の護岸に生えてた奴なので…。

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茹で上がった歯を食べると、苦味がしっかりと残っているものの、やはり身体が受け付けない類の苦味では全然ない。ゴーヤを食べられるなら許容範囲ではないかという気もする。少しだけ硬さは残るものの、口に繊維が残ることはなく、キュムキュムとした食感がかえって心地良くも感じる。

 

水にさらして2時間が経過。

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まだ普通に苦いな。

一晩置くか…

 

 

翌朝調理しなかったので、結局丸1日水にさらすことになりました。それでも水は薄い茶色に染まっていました。けっこう成分強いんだね。さすがに1日水にさらしたら苦味は消えてました。

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玉子と一緒に炒めてみましょうかね。ニンニク、生姜で香りを出して、味付けは塩、胡椒、オイスターソース、しょうゆ、砂糖で。

 

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全然クセがなくて美味しい。別の言い方をすれば何の特徴もない。苦味もエグミもない。そしてこれといった味もない。しかし雑草級の野草で何のクセもないというのは立派なステータスですよ。

 

今回は濃いめの味付けで炒めてみましたが、これだけしっかり苦味対策をすればお浸しでもいけるし、ただ塩胡椒で炒めるだけでも美味しく頂けそう。むしろ、食材として受け入れられるタイプの苦味なので、苦味を残してゴーヤチャンプルー的な感じの炒めものにしてもそれはそれで美味しかったのではないかと思う。優秀な野草でした。

 

 

 

 

(採取日: 2023. 2. 24)

 

ツバキ・サザンカの天ぷらはきれいだけど食べるのは一個でいい

 

春が近づいてきたのでソワソワしますね。ソワソワしすぎてデニソワ人になっちゃいました。

 

何か食べられるものがないかと散歩してみても春の野草には少し早い。代わりにツバキの花が咲いていたのでツバキ食べてみましょうか。せっかくなのでサザンカと食べ比べます。

 

 

 

 

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ツバキ、好きなんですよね。厚くて立体的な花弁には着物のような美しさがある。

 

こちらは赤いツバキ
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こちらはサザンカ
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ツバキに比べて花弁が小さく、花全体も若干平面的。

 

ツバキは花ごとボトリと落ちますが、サザンカは花弁ごとにパラパラと落ちるので、地面を見れば一発で判別できる。
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きれいな花を食べるなんてなんともいいじゃないですか。仙人にでもなった気分です。仙人で思い出したけど、原神の申鶴復刻いつですか?

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以前サザンカを白ワインで煮てジャムにしたことがあったけど、タンニン由来と思われる苦味が強かった。ツバキとサザンカの成分上の違いはわからないけど、ツバキを食べるときにもタンニンの存在には注意した方がよさそう。

 

 

ツバキの一番外側の花弁を試しに生で食べてみる。

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あ、けっこう苦い。生のゴーヤの1/3くらいの苦さ。そして予想外に繊維が強くて噛みきれん。

口から出したものをお見せして大変心苦しいが、なんか青っぽく変色してました。
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ツバキの色素であるアントシアニンは酸性の溶液に入れると赤く、アルカリ性の溶液に入れると青くなるので、中性の口の中に入れたことで色が変化したんでしょうか。

 

 

思いのほか固かったのが心残りだが、とりあえず天ぷらに揚げていく。天ぷらを選んだのは、私の持っている野草本にツバキの天ぷらが紹介されていたのと、油の力で苦味がどうにかなるんじゃないかという漠然とした期待からです。
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まずはツバキから。
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花自体には強い味は存在しないので完全に食感を楽しむだけの料理という感があるけど、ナシではないかな。苦味はやはり強め。

 

どこが苦いのか検証。

花弁。

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かすかな苦味はあるけどそこまでではない。

 

おしべ。なんかカメノテの身みたいな形ですね。
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苦味の原因こいつだわ。単体で食べるとかなり苦い。しかも舌の奥の方にいつまでも苦味がズーンと残って、あまりいい苦味とは思えない。汚い例えをするなら、耳垢って苦いじゃないですか。その苦味がずっと舌の奥に残ってる感じ。おしべがあったほうが天ぷら映えするけど、確実に取り除いておいたほうがいい。

 


次はサザンカ

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噛んだ瞬間に芳しいお花の香りがしたけど、天ぷらにはこの香りはいらんな。そしてツバキの花弁よりも苦味が強い。もし天ぷらにするならツバキだけでいいです。

 

 

 

食べ終わったあと30分くらい口の中に苦味がずっと残っていて、あまりいいものではなかったです。最初の1個は物珍しさから楽しく食べられるけど、食べるのはその1個でいい。

 

 

(採取日: 2023. 1. 19)