しらたまが道草を採って食うブログ

私ついていくよ どんな辛い野食の闇の中でさえ

ムクノキの実は甘酸っぱいけど熟しすぎて腐りはじめた果実みたいな風味があるのでちょっと苦手でした

 

タイトルで言いたいことの全てを言ってしまいましたので、本日のブログは以上になります。高評価・チャンネル登録よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もっと詳しく?もう…しょうがないにゃあ

 

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これがムクノキ。近所の公園に植えられていた。

名前の由来は諸説あるらしいが、この実をムクドリが好んで食べるからという説がある。私は学生の頃、ごく一部の人からムックと呼ばれていたことがあるため*、ムクノキの実を食べる資格があるわけです。

 

* 静かな電車内で、ムックって挽肉っぽくて怖いよねという話を大声でしたことに由来する。

 

 

 

 

黒くなりシワシワになったものが食べ頃だそうです。さすがにカラッカラに乾いたものは避けて、水分の残っているものを採ってみる。

 

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ネット情報では干し柿に例えられることが多い印象。たしかに、ざらっとした舌触りが干し柿を彷彿とさせる。しかし、干し柿ほどの甘さはもちろんなくて酸味がある。野生の実としては十分な甘酸っぱさではある。

しかしなんかこう、あまり受け付けない味なんですよ。熟しすぎて変な味がする果物の風味があるんですよね…だから、はじめこの実を食べようとしたときは「あ、腐りはじめてるわ」と思ったんですけど、どの実を食べても同じ味なので、どうやらこれがムクノキの味なんだなと観念した。ちゃんと食べてみるとたしかに腐ってる訳ではなさそうなんだけど、どうしても美味しいとは感じられずに終わった。

 

「甘酸っぱくて美味しい」というネット情報に混じって「発酵臭がある」と書いておられる方がおり、やはり私の感想はあながち間違いではなかったようです。

晩秋の木の実の味 食べる

 

ムクノキの実には、発酵臭があります(便乗)

 

 

 

 

もっと若い実や水分の抜けた実だと食味が変わるんでしょうか。気が向いたらまた食べてみます。

 

 

(採取日: 2021.11.1)

 

ムカゴについての覚書

 

秋なのでサクッとムカゴを採ってきました。

 

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近所の里山ヤマノイモ(いわゆるヤマイモ)があちこちに生えてるので、散歩がてら採りました。

ムカゴは蔓についているものをポロッととればいいだけだし、毒のある他の植物との見間違いがまずないので、どうやらうちの近所でも人気の野草であるようです。

 

目の高さのところにはムカゴは全くなく、

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上を見上げるとめっちゃムカゴ付いとる。絶対同業者に先を越されてる。
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今回真面目にムカゴを探してみたんですが、次の手順でムカゴを探すのがたぶん効率的だと思います。

  1. 木、杭、フェンスなどに巻きついている蔓を探す
  2. その蔓についている葉が大きなハート型か確認する
  3. ハート型の場合、葉が対生しているか確認する(茎や蔓の同じ場所から葉が2枚出ていること。逆に、1枚ずつが交互に付いていることを互生という) → オニドコロ(ヤマノイモ科の毒草)とこれで区別

 

ちなみにオニドコロにはムカゴはできないので、ムカゴ目当てならまず誤食のリスクはありません。しかしオニドコロも地下に芋を形成し、昔からヤマノイモと間違えるケースが発生している。オニドコロは相当苦味や渋味が強いらしいので、食べた瞬間に分かりそうなものですが。

【ご参考】“所沢”の由来になった毒芋「トコロ(オニドコロ)」を食べてみた | 野食ハンマープライス

 

 

 

 

採ったムカゴは塩炒りにしたり

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カリフラワーと一緒に炊き込みご飯にしたり

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美味しくいただきました。今年もムカゴを食べることができて良かったですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねえ

 

 

 

あたしたち 秋といえばムカゴだよねって 当たり前のように言ってるけどさ

ふと思ったの

そういえばムカゴのことなんにも知らないなって

 

 

ムカゴと球根は違うのかな とか

 

なんで地下に芋をつくるのに 茎にもムカゴを付けるのかな とか

 

他にもムカゴを付ける植物ってあるのかな とか……

 

 

せめて 野食を趣味でやってるようなあたしみたい人間がさ

知ってあげなきゃって思うんだ

もっと ムカゴのこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が教えてやんよ!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ムカゴって何?】

 

要はクローン。

花が受粉して種ができてそこから芽が出るというこのよくある流れはいわゆる有性生殖だが、ムカゴはそのムカゴが実った株と全く同じ遺伝子が引き継がれる無性生殖。

ムカゴ、芋、球根*などから無性生殖による繁殖を行う繁殖様式を栄養繁殖といい、このときのムカゴ、芋、球根などを栄養繁殖器官という。多肉植物には葉から新しい芽が出てくるものがあるが、このときの葉も栄養繁殖器官である。

* 芋や球根という言葉の厳密性については後述。

 

 

ヤマノイモって無性生殖しかしないの?】

 

ヤマノイモはムカゴによる無性生殖と並んで、種による有性生殖もふつうにやっている。

種は3翼のプロペラみたいな形をしていて、風に乗って遠くで繁殖するのに向く。一方、ムカゴはその株からポロッと落ちてその場で繁殖するのに向く。

種はそんなに栄養を蓄えているわけではないが、繁殖地を拡散することができる。ムカゴは、親株と同じ場所でしか繁殖できないが、栄養を蓄えているので種よりも繁殖に成功しやすい。

種の画像はこちらをご覧下さい。→https://matsue-hana.com/hana/yamanoimo.html

 

 

【親株がたとえば雄株だったら、そのムカゴも雄株?】

 

そう。ヤマノイモは雌雄異株なので、そのムカゴの雌雄は親株に完全に依存する。

参照: https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=4902&key=&target=

 

 

【ムカゴをつくる植物はヤマノイモ以外にもあるの?】

 

ある。オニユリ、ノビル、ニンニク、ムカゴイラクサなど。

ちなみに、一口にムカゴといっても、葉から形成される「鱗芽」と、茎から形成される「肉芽」がある。ヤマノイモは後者。これらをまとめてムカゴあるいは珠芽という。

 

 

【じゃあオニユリやノビルも、種による有性生殖とムカゴによる無性生殖を並行してやってるの?】

 

三倍体であるオニユリやノビルは無性生殖しかできない。多くの生物は卵子精子から染色体を1セットずつ受け取って2セットの染色体を持つニ倍体だが、三倍体の生物は染色体を3セット持っているので、減数分裂がうまくできないために配偶子(卵子精子)ができず、有性生殖ができない*。ちなみに、この三倍体の性質を利用して果物の種なし品種などの開発が行われる。

参照: 三倍体植物について | みんなのひろば | 日本植物生理学会

 

* 一般に三倍体の生物は有性生殖ができないとされてきたが、近年、三倍体の生物であるプラナリア有性生殖を行うことが判明している。https://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2013/kr7a4300000czeci-att/140121_1.pdf

 

 

【芋とか球根との違いは?】

 

ムカゴも芋も球根も、そこから芽を生やすために栄養を蓄えた器官という点では同じもの。ムカゴが、茎や葉が地上部において肥大化したものとすれば、芋や球根は茎や根といった器官が地下において肥大化したもの。

ちなみに、さっきから芋とか球根とか言っているが、植物学的には厳密な用語ではなく、①茎が地下において肥大化した地下茎、②根が肥大化した塊根、③茎と根の中間的な性質を有する特殊な器官である担根体が、いわゆる芋や球根に該当する。芋と一口に言っても、サトイモは地下茎で、サツマイモは塊根で、ヤマノイモは担根体にあたる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へぇ ムカゴのこと ちょっと詳しくなっちゃった

 

 

…ところでさ 君は二倍体生物なんだよね?

あたしも たぶん 二倍体なんだけど…

 

 

確かめてくれない かな…?//////

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマノイモは滋養強壮にいいそうです。皆さんもご健康に!

 

 

(採取日: 2021. 10. 24)

 

道端のニラもちゃんとニラ

 

野草と野菜を区別する基準は何か。植物分類的な基準、可食形質による基準、栽培個体かどうかという基準などいろいろ考えられるが、極めて単純なものとして「店で売られているものは野菜、そうでなければ野草」という、経済活動の観点が一つの基準になりうる。頭悪めな基準だけど、食べ物の生産・採集に携わらない人口が多い現代にあっては、多くの人にとって食べ物とは経済活動の枠内にのみ存在するものなのかもしれない。

 

なぜこんな話をしたかというと、道端にニラが生えているのを見るたびにこの話が頭をよぎるからである。野菜として流通しているニラが普通に道端に生えているという事実は私にとってすごく面白いのだが、通りすがりの人はどうやら何とも思っていないらしい。それを見てをニラだとわかる人がそもそも少ないし、さらにニラかなと思ったとしても確証を得るに至る人はもっと少ないだろうし、そこまでわかったとしてもそのニラを採ろうという気が起こるわけではない。野草を採取するという行為は、このようないくつもの壁を突破した先に初めて可能になるものなのである。ただの物好きじゃねえか。

 

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秋になると白い花が咲きます。よく見ると可愛い花です。

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土の栄養状態のいい場所であれば、けっこう大きな株に育ちます。
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八百屋で50円くらいで叩き売られているニラくらいの大きさはある。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてまな板に乗せると、けっこう立派。

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ヒガンバナやノビル、スイセンなどのように鱗茎(球根)は大きくは発達しません。ニラのつもりでスイセンを食べちゃった系の事故がたまに起こるそうだけど、スイセンはもっと大きな鱗茎を持つので容易に見分けられる。そもそも、においを嗅げばニラ特有のにおい(アリシン)があるはずなので間違えようがないと思うんですが、令和に入ってからもニラと間違えてスイセンを販売した事例が千葉であったようです。安易な視覚情報だけで野草を採るのはよくない。

 

目立った鱗茎がない代わりに、このような根茎が伸びており、これにより複数の株がひと塊に繋がっている。この根茎もやはりアリシンのにおいがします。

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洗った。道端で採ってきたとは思えない。
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花の咲いていた株の全体像。花茎が突出して長い。この花茎は維管束がバッチバチに発達しているのか、すごく固い。花茎はとても食べられたものではないので素直に葉だけ食べます。
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まずは普通にニラ玉に。美味いけど、さすが野生のニラだけあって繊維がちょっと固いです。
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葉の繊維が固いこと以外は買ってきたニラと遜色ないので、細かく刻んでしまえば問題ありません。ということで刻んでパッタイに。

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完全な余談ですけど、タイに旅行に行ったときにパッタイの付け合わせで生のニラとバナナの花(?)がついてきたんだけど、これって現地のオーソドックスな食べ方なんですかね。あと、パッタイってタイの伝統料理みたいな顔してますが、実は20世紀に入ってから近代的な国民国家を形成するという大義名分のもとに創作・普及された料理らしいですね。

パッタイの歴史 - 人工的に作られたタイの国民料理 - 歴ログ -世界史専門ブログ-

 

 

 

 

 

 

 

残りのニラはラーメンの具にしたりして食べたんですが、ニラの魅力は何といっても栽培です。ニラは上述のとおり根茎を持っているので、葉が枯れたり葉を収穫してもそこからまた葉が生えてきます。繰り返し収穫できるのでプランターでこじんまりと育てても長い期間楽しめます。

 

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根っこの部分だけ植えておいたら、2週間足らずでこの伸びよう。なんか急に寒くなってきたので今シーズンはこれを刈ったらもう終わりかもしれないけど、また来春になったら出てきてくれるでしょう。

 

 

(採取日: 2021.10.6)

テトラポット帯で採った磯物三種 〜 マツバガイ・カメノテ・フジツボ

 

漁港に釣りに行ったんですが、ちょうど引き潮の時間帯で全然魚が釣れませんでした。僕の腕が悪かったのも少しは要因だったかもしれません。テトラポット帯で穴釣りをしても小さいカサゴがポツポツ釣れるのみ。あとは小さいキュウセンが餌を突っついていくだけ。僕は飽き性なので1時間ほどやったらもう飽きてきたんだな。

それにしても、引き潮だからかテトラポットにいろんなものが付いている様子がわかる。いっそこれを採った方が食材調達の効率がいいんじゃないか?釣りのときにナイフを携帯しているので、無理ない範囲で採ってみます。

 

 

 

テトラポットの隙間を丁寧に探してみるとありました、マツバガイ。

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貝むきナイフでベリベリ力を入れて剥がす感じなのかと思ったら、一箇所でも剥がせば「あ、あかんわ」って感じでポロッと剥がれる。守りが固いけど、どこか一箇所でも牙城を崩せばあとは攻めるのは早い。

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カメノテもちょいちょいありますね。

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そんなに大きくないけど、カメノテを食べたことがないので味見分だけ頂いていきます。カメノテは固着性なので、あるエリアで乱獲するとその後何年間かはカメノテは姿を消します。採る際はご注意ください。

カメノテって岩肌にくっついているので貝類の仲間かと思われるかもしれませんが、実は甲殻類の仲間です。海中で触手(蔓脚と呼ぶらしい)を伸ばしてプランクトンを捕食する。

 

 

同じく、貝類っぽいけど甲殻類なのがフジツボ。集合体恐怖症の人が見たら卒倒するレベルでその辺にくっつきまくっている。

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私が今まで見てきたフジツボは直径1センチ程度の小さいものだったが、ここのフジツボは3センチほどもある。前者の小さいフジツボがイワフジツボ、今回見つけたものがクロフジツボというみたい。そして、食材として流通するらしい青森県産のもっとでかいやつがミネフジツボ

このフジツボをどうにか採りたかったのだが、岩肌にカンカンにくっついていてナイフでは全く歯が立ちませんありがとうございました。しかしマツバガイにフジツボがくっついているものがあったのでまとめて回収。

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本日の成果

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岩にくっついている子たちなので砂抜きは不要らしい。まずはマツバガイもカメノテも表面をたわしでゴシゴシと洗っていく。

マツバガイは、岩肌にくっついていたところに砂やゴミがたまるので、ここを歯ブラシで綺麗にしていきます。

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私の愛用の歯ブラシはGUMの3列毛先細タイプです、対戦よろしくお願いします。

 

 

 

 

なんとなく洗えたので、マツバガイを酒蒸しにしていきます。しかし今手元にあるのは加茂錦の吟醸純米吟醸純米大吟醸の3本のみ(先日セットで買った)。しょうがないので天罰覚悟で加茂錦を少しだけ注いで蒸しました。加茂錦を飲みながら待つ。

 

カメノテは普通に塩茹でしていきます。茹ですぎると旨味が抜けるかなと思い、5分程度にとどめました。加茂錦を飲みながら待つ。

 

 

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マツバガイはトコブシのようで普通に美味い。せっかくなら刺身にもしてみればよかった。しかし砂を噛んでいる個体もけっこうあるので、やっぱり砂抜きはした方が良かったかもしれない。

 

 

 

カメノテは根元の皮をペリペリと剥がしていく。
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先のもしゃもしゃしたものが触手(蔓脚)。ここはもしゃもしゃしてるので食べません。

シャクシャクプリプリの食感で、味はカニのような二枚貝の貝柱のような旨味がある。食べたことがあるような、しかしカメノテとしか言えない滋味がある。

やはり塩茹では旨味が逃げてしまうので、味噌汁に入れると良いとのこと。

 

 

さて最後はフジツボだが、マツバガイの貝殻からどう剥がすか…とりあえずちょっと力を入れてみたら、思いの外ポロッと取れてくれた。フジツボはタンパク質でできた接着剤を分泌して岩肌にくっつくらしいのですが、加熱によってこのタンパク質が変質して接着力を失ったということなんですかね。ちなみにフジツボの接着成分は強力で、水にも強い接着剤の開発に応用されているらしい。

「フジツボ」からどんな出血も15秒で止血できる接着剤を開発 - ナゾロジー

海水中で繰り返し使用できる接着剤を開発 ~海洋付着生物「イガイ」に学んだモノづくり~ – 北海道大学 化学反応創成研究拠点 (ICReDD)


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裏側はこんな感じ。殻の中は海綿状になっていたんですね。

 

身。やはりフジツボの身の先端にも触手がついている。
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…なにこれ、カニやん。甘みと香りがまんまカニ。味が非常に濃い。めちゃくちゃ美味い。可食部が絶望的に少ないから、フジツボ食べてみたいと思った人がいたらズワイカニを食べてみてください。フジツボの味がしますので。

 

 

 

 

こういう小動物を採ることができる磯場って、現地に行って探すほかないので少し敬遠してたんですが、それを主目的にして気合入れて行くというよりも、今回みたいに釣りに行ってたまたま引き潮にあたったときにふらっとテトラポットの隙間を覗いてみるとか、そういう緩さで臨むのがいいのかもしれません。次回はイボニシとかオオヘビガイとかも採ってみたいですね。

 

 

(採取日: 2021.10.2)

離島でツルナを摘んできた

 

愛知県知多半島の先っちょにある日間賀島に行ってタコを食ってきました🐙 妻子が寝ている間に釣りをするなどしていたのだが、せっかく海岸に来たので野草もついでに探してみました。

 

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テトラ帯の隙間のプラゴミの堆積からたくましく生える草。ツルナかな?

海岸地域特有の野草の代表格で、マオリ族が食べていたことからニュージーランドのホウレンソウ(New Zealand spinach) という英名を持つ。温暖な沿岸部に広く分布する植物なので別にマオリ族じゃなくても食べているはずだし、ホウレンソウはアカザ科であるのに対してツルナはハマミズナ科。なんだそのガバガバネーミングは。

 

ツルナをちゃんと見るのも食べるのも今回が初めてだけど、一発でツルナだと分かった。他の草とは明らかに異質なツヤツヤプックリ感が葉にあるんですよ。触ってみると葉には厚みがあって、ちょっとした多肉植物か?と一瞬思ってしまうような柔らかみがある。

 

他の場所も探してみたけど砂浜には全く生えておらず、何故かテトラ帯の隙間とか港の漁具小屋の裏とか微妙な場所にばかり生えている。テトラの間に潜ってしばし草を摘む。

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本やネットには「伸びて間もない先端部の若葉を食べる」と書いてあるけど、根元近くの葉もちぎってみるとあまり繊維感がないので、普通に食べられそうだと判断し、調理していきます。茎は硬いので食べません。

葉柄の生え際に付いている果実?はどうするかよく分からないけど、とりあえず残しておく。

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葉の裏。スポンジ状の組織になっていて、これが葉に多肉感を与えているっぽい。そして採取から2日くらい経っているのにまったくヘタレておらず、水々しさをずっと保っている。
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採ったときから、アイスプラントに似てるなあと思っていたので調べてみたら、アイスプラントも同じハマミズナ科の仲間。試しにツルナを生でかじってみると、苦味やアクのヒリヒリ感の中に塩味みたいなものが感じられる。

 

アイスプラントやツルナをはじめ海際に生息する植物は塩生植物と呼ばれ、海水による高塩分濃度環境下で発生する各種のストレス(高浸透圧により細胞内の水分が排出されてしまうことによる乾燥、道管・師管からの塩分の流入、細胞内のナトリウムイオンが過剰になることによる代謝の阻害など)に対応するための機構を持っています。たとえば、

 

□ 細胞内の水分が蒸発しない仕組みを備える

  • クチクラ層(植物や甲殻類・昆虫など様々な生物に見られる体表の固い組織(言うなれば殻/皮))の発達

□ 高浸透圧に耐える

  • 糖類やアミノ酸などの有機化合物(適合溶質あるいはオスモライト)を細胞内部に蓄積することで細胞内の濃度を高める

□ トランスポーターを多く発現させることによるナトリウムの排出

□ 特定の器官への塩分の隔離・蓄積

  • 古い葉に塩分を集約して落葉させる
  • 塩嚢細胞(えんのうさいぼう)と呼ばれる塩分を蓄積するための表皮細胞に塩分を貯蔵する
  • 液胞に塩分を隔離する

 

アイスプラントやツルナの場合は塩嚢細胞を持っており、そのため食べると塩味を感じるというわけ。

 

* ツルナに関係ない完全な余談になってしまうが、アイスプラントは普通の環境下では普通の光合成であるC3光合成を行うが、乾燥/塩ストレス下ではCAM型光合成を行うようになる(ツルナはそうでもない)。これにより、細胞内の水分の蒸発を防ぎつつ光合成を行うことができる。ただし、CAM型光合成は乾燥/高塩環境には強いものの、夜間に取り込んだ二酸化炭素をリンゴ酸に変換してさらに昼間にそこから二酸化炭素を取り出すということをしなければならないためエネルギー効率が悪いこと、また昼間にできる光合成は液胞に貯蔵されたリンゴ酸の量に規定されることといった理由から、光合成自体の効率は悪く成長速度が遅い。そのため、アイスプラントの栽培においてはまずストレスのない環境でC3光合成をさせておき、ある程度成長させておいてから塩ストレス環境に変えて塩嚢細胞の発現とリンゴ酸の生成を促し、アイスプラントらしい食味を出している。

CAM型光合成自体の話は過去記事でもしています↓

 

 

 

 

 

 

さて、とりあえず普通に茹でていく。いったん2分くらいで様子を見てみます。アクがこんな風に出てきました。

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鮮やかな緑。美味しそうですね。
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おかかと醤油で。
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シャキシャキシャリシャリとした小気味いい軽い食感。葉には繊維感が全くありません。味は、風味の弱めのホウレンソウみたいで普通に美味しい。…でも口の周りと喉がヒリヒリしてきた。シュウ酸がまだまだ残っているみたいです。ちゃんと調べてみたら、ツルナのシュウ酸含有量は食品の中でもかなり多いみたいです。含有量だけ見ればタケノコ以上じゃないか

医薬品情報21 » Blog Archive » 飲食物中の蓚酸含有量について


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果実は固くてもそもそするので食べなくていいです。

 

 

 

 

 

もう一度2分くらい茹でて一晩水にさらしました。もうシュウ酸のイガイガは皆無なので、ただただ美味しい野草です。さすが野菜として流通するだけの美味さ。

 

うどんに乗せたり、

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だし醤油とネギ油かけたり、
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炒め物にしてもいいですが、その前に食べ切ってしまったので炒め物は今度にします。

 

 

ツルナは他の野草と見間違えにくいし、下処理も楽なので、今後見つけたら即採取です。

 

 

(採取日: 2021.9.21)

寄生虫のエキノコックスが愛知県内で定着したかもしれない件

 

エキノコックス(多包条虫)という人気(?)の寄生虫がいる。なんだかよく分からないけど名前がかっこいいので言ってみたい寄生虫名ランキングの上位の常連者。

基本的には北海道のみに生息するとされ、キツネなどのイヌ科の動物に寄生する。ところが愛知県の知多半島エキノコックスに感染した野犬が継続的に見つかっているというニュースが、8月にツイッターでちょっとした話題になっていた。

 

 

ちょっと前から寄生虫の勉強をよちよちとしていたので既にこの話は知っていたのだが、最近知多半島方面にも釣りに行くようになったので何となく気がかりになってきた。(なにせ、知多半島の少し沖にある日間賀島の宿で、私は今この記事を書いている。)

 

こちらは愛知県のHP

エキノコックス(多包条虫)調査−検査結果月報|愛知県衛生研究所

 

 

私程度の人間が持っている知識は既に上の記事内で語り尽くされているが、あらためて文字にすると、エキノコックスは複数の種を擁する属名で、日本で主に問題になるのはエキノコックス属のなかの多包条虫。エキノコックスの中間宿主はネズミで、終宿主はイヌ科の動物。つまりエキノコックス(幼虫)を体内に持ったネズミをキツネ・イヌ・タヌキなどが食べることで、それらの動物に寄生し、その体内で成虫になる。

人への感染経路は、エキノコックスの成虫に寄生されたイヌ科動物の糞のなかに含まれる虫卵(殻のなかに複数の幼虫が入っているかたまり、オーシストという)を何らかの理由によって摂取してしまうことによる。上流でキツネが糞をしたその沢の水を飲むとか、糞に汚染された山菜や果実を生食するとかですね。

 

人が経口摂取した虫卵は体内で孵化したのち、肝臓などに定着して増殖、その臓器を重篤な機能不全に至らしめます。エキノコックス症は潜伏期間が長い(感染後数年~10 数年)ことが特徴で、この間無症状で経過することが多いため、早期の発見が難しい。しかも有効な治療薬がないため*、病巣を外科的に摘出するしかない。

*人が感染した場合の(つまりエキノコックスの幼虫に対する)有効な治療薬がないという意味であって、成虫には駆虫薬が存在し、飼い犬用に動物病院で処方してもらうことができる。ただし、エキノコックスに感染しないようにするワクチンの開発は長年試みられているものの未だ実用化されていない模様 → エキノコックス終宿主ワクチンと駆虫薬について

 

 

 

 

 

 

 

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愛知県のエキノコックスは、平成26年に初めて野犬から感染例が見つかり、その後29年以降に8例の感染が見つかっている(令和3年9月現在)。

なんで愛知県でエキノコックスの感染が出ているのか。今のところよく分かってないらしいけど、知多在住の一家がイッヌを連れて北海道旅行に行ったときにイッヌがこっそり野ネズミを食ってて、知多に帰ってきてからそのイッヌがこっそり野糞したとか、そのくらいしか考えられる経路ないんじゃないかこれ。

私は名古屋市住まいなんですが、とにかくエキノコックスが北上してこないかが気がかりです。今はまだ知多半島だけに収まっているようですが、東海市大府市がやられたらいよいよ名古屋から脱出した方がいいかもしれない。

 

 

さて、私は野草食いの人種なので、寄生虫には十分注意しなければならない。ふだん野草を食べない中上流階級の読者諸兄も、動物の糞便に汚染された野草を食べざるをえないという限界的状況も、この先もしかしたら、あるかもしれない。そのような場合どのような対策を取ることができるだろうか。

まず、寄生虫については加熱が無難である。数年前にアニサキスが話題になったときに、寄生虫には冷凍が有効らしいと聞いた方もいるかもしれないが、虫卵は抵抗性をもち-20℃程度では死なないと言われている(他の寄生虫、例えばトキソプラズマなどでも同様である)。家庭用の冷凍庫は一般に-18ºC程度なので、凍結による殺虫は業務用冷凍庫によらなければ効果が望めない。

食材をよく洗うことも大前提ですが、どうしてもリスクが残るのでやはり加熱は必要かと思われます。

皆様ご安全に。

 

 

 

【参考資料】

・東京都福祉保健局 食品衛生の窓 エキノコックス(多包条虫)|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局

 

・北海道立衛生研究所 エキノコックス症

* 上記二つのリンク先にはどちらにもエキノコックスの生活環の図があり、結局は全く同じことを言っているのだが、是非絵柄の違いに注目していただきたい。

 

エキノコックス症 - Wikipedia

バッタを食べ比べる - ショウリョウバッタ・エンマコオロギ・イナゴ

 

このブログの今年の目標というのが「もっと動物質を食べよう!」でして、特に虫食の経験値の溜まってなさについて問題意識を持っています。今まで食べてきた虫と言えば、セミ、イナゴ、あとよくわからん幼虫数種くらい。顔ぶれがいかにも寂しい。

そりゃ私だってカミキリムシの幼虫とか食べてみたいですけど、それを目的にして山に入らないといけないのでちょっとハードルが高いんですよ。それに虫に対する抵抗はさすがにあるので、「ジョロウグモは美味しい」と言われてもこれを食べようという気にはまだなれません。私風情にはまだバッタくらいが丁度いい。

 

 

 

 

 

釣りに行った際に車を止めていた野原を歩くと、足元からバッタがパタパタと飛び立つのに遭遇。今年はぜひ食べてみようと思っていたトノサマバッタ。もう少し秋深まってから採りに行こうと思っていたが、せっかくなのでちょっと味見をしたい。他にもいろんなバッタがいるようなので捕まえてみましょう。

 

 

 

 

 

 

トノサマバッタは長距離を飛翔するのでただでさえ捕まえるのが難しい。手元にあるのは釣り用のタモ。何をしているのだ。

 

とりあえず大きめのバッタを捕まえた。

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なんだショウリョウバッタか。ショウリョウバッタはあまり美味しくない部類とのもっぱらの噂だし、昨年イナゴを採って佃煮にしたときについでに採ったショウリョウバッタは、たしかにこれといった特徴がなかった印象。けっこう大きな個体を捕まえることができましたが、こいつは美味いのでしょうか。

【ご参考】

 

 

 

続いて、
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エンマコオロギ!コオロギは虫食の分野でも最も人民に膾炙しているエリートで、無印良品でコオロギを使った煎餅が発売されたというニュースは話題にもなった(コオロギをどこから調達しているのかが大変気になる)。

釣り用のタモなんて虫取りの役に立つわけがないのでもう手掴みで頑張ってたんですけど、手で押さえた瞬間に「こいつがコオロギではなくて実はゴキブリだったらどうしよう」と頭をよぎって日和ってしまうんですよ。そんなわけで捕まえるのに少々手間取りましたが、2匹を確保。ガキの頃は平気で捕まえていたんですけどね。

 

あとイナゴもいたのでついでに捕まえました。

肝心のトノサマバッタはみんなさっさと遠くに飛んでいってしまったようで、結局捕まえられませんでした。何をしているのだ。

 

 

 

 

 

 


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ペットボトルに入れて持ち帰ってきた(蓋は少し緩めておく)。計5時間くらい糞出ししたかたちとなります。コオロギに関してはスカベンジャー(腐肉食動物)なので正直もっと糞出しに時間をかけるべきところだったが、当時はそのことがさっぱり頭から離れていたので特に懸念もせず調理に入りました。まあ草原にいたコオロギだし、そこまで変なものは食べてないでしょ(切望)。スカベンジャーであるということは何を食ってるか分からないということなので、食ったもの経由で寄生虫を持っていたりすることも大いに考えられます。安全を期して食すなら、時間をかけての糞出し、さらに理想的には野菜などで一定期間飼育することによる内容物の置き換え、そしてよく火を通すことが望ましいと思います。

 

 

 

 

 

 

虫の調理法として、いきなり炒めたり揚げたりすると爆発することがよくあるので、いったん茹でてタンパク質を凝固しておきます。

 

茹でた。
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ショウリョウバッタの存在感。

 

 

 

素揚げした。見た目はあまり変わりません。

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イナゴ以外あまり食指が動かないけど、とりあえず食べてみます。

 

 

イナゴ
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まぁ普通に美味いです。佃煮にしても揚げても、イナゴの香りってわかるんですね。イナゴは産卵直前の抱卵個体は旨味があるんですが、そうでなければ中はスカスカでとくにこれといったものではない。よくエビに例えられるが、甲殻類節足動物キチン質を主成分とする外骨格を持つのでそれが同じ風味ですねということである。つまり、バッタはエビの身の味に似ているという意味ではなく、エビの殻の味に似ているというだけの話である。

 

 

コオロギ。黒いなあ。
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中身が詰まってる!それだけにちゃんと旨味がある。しかも外骨格が比較的柔らかいので、口にも残らない。これはイナゴよりも食味はずっと上ですね。コオロギがもてはやされる理由がわかる。

 

 

 

ショウリョウバッタ。もっと小さいやつ捕ってこればよかったな。
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殻が固い。二度揚げして再度食べるも、どうも口に残る。そして中身はスカスカで何もないので、外骨格の味があるだけである。若干苦味があったのは彼らが口から出す黒い液体でしょうか…よくわかりません。やっぱりショウリョウバッタはそんなに美味しくはないですね。

 

 

 

 

 

 

 

だいたい前評判どおりの味でした。トノサマバッタがいればもう少し食卓が華やかになったのですが、今回は残念でしたね。トノサマバッタの味見は持ち越しです。

 

 

 

(採取日: 2021.8.26)